第2話 不変の絆、響き合う魂の残響
ラディとレクサスが、激しく剣を打ち合っている。
ラディの剣は、炎に包まれていて、格段に威力が上がっているはずなのに。
決定的な詰めまで追い込めていなかった。
レクサスは、薄ら笑いを浮かべ、時折蒼白で立ち尽くす由利ちゃんに真紅の瞳を向けていた。
「人は変われば変わるものですねえ。あの自信に満ちたユリシーダ様が。今ではただの、役立たずの小娘に成り下がってしまうとは」
その言葉に、由利ちゃんはぎゅっと唇をかみ締めた。
その彼女を見て、レクサスは可笑しそうに肩を震わせる。
ラディの怒涛の攻撃を受けながらの、その余裕。
何か、隠してる。
何を隠しているんだろう。それが、分からない。
「ユリシーダは、もう使えない。祝福の女神は、当てにならない。さて、どうしたものか」
歌うように言い放ったレクサスの左手が、ふいに横に向けられた。
ラディの剣が、レクサスの頭部を襲った。
それを巧みに避けつつ、レクサスの手のひらから、一直線に眩い光が放たれた。
それは真っ直ぐに、由利ちゃんと、彼女を護るポワンに向けられていた。
「ポワン!!」
わたしが思わず声を上げると、美しい銀髪を揺らし、腰を落としたポワンが小さく頷いた。
剣を横に向け、柄と鋼の先に手を当てて。
低く呪文を呟くと、剣を中心としてポワンの全面にシールドが張られた。
レクサスの光は、そのシールドにかき消される。
逆にポワンはその剣をレクサスに向けて、剣の先を軽く動かした。
円を描き、中に複雑な紋様を描いていく。
「はっ!!!」
気合を入れた声と共に、ポワンの剣が、その魔法陣の中央を突く。
膨大な光が一箇所に集まり、それが爆発してレクサスに襲い掛かった。
雷。
ポワンの得意技だ。
「ちっ!」
低く舌打ちをしたレクサスの先には、剣を振り上げたラディが。
真横に振ったラディの剣が、レクサスの胸部を叩き潰す……はずなのに。
しなやかに身体を逸らせ、レクサスは辛うじてその剣を避けた。
だけど、衣服や胸の表面の皮膚は、ラディの剣により削がれた。
軽々と背後に飛び跳ね、レクサスは自分の場所を確保した。
「やるな……さすがは、『蒼の疾風』隊長」
「貴様なんぞに褒めて貰っても、嬉しくなどない」
ラディは冷たく言い放ち、剣を構えなおしたけれど。
わたし達の立つ床が、再び大きく大きく揺れて。
全員が、立っていることもままならない状態になってしまった。
由利ちゃんが小さく悲鳴を上げて倒れ、それを咄嗟に庇ったポワン。
だけどその瞬間、わたし達の向かいの床が崩れ落ち、更に揺れが大きく酷くなり、ポワンは体勢を崩してしまった。
その隙を、レクサスは見逃さなかった。
「死ねっ、ユリシーダ!」
レクサスの指が、由利ちゃんに向けられた。
大きく目を見開いた由利ちゃんの前に、剣を床に突き立てて、体勢を整えたポワンが立ち塞がる。
「危ない、ポワン!!」
ああ、ここでわたしがポワンに障壁を張られれば……だけど、あまりに揺れが酷すぎて、目標が……………
障壁を張るべきポワンへの位置が、わたしからは定まらない。
手を挙げて、どうにかポワンに向けようとしているけれど、身体が揺れて止まらない。
レクサスの指から、鋭い真紅のレーザービームのようなものが放たれた。
「ポワン、避けて!!!」
わたしの声に、ポワンはわたしを見つめ……銀色の瞳を、一瞬笑みの色に変えた。
待って。
駄目。
駄目!!
わたしの声にならない叫びに、ポワンの声が応えるように、わたしの脳内に響く。
『レーリア様……アタシを、お傍においてくださって、ありがとうございます』
やだ、やだ!! 何を言っているの、ポワン!!
『あなたといられたこの年月、アタシは本当に楽しくて、幸せで…………特にね、地球では本当に楽しかった』
何で過去形なの!? これからだって、楽しいことをいっぱいしよう!
封印も解けたんだし、わたし達、二人で腕を組んで町を歩けるよ?
一緒に買い物に行こう。
美味しいものを、ラディ抜きで、こっそり食べに行っちゃおう?
女の子同士でしか出来ないことって、沢山あるじゃない。
まだまだ、わたし、あなたとの時間を満喫してない。
『ありがとう、レーリア様。最後に、あなたのご命令に添えたことが、アタシの名誉であり誇りです』
「やだーーーーーーー!!!」
目を瞑ったポワンに、わたしは絶叫を浴びせた。
やだ、やだ!!
両手を挙げて、膝立ちで腰に力を入れて。
ああ、でも、間に合うか。
わたしは両手に障壁を張るための魔力を溜めた……その時。
レクサスの言葉に、由利ちゃんが口を開くより先に、わたしが両手をラディに向けていた。
絶対、許さない。
許さない!
「ラディ!! わたしの力、受け取って!!」
わたしは全身全霊を込めて、祝福の力を手のひらに込めた。
わたしの力は、攻撃のためにあるんじゃない。
護るためにある。
そう、ポワンを護ったティロンのように。
それを侮辱した、レクサス。
絶対、許さない。




