第9話 抗議ではなく、宣戦布告だった
第9話です。
王都商会の部屋は静まり返っていた。
机の上には、例の封筒。
元いたギルドからの抗議文。
依頼妨害。
盗賊団との関与。
信用毀損。
並んでいる言葉は、どれも重い。
槍使いが怒鳴る。
「こんなのデタラメだろ!」
依頼主の商会長は、落ち着いた声で言った。
「問題は、内容ではありません」
「……?」
「“公式文書で出した”ことです」
部屋の空気が変わる。
「商会としては、調査をしなければならない」
つまり――
王都商会との契約は、
一時停止。
ギルド長が歯を食いしばる。
「……やられたな」
俺は黙って文書を読んだ。
(これは、抗議じゃない)
これは――
仕事を奪う攻撃だ。
「盗賊団の件、証拠は?」
商会長が聞く。
「ありません」
「でしょうね」
商会長は、ため息をついた。
「ですが、噂は広がります」
それが狙いだ。
⸻
その頃。
元いたギルド。
副長が机を叩いた。
「これで、奴の仕事は止まる」
ギルド長は無言だった。
「王都商会の契約を止めればいい」
「そうすれば――」
言葉を止めたのは、
扉の音だった。
一人の男が入ってくる。
黒い外套。
知らない顔。
「ご苦労様です」
副長が顔をしかめる。
「誰だ?」
男は、ゆっくり笑った。
「あなた方が雇った盗賊団の仲介人です」
空気が凍る。
「な、何を言って――」
男は書類を置いた。
盗賊団の契約書。
金の受領記録。
副長の名前。
ギルド長の手が震えた。
「……こんなもの」
男は、穏やかに言った。
「安心してください」
「あなた方を脅すつもりはありません」
「ただ――」
その目が冷たく光る。
「もう一つ仕事を頼みたい」
⸻
第10話
盗賊団は、ただの駒だった
王都商会を出た帰り道。
槍使いが言った。
「……これ、詰んでません?」
ギルド長は苦笑した。
「そうかもしれんな」
俺は歩きながら考えていた。
(妙だ)
盗賊団。
抗議文。
タイミング。
全部が、出来すぎている。
「……盗賊団、調べましょう」
ギルド長が眉を上げる。
「今さら?」
「いいえ」
俺は言った。
「盗賊団は、本命じゃない」
数日後。
情報屋から報告が来た。
盗賊団は、
最近急に武器が増えている。
金の出どころは不明。
だが――
武器の刻印。
それを見た瞬間、
俺は息を止めた。
「……軍用品?」
情報屋が頷く。
「正確には、王都軍の横流し品」
部屋が静まり返る。
つまり。
盗賊団の背後には、
王都の誰かがいる。
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第11話
王都からの呼び出し
王都からの使者が来たのは、
その翌日だった。
馬車。
王都紋章。
槍使いが青ざめる。
「……やばいやつですよね?」
使者は、静かに言った。
「アレン殿をお連れする」
「理由は?」
ギルド長が聞く。
使者は答える。
「王都軍参謀部からの要請です」
一同が固まる。
参謀部。
それはつまり――
国家レベルの問題。
使者が続けた。
「最近、王都近郊の盗賊団が異常に組織化している」
「あなたの報告が一致した」
「そして」
視線が俺に向く。
「あなたの作戦で、
商隊が壊滅を免れた」
使者は言った。
「王都は、あなたに興味を持っている」
静かな言葉だった。
でも、意味は重い。
ギルド長が小さく笑う。
「とんでもないことになったな」
槍使いが呟く。
「……これ、王都編じゃないですか」
俺は、窓の外を見た。
王都。
政治。
軍。
そして――
盗賊団の背後にいる誰か。
静かな仕事のはずだった。
だが、
どうやら世界は、
もっと騒がしい場所らしい。
話が大きくなりすぎると怖いですね。




