10 どうりででございます
私は廊下を歩いていると、若手の執事が公爵様の書斎に向かってお茶を運んでいるのを目撃するのであった。私は口角をニヤリと上げ、曲がり角でわざとぶつかるのであった。
「…っ!?」
「ひゃっ…!?」
私の手袋には、執事さんが運んでいたケーキがついてしまう。
「も、申し訳ございません。姫君。」
執事さんは私に頭を下げてくるのであった。地面に手をつく私に左手で手を差し伸べてくれる。
「いえいえ。私の不注意でしたので。それより、執事長さんがお呼びになっていましたよ?これは、公爵様に私が運んでおきますので、どうぞお行きになってください。」
「しかし…。姫君の手袋が…。」
「わかりました?」
私の言葉に執事さんは「はいっ!」と、心配そうにしながらも使用人の寮へ向かうのであった。
「ふぅ…。」
私はケーキのホイップがついた手袋を取る。
「ケーキごめんね。後で美味しく食べてあげるから。」
私はそう言って、自室にケーキを置いて、執事さんが運んでいたお茶を書斎に運んでいった。
私は公爵様の書斎を3回ノックをした後、「入れ」という言葉に続いて書斎へ入る。
「遅いと思ったが…。どうりでか。」
「えぇ。どうりでございます。」
私は微笑みを返しながら、公爵様の書斎の机にお茶を置く。今は公爵様と私しか書斎にはいない。
…ここで一言でも間違えれば私は殺される可能性があるのかもなのよ。
フィールがどんな情報をバラして公爵様に火をつけたのか、階段に突き落とされた後から、記憶が途切れている。情報があやふやなのだ。
私の発言一つひとつが公爵様の地雷を踏む可能性があるのよね…。注意しないと。
「《アルト》はケーキを持ってくると言っていたが?」
アルトは、おそらくあの若手の執事のことなのだろう。
…っう。ケーキか…。
「申し訳ございません。来る途中にどこかへ置き忘れてしまったようで…。」
私の自室にだけど!
私がそう言うと公爵様は「そうか」とそっけなく返すのであった。
まさか…。甘いものが好きだったの!?私と同じ人種だったり…!?
「甘いものは苦手だから丁度よかった。」
私はその言葉に唖然としてしまう。
そんな人いるの?人生半分損してるわよ。絶対。…まって、苦手っていった?しかも丁度いいって?…この人、意外と子供っぽかったり?
「おい。お前、なにか今、失礼なことを考えているだろう?」
私が彼を見すぎたせいか彼はそう言ってくるのであった。
この人…、尋問の天才だけあって人を観察するのが得意なのか?
彼は書類に目を通しながら、口を開くのであった。
「それで?なんの要件だ?」
「…はい?」
「お前が用もなく、俺の書斎へ訪れるわけがないだろう?」
この人…、やっぱりエスパーなの?
「流石公爵様。御名答ですね。」
私は咳払いをして口を開いた。




