第89話 わたしは、わたしです!
「剣を折ったくらいで、勝った気にならないでください! シールドォ・キーック!」
みぞおちに、リッコの足刀がクリーンヒットする。
「ぐほぁ!」
盛大に、グシオンの身体がくの字に折れ曲がった。
「魔術の栄えた歴史が、武術を蔑ろにした歴史だと仰いましたね?」
「いかにも! 誰にも理解されず、ひたすら己を鍛える道。人造人間である貴公にも、我が感じた身に感じた屈辱が染みよう!」
「人造人間ですって?」
「知らんかったか。貴公は、キエフが作った超人ぞ。そこの小僧が、よく知っていよう」
グシオンは、刀で王子を示す。
「王子、今の話は、本当なんですか?」
「たしかに、キエフは人造人間を作っていたそうです」
前キエフ王は、コジモ王女を溺愛していた。
だがコジモが死に、「丈夫なコジモを作る」という狂気に取り憑かれてしまう。
コジモの遺伝子から、何体も人造人間を作り上げ、いよいよ最強の戦士が完成した。
だが、その女性は一人の男性と城を脱走する。
怒りにふるえた王は、最終兵器を持ち出す。
王を止めるため、少女はキエフと運命を共にした。
「その娘は、子を宿していた。人造人間と人間との間に生まれた子。それが貴公だ! キエフの古い文献を調査したら、興味深い資料を手に入れた。間違いなかろう」
「キエフを滅ぼしたのは、わたしの母だったんですね……」
師匠が教えてくれなかったはずだ。
「違います! 王が悪いのです! あなた方に非はありません!」
だが、自分を守るために、母は。
「これで分かっただろう? 貴公は孤独になる運命だったのだ! いくら人の姿を取ったと言えど、所詮は作り物の忘れ形見。誰にも触れ合えぬのだ」
リッコは大きくクビを振る。
「言いたいことは、それだけですか?」
母を作り物と侮辱され、リッコの怒りは頂点に達した。
「わたしは、わたしです。生まれなんてどうでもいい」
母は、リッコを救ってくれた。世界を犠牲にするという業まで背負いながら。
「母の行いを、どうこう言われる筋合いはありません! 借借り物の力なんて使ってイキがっているあなたなんかに!」
「ほざけよ、小娘が!」
グシオンに、憤怒の表情が浮かぶ。
「貴公の進む道は、修羅の道ぞ。それでも歩むというか?」
「師匠はそんなこと、教えませんでした。人は守るモノがあるから、どこまでも強くなれると。それを今から、証明致します!」
シールドを外して、リッコは両手を広げる構えを取った。
「何をする気ぞ?」
「真剣白刃取りを、お見せ致しましょう」




