第90話 将軍を倒します!
向こう岸まで行っていたソランジュが、リッコの近くまで引き返してくる。
「バカかリッコ! 丸腰でグシオンと戦うなんて! いくらキミが強くても敵うわけが」
「黙ってろですっ!」
ヒートアップし、リッコはソランジュを恫喝した。
「このおじさんを止めるには、わたしが勝つしかない。あなたが勝つんじゃダメなんです。敗北してもまた化けて出てきちゃいますよ! 武術が負けたんじゃないって言い訳しちゃいますから!」
リッコには、グシオンの心境を理解できる。
彼も、ひとりぼっちなのだ。
配下に囲まれていても、バカにされている。
誰も味方がいない。
その環境が彼を歪ませ、狂わせている。
リッコもデタラメに鍛えられ、親友にさえ避けられた。
自分もずっと一人だったら、自暴自棄になって、すべてを壊す選択肢を取っていたかもしれない。
だからといって、グシオンの行動には納得できなかった。
リッコを支えてくれたのは、仲間だ。
自分一人でどれだけ強くなっても、結局は自己満足である。
それ以上は上に行けない。
「バカにしおって、小娘が!」
憎悪に満ちた真一文字斬りが、リッコに襲いかかる。
だが、リッコは怯まない。相手の懐に飛び込む。
「リッコ!」
ソランジュが叫ぶ。
リッコは、相手が振るう両の上腕を握りつぶした。
グシオンの両腕が、ダラリと垂れ下がる。
「あなたの上腕を砕きました。骨だって白いでしょ?」
「なんと、面妖な!」
なおもグシオンは、折れた腕を振り回す。
だが、手から刀が抜けた。
腕が遠心力に耐えられなかったのだ。
「まだまだぁ! その首もらい受ける!」
なんと、グシオンは柄をかじった。
口にくわえた刀を、リッコに向けて振り下ろしてくる。
「なんという執念でしょう。そのおぞましいまでの闘志に、わたしも応えます!」
負傷しても攻めてくる姿勢はあっぱれと言わざるを得ない。
その姿に、リッコも応えた。
側転をして、リッコは地面に置いたヒーター・シールドを足で拾う。
「シールドぉ、キーック!」
足にシールドを填めて、逆立ちの状態になり、渾身のハイキックを放った。
シールドが、激しく刀とぶつかり合い、刀身を砕く。その勢いのまま、蹴りがグシオンのアゴにめり込んだ。
首の骨が折れる感触を、リッコは確かに聞いた。
グシオンの巨体が、激しい音を立てて地面に倒れる。
「はあ、はあ!」
息を整えながら、リッコは立ち上がった。
生気を失ったグシオンの口から、虹色の魔力が漏れ出す。
「離れろリッコ、まだあいつが!」
ソランジュが叫び声を上げる。




