14 嬉しい限りです
「あの…。」
「なんだ?」
私は今、公爵様と2人で一つの馬に乗っているのであった。
「…これじゃなきゃ、駄目なんですか?」
いくら馬車が爆発したせいで、馬に乗らなくなってはいけなくなったとはいえ、私が公爵様と一緒の馬に乗るなんて。
「馬に乗ったことがないから、酔うのが心配か?」
まぁ、それもあるけどさ!
「私が騎士さんたちと乗るのは駄目なのですか?」
私の言葉に騎士たちは首を横に振るのであった。
おいおいおい。
「だそうだが?嫌われているな。」
婚約者がいるというのに他の馬に2人で乗させたい馬鹿がどこにいるのよ!…うっざ!
「公爵様が私のことを溺愛なさっているせいで、騎士の方々が配慮をしてくださっているようですね。嬉しい限りです。」
私は皮肉を込めて公爵様にそう言ってやった。
どうよ。皮肉を言われた気分はどうかしら?これぞ、倍返しってやつよ!
公爵様は顔をしかめるどころか、どこか楽しそうに微笑むのであった。まるで、その笑みは死神だ。
「その私が溺愛する婚約者様のために少し馬のスピードを上げ、目的地にはやくつきましょうか。」
「…え?」
公爵様はそう言うといきなり馬のスピードを上げるのであった。そのスピードはもはや尋常じゃない。
「あわわわわわ!!!!」
私はそのスピードに思わず叫んでしまう。
どんだけスピードだすのよ!溺愛する婚約者じゃなかったわけ!?
「しっかり捕まっていろ。」
私はその言葉に思わず公爵様の服をぎゅっと掴む。
怖い怖い怖い。はやすぎて怖い怖い怖いって。
私は目をつぶっているのであった。
「ぜぇ、ぜぁ…はぁ…。」
「…お前、本当に体力がないな。」
傍から見れば私が息切れしているのを優しく心配なさっているように見えるかもしれんが、こいつはただ私に皮肉を言っているだけである。
…私もフィールがここまで体力がないとは思わなかったわ。
私は呼吸を整えながらも、辺りを見渡すのであった。目の前には大きな扉。地域への境界は門ではなく、大きな扉が使われている。
この先に西の地域が広がるのね。
私達を見るなり、扉番は扉をあけるのであった。開けたそこには前世でいう工事現場の方々が好物を運んでいたり、子どもたちが和気藹々としているのであった。
公爵様に気づくなり、人々は一礼をする。
…なに?公爵様って有名人だったの?流石、恋愛小説の主人公のパートナー。
「行くぞ。」
公爵様はそう言って私の手を掴む。
周りにこの女は自分のだって見せつける気?本っ当、いい性格してるわ。
私は公爵様と自身の繋がった手を見ていた視線をあたりに移し、先にある鉱山へと目を向けた。
あそこに秘書がいるはず…。
私たちはなにやら、カンカンと音のする方へ向かうのであった。




