ハギザ40
よろしくお願いします
「今日はありがと、急に呼び込んじゃってごめんね」
「別に大丈夫。まぁ、母さんの前で抱きつかれたのはびっくりしたけどね」
部屋の中心にある丸い黒テーブルに挟んで向かい合っている僕らのこの時間もあと少しだろう。そんなことは、眠たそうな君を見ればすぐにわかった。君との会話の雰囲気も[終わり]と言う句点に似ている。
一方で、ハギザはと言うと、あれだけ警戒していた君の化け物の動きを真似したり、今も声を掛けたりして、必死に煽っていたりしてる。
それにしても、初めて動きを見せた君の化け物は、一向に何かを喋る気配はかった。
「私の化け物だけが少し変わってるのってさ、なんか意味があったりするのかな?それとも私が変わり者だからかな?」
「んー、どうなんだろう。でも僕の考えだけど、取り憑いている化け物と取り憑かれてる本人は比例しないからね。だから意味とか無いんじゃない?それに月乃さんは全然変わり者なんかじゃないよ、少なくとも僕よりはね」
「あはは、そうかも」
「あははは、まって?それはそれで酷くない?」
あははは。
お互いに笑い合った時、玄関の方で扉が開く音が聞こえた。
「あっ、帰って来ちゃった」
「えっ!まずくない?」
帰って来たと言うのは恐らく君の親だろう。君が僕を家に連れ込んでいるのがバレたら面倒になりそうだが、君は至って冷静でつまらなそうだった。
「別に…でも帰った方がいいと思うから。また今度ゆっくり話そうよ、もっと知りたい。修学旅行とかの話もしたいし」
薄く笑っていたはずの君の表情が隠れた。まるで何かに取り憑かれている様だ。
「うん、じゃあ帰ろうかな」
静寂な君の部屋での別れ際、見送りもない君の方へ目を向けた時だ。制服を脱ぎ捨てている君。
柔らかそうな君の肌全体を目にしてしまう。
『しんっ、眠い』
「あぁ、僕もすごく眠い」
酷く冷静な理由は、きっとこの睡魔によるものなんだろう。階段を降りていくと、玄関先では賑やかそうに話す男女が目に入る。
「あれ?息子さん?こんにちは」
「どうも、お邪魔してます」
玄関には入らず外で立つスーツ姿の男性に声をかけられる。眠い僕の頭の中では状況が理解できず、取り敢えず頭を下げた。
「あらいらっしゃい、光ちゃんのお友達かしら?それとも…まあなんだっていいわ」
「お邪魔して…ます」
既に靴を脱ぎ始めている女性にも声をかけられたが、格好があまりにも大胆で目を逸らした。
「じゃあまた、よろしく頼むわね」
「あぁ、また連絡するよ」
男女の横で靴を履き替えている僕も大概なのだけれど、家を出る他人に対してなんの躊躇もないこの男女の関係はどんなものなんだろうか。
通り側、僕は横目で二人の顔を見る。
化け物同士が腕を掴み合い、争っている。
『俺も参加してーなぁ…』
「やめとけ、眠い」
『がぁ、つまらん』
外に出れば、日は既に真上に出ていた。
君の家も遠くなる帰り道で、ハギザに聞く。
「そう言えば、なんで月乃さんは僕を家に呼んだのかな?」
『がはっ、お前馬鹿だろ』
寒い




