ハギザ46
よろしくお願いします
「月乃さん…なんでいるんだよ」
「ごめん、私もよく散歩するから…」
ベンチの隣に座る君は僕に声を掛けていて、僕はそんな君に驚いてしまっている。
そして、この夜が騒がしくて面倒になる事をすぐに予感してしまっていた。
「本当に、迷惑じゃないの?」
「お母さん、朝まで帰ってこないから」
「そういう問題でもないけど?」
「まあまあ、いいじゃん」
静かな夜道に僕らの声。
君の家の前まで来て断れる気もしないのだから、後はなるようになると、投げやりな気持ちのまま。
「じゃあ、お邪魔します」
部屋まで案内されている。とは言っても、前にも来たこの部屋は何一つ変わることなく女の子っぽい部屋。君は飲み物を取りに行くと言って一階に下がっていった。
『がはぁ、なんであいつはここに残るんだよ』
「別にいいじゃん、喋らないし」
ハギザが腕を出して灰色の化け物を指さす。化け物は相変わらずピクリとも反応を見せない。こんなことを君にどう聞いたらいいだろうか。
そもそもの話、そんなことを聞いた時点でまた君に心配されてしまうだろうか。
「なぁ、ハギザはなんであいつが怖いんだ?」
『怖い?そんな訳あるか、気持ち悪りぃんだよ。お前らみたいにな』
「僕ら?お前の方がよっぽどキモいけどな?」
『がはっ?殺すぞ人間』
「やれよ、臆病者」
またまた言い合いに発展しそうな雰囲気の中、ドアのノックオンが聞こえた。
「入るねー、あ、なんかやましいことしてたら3秒くらいは待つけど?」
「3秒じゃ足りないかも」
返答のしずらい君からのボケを返すと、お盆にオレンジジュースを乗っけて来た君は薄い笑顔。相変わらず眠そうにしていて、何を考えているのか検討もつかない。
「そんなことより、化け物さんの話聞かせて?」
黒の丸テーブルにお盆を乗せてコップを3つ等間隔に並べる君。最初は、どうして3つなのか分からなかったけれど、君が化け物のことを口にした時にようやく理解できた。
「僕らが食べるものは食べないよ」
「え、じゃあ何食べてるの?」
自然と始まっているこんな会話。君は本当に信じてくれているのだろうか。
「何も食べてないかな、あと、何したって満たされないんだって」
「へー、なんか面白いね」
「面白くないよ、こんな化け物が見えなきゃ僕も普通の高校生だったのに」
僕と君。そしてハギザの為に用意され、置かれたコップの近くまでわざわざ身体を伸ばして座るハギザ。そんな礼儀正しいハギザを見ながら嫌味混じりに言うと、ハギザは僕をつまらなそうに見つめ返してきた。
「じゃあさ、私の化け物はどんな化け物?いるでしょ?」
「え、それは…一応はいるけど…」
こんなつまらない話に食いついてくれる君はなんだか無邪気に見える。
『しん、やめとけ』
「なんで?お前に関係ないだろ」
脳内でハギザの言葉を無視する。
「どんな化け物なのかな?形とかさ、色とかも一緒?私にとってどんなものなの?」
「あー、どうしてかはわからないんだけどさ。そのー」
「うん、なに?」
灰色で一言も喋らない君の化け物と、一般的にハギザのように意志を持った化け物。
僕が君を見て感じた違和感も含めて、どう説明するかを瞬間に考えた。
『しん、やめろ』
「月乃さんの化け物は灰色で何も喋らないんだよね、だから僕、月乃さんに興味あってさ。結構前から」
『馬鹿だ、ガハッ?がはっ!!』
僕が話し終えた瞬間だった。ハギザが僕よりも前に黒い身体を広げた。それは、君の灰色の化け物が勢いよく広がってきたからだ。
ありがとうございます




