第92話 盾の秘密です!
あれから数週間後のこと。
チヨメの忍法で、賢者の石は内容だけ巻物にメモを取った。賢者の石そのものは、再び封印される。
この賢者の石は、キエフ王子によって厳重に管理されるだろう。
哀れなくらい、グシオンは血の気が失せ、老人のようになっている。手下の盗賊二人が担げるくらいに。
「コイツは、アタシが責任を持って連れて帰るわ」
痩せこけたグシオンを連れて帰る男爵夫人の姿は、今でも目に焼き付いている。
騒動の責任を取り、男爵夫人はシングニアとの国交回復交渉に、無償で立ち会った。今後、シングニアは魔族との契約を断ち切り、独自で発展するという。キエフの協力を借りて。
全ての作業が終わり、全員は昼下がりのキエフ王子邸でくつろいでいた。
「以前から疑問だったんだが、どうして、盾を持ちながら攻撃をするんだ?」
「シールドだから、攻撃力がないでしょ?」
武器ではないから『スキル:無手勝』でも攻撃力は乗らないだろう。そう、リッコは思っていたのだが。
「いや、その盾が一番攻撃力が高いんだが……キミが剣に変化させて使ったんだろ?」
なんとなく使っていたから、意識していなかった。
「どれくらい強いんですか?」
「キミがさっきまで装備していた、バスタードソードの三〇〇〇倍くらいは」
「ええ……」
使い込んでいるから、おそらくもっと攻撃力が増しているとのこと。
「てっきり、あの破壊力は意図的なものかと思っていたぞ」
「とんでもない。わたしは手加減をしていたつもりでした!」
どうりで、グシオンを蹴りで粉砕できたはずだ。
「恐ろしいのは、それだけの攻撃力を誇っていながら、誰も殺してないことだ。みんな虫の息という」
ソランジュに指摘されて、リッコは身震いした。
だが、一番驚いていたのは、キエフ王子である。
「ホワイト・ドラゴン!? あなたは、どのような相手を倒したか、分かっているのですか?」
「いえ、まったく」
「そのドラゴンこそ、一五〇〇年前にこの魔王を封じたモノですよ!」
「え、そうだったんですか?」
そんな曰く付きの神様だったのか。
「ボクのおとぎ話にも、よく出てきました」
おとぎ話にでてくるクラスのドラゴンから、ウロコを分けてもらっていたとは。
おそらく、コスタ将軍を埋葬したのも、ホワイトドラゴンだろうと。
早い段階で、リッコは秘宝の秘密に最も近い存在と出会っていたのだ。
「呆れた! 心配して損したよ。そんな大物と知り合いだったとはね」
ソランジュがため息をついた。
「リッコ、キミは本当に、出生を詳しく知らなくていいんだね?」
「わたしは、わたしです。ジョーイちゃん、チヨメさん、それにソランジュさんと友だちです!」
「知り合いだ!」
「えーっ!?」
またも秒で、友だち宣言を拒否されるとは。
「相変わらず、飽きさせないな、キミは」
ソランジュが、クスクスと笑う。
「さて、行くか」
ソランジュが立ち上がる。




