21 どういうつもりなの?
「…ここが侯爵家。」
国境近くのお屋敷。…身分が高い上にガウルの前の世代までは王族からの信頼もあつかったため、大国であるデメリング国の近くに置かれていた。
だが、ガウルは勉学、剣術、作法などは全く覚えようともしないし、権力を使って人を操る。ましてや、悪徳貴族。…小説じゃあ、侯爵家の落ちこぼれ悪徳小太りとも言われていた。
辺りを見渡すとやけに使用人がいる様子だ。私の目からすると、無駄に多い。
無駄の多い男なのかな?
「行きましょう、フィール様。」
私はパペリット伯爵に言われるがまま屋敷の方へ向かうのであった。
パペリット伯爵がガウル侯爵に頼まれたらしい。どうも向こうから私に会いたいと。
私が会いにいくつもりだったのだけど…まさかあっちから来るなんて。
一体、どういうつもりなの?
「フィール姫君。お初にお目にかかります。」
目の前にいるガウン侯爵は自身の短いひげを触りながらそう言った。私達は侯爵家のソファに座らさせてもらっている。ドア側が侯爵様とドア付近に護衛のお方。反対に私側には私とパペリット伯爵がソファに座り、ドルトレは後ろに立つようにしているのであった。
「それで?今日は私にどういったご要件で?」
私は躊躇いもなく言い放った。パペリット伯爵はその様子にどうも驚いている。
小説の中でもガウン侯爵はトリプル伯爵を脅している様子もみられた。3人とも、善悪の区別はできていたようだけれど…。この男の脅しによって人生を狂わされた部類もいる。
のちに主人公の影響でこの男が裁かれることとなるが…そのときはもう遅かった。多数が生きるという意味を無くし、狂ってしまったのであった。生き残れるのは身分の高いものだけ。
主人公には悪いけど、はやくこの男を裁きたいの。王殺人未遂の犯人でなくても、この男はいずれ、害になる。その前に潰さないと。
私は紅茶を口に注ぎながら、侯爵を観察する。
侯爵は想像していたよりも笑顔が多い人物であった。
この世界で笑顔は悪い人の特徴なわけ?
「公爵様に婚約者ができたと耳にしまして。是非お会いしたいなと思い、このような場を設けてもらいましたのです。公爵様の寵愛を受ける姫君だとお聞きしましたが?」
言っていることが全て嘘にしか聞こえないのだけど。
私は紅茶を飲み終え、飲み終えたカップを置くのと同時に口を開く。
「えぇ。公爵様は私めという子爵という身分でありながら嫌な顔一つもせずに出迎えてくださったのです。寵愛…とまではお恥ずかしいのですが、それなりの愛は私は頂いているかと思います。」
与えられた覚えなんてないんだけど。
小説の中の侯爵は挑発に弱かった。
ここらへんで、ムカついてきたんじゃない?かっと思って殴ったところをパペリット伯爵とドルトレに押さえてもらい、公爵様に処分を出だしてもらうんだから。
私がいつもの癖で左腕の上で、右手の人差し指でトントンとしていると、急にパペリット伯爵が腹を抑えだすのであった。どうやら、胃が痛いらしい。
「…う。」
私でも演技ではないということがすぐに分かった。なぜなら、ぎゅるるるという音も鳴っているし、顔が青ざめているのであった。
ねぇ、これ、やばいんじゃない?まさか、公爵!彼の紅茶に下剤を入れたとか!?
私が侯爵を見ていると、その護衛であろう輩のポケットがキラっと光っているのが分かった。護衛はニヤリと笑みを浮かべている。侯爵もさっきとは違うそういう笑みを浮かべていた。きっと、私じゃなきゃ気づいていなかっただろう。
「おやおや、伯爵。腹が痛いのか?」
侯爵様は笑いながらそう言うのであった。
お前が護衛騎士と結託して下剤を入れたんだろうが!
小説でも、気に入らない奴に下剤を盛るという侯爵のレパートリーがあった。
どんなレパートリーだよ…。最低じゃん!
「オレグ。伯爵に着いていってやれ。体調が悪そうだ。」
「あ、では、ドルトレにも着いていってもらいましょう!」
私は侯爵の言葉にすぐさまそう言うのであった。
それで、できるだけ苦しませるつもりなのだろうけど、私には通用しないわよ!
「いいのですか?姫君の護衛騎士では…。」
「ドルトン命令よ。伯爵をしっかりと送り届けなさい。」
私の言葉にドルトンは首を縦に振るのであった。伯爵とオレグ、ドルトンが行ったことを確認した後、私は侯爵と2人っきりになるのであった。
っふ。これで、あなたの思い通りにならなくなったんじゃない?証言してもらう作戦は無駄になるけど、あなたから殴られて、その傷を侯爵様に見せればイチコロなんだから!だからさっさと吐いちゃいなさ…!?
私は急に目が回ってくるのが分かった。
意識が遠のく…。まさか、私の紅茶にも何かを盛られてたの…?まずい、助けを呼ば
私は耐えられずにその場に身を崩してしまうのであった。倒れた私を見て、伯爵様はこう呟いた。
「あの女の言うことは正しかったか…。小娘ながら、なかなか使えるじゃないか。」
伯爵はフィールの片耳についているピアスに触り、呟くのであった。
「悪いがお前は餌だ。公爵をおびき寄せるためのな。あの男の悔しがる顔は見ものだな。っくっく。」




