表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アステリア ―蒼い約束―  作者: 沙莉
未来への鎮魂歌(レクイエム)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/89

第4話 微笑みの残光、託された聖剣

幼いあの頃を、思い出した。



ねえ、ラディ。


なに? レーリア。


約束よ。チキュウで、わたし、頑張るから。戦争は、いやなの。だから、チキュウで大人になって、ラディがわたしを迎えに来てくれるまで……成人の儀を迎えられる日まで……頑張るから。だから、絶対わたしを迎えに来て、わたしを護ってね。



約束、レーリア。

俺も、頑張る。レーリアを護れるようになるように、強くなる。

だからもう、泣かない。



あの日交わした約束。


俺はレーリアに誓ったんだ。

その誓いを守るために、俺は……


レーリア、護るよ。


きみを、護る。


愛してるんだ。どうしようもないくらい、愛してる。


俺の全てを投げ出してもいい。

きみのためならば。


だから、レーリア。


俺の持てる全てをきみに捧げる。





苦しい。

わたしの中で蠢く魂。


異物が入ったことで、わたしの身体が拒否反応を起こす。

それを押さえつけるのは、わたしの魔力。


レクサスの魂をわたしの中に引きずり込んだ。


逃げようとするレクサスを留めておくには、限界がある。

分かる。だけど、逃がすわけにはいかない。


このまま、わたしと共に。

果てるまで、わたしは戦い続けるつもりだった。


レクサスの魂が消去する頃には、わたしも魔力を使い果たしているかもしれない。

その結果がどうなるのか、予想がつくけれど、でも手離すわけにはいかない。


『ぐうううううぉおおおお!! 離せ、祝福の女神!! 離せぇ!!』


わたしの中のレクサスが暴れる。

それを力ずくで押さえ込み、わたしは彼に言った。


「無駄よ。あなたをもう外へ出すことはない。このままわたしと共に果てるのよ」


『何を言う……!!なぜ、そこまでして、お前は……!!』


驚愕するレクサスの声に、わたしは思わず笑いそうになってしまった。


なぜ?

そんなの、理由は一つしかないわ。


わたしの希望。

わたしの願い。


『祝福の女神』として生まれたからじゃない。


愛する人が生きる地を、護りたい。


「アステリアを、あなたの自由にはさせないわ」


わたしが静かに言うと、レクサスは苦しみ悶え、わたしの中で蠢き続ける。

その苦しみが、ダイレクトにわたしに伝わり、それを抑えることで精一杯になった。


魔力を、レクサスの魂を抑えることに集中するあまり、結界が解けていく。

思わず倒れてしまったわたしを、ラディが支えてくれた。


朦朧としてくる意識。


だめ。


ここで気を失う訳にはいかない。


レクサスにこの身体と魔力が操れるとは思えないけれど、でも、わたしはわたしの意識があるままで、レクサスを閉じ込めていなくてはいけない。


「レーリア、レーリア!!」


ラディが悲痛な表情で、わたしの名を叫ぶ。


ああ、よかった。

ラディ、魂の傷も修復できたみたい。

今ほど、忌まわしいわたしの力に感謝したことはないわ。


あなたの魂は、純粋で…………汚れなくて…………


まっすぐに進む思い、それをずっと大事にしてもらいたいの。

そんなあなたが、大好きだから。

今までも、これからも。


好きなの、ラディ。

大好きなの。


だから、わたし、後悔しないわ。

あなたを護れた。


ずっと、あなたに押し付けてしまった約束のために、あなたを縛ってきてしまったことが心に引っかかっていた。

あなたの人生を、わたし中心にしてしまった。


もっと、やりたいこともあったかもしれない。

わたしがいないアステリアで、恋もできたかもしれない。

それを捨てさせてしまったことに、わたしは申し訳ない思いでいっぱいだった。


これからは、ラディ。

あなたの自由に生きて。


どれくらい、わたしの中に魔力が残っているだろう。

魔力よりも、わたしの身体が限界に近くなってきていることが分かる。

あちこち、悲鳴をあげている。


『祝福の女神、私を解放しろ! でないと、お前の身体が引き裂かれるぞ!!』


レクサスも、わたしの身体がどうなってきているのか感じたようだった。


今、わたしの身体が生命の刻みを止めれば、おのずとレクサスの魂も消去する。


焦るレクサスの声。


だけど、わたしは彼を手放すつもりなどなかった。


「レーリア、レクサスを離しなさい! 後は、何とでもしますから!!」


珍しい。

シェニム兄さんが、焦ってる。


「馬鹿野郎、お前、何を考えてるんだ!! 早くいいからレクサスを出せ! オレがやっつけてやるから!」


ふふ、優しいイスラン兄さん。

いつもそうやって、わたしの無茶をたしなめてくれたね。昔と、変わらない。


「アヤカっち!! もういい、もういいんだ! ……レーリア……!」


あれ、ソルト、初めてわたしの名前を呼んだ。

『レーリア姫』じゃなくて、『レーリア』だって。

ふふ、どうしてそんなに泣きそうなの? そんな顔、あなたに似合わない。笑っていて。それが一番、あなたらしい。


「レーリア様……!」


その先、言葉にならずに唇をかみ締めているサーシャ。

ああ、そんなに涙を零したら、本当に女の子みたいよ。わたしよりも、ずっと可愛い。

だけど、知ってる。あなたは誰よりも、男っぽいのよね。


駄目だ。

もう、意識が遠くなっていく。

皆のわたしを呼ぶ声が、段々遠ざかっていく。


どうしよう。


最後に、あなたの声が聞きたいのに。


「レーリア…………」


望んでいた声だ。


低く、耳に心地いい声。


愛するあなたの声。


わななくわたしの唇を、そっとその声の持ち主が塞いだ。



暖かいの。


胸に沁みていく、あなたの想い。


愛してるわ。

愛してくれて、ありがとう。


わたしを、最後まで護ろうとしてくれて、ありがとう。


言葉にならないわたしの声を、きっとラディは受け止めてくれただろう。

わたしの髪をひとしきり撫でていたその大きな手は、わたしから離れ、剣を握り締めた。


「レーリア、『祝福の女神』の力を、俺に」


どうなるか、分からない。


自分の魔力の限界が、分からない。


だけど、あなたがそう言うのなら。


『やめろ、何を考えている!! 祝福の女神、私を解放しろ! そして私と共に、このアステリアを…………!!』


アステリアを、闇の世界にするわけにはいかない。


ラディがその剣で、わたしごとレクサスを貫いてくれるなら。


きゅっと唇をかみ締めたわたしは、震える身体を叱咤して、半身を起こした。

そして片手を、ラディへ向ける。


『やめろーーーーーーーーーー!!!』


レクサスの悲鳴を聞きながら、わたしはラディへと向けた右手に全神経を集中させた。


わたしの残る力、全てを。


あなたへの想いを込めて。


このアステリアを、どうか護って。


わたしの手から放たれた力は、構えたラディの剣へと吸い込まれていく。

前に由利ちゃんと対峙した時よりも、ずっとずっと強い力がラディへと流れていく。


わたしは、意識を失うまで、力を放出し続けた。


ラディ、あなたを抱きしめる時のような思いを込めて。


だって、それが『微笑みの力』だから。


どうか、わたしの想いを、受け止めて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ