第76話 最後の闘いへ向かいましょう!
「みなさん無事ですか?」
マセッティが執事と共に待機していた。
「無事でよかったです、マセッティさん!」
「ありがとう。みなさん、お怪我は?」
「大丈夫です。それより、これからどうしましょう」
マセッティの屋敷には、もう戻らない方がいい。
「一旦アジトに戻って、体制を整える」
どうして、ソランジュがこの店をアジトにしたか分かった。
チヨメの家が裏にあるから。
ソランジュは、チヨメのアジトに通じる道に、穴を開けた。
そこには、アジトの地下室が。
「ココを通って、アジトに戻ろう」
アジトで一息つく。
タタミの間が落ち着かなかったらしく、マセッティはずっと立ったままだったらしい。
「マセッティさん」
「みなさんご存じの通り、ボクはキエフ王子です。ですが、なおも隠し通せばクテイ王に迷惑が掛かるでしょう。もう身分は隠しません。キエフの問題はキエフが解決すべきです。ボクはキエフの後継者として、彼らに立ち向かいます」
フィナンシェ王子は、高らかに宣言した。
「あーん、王子をキエフに逃がして、男爵夫人もやっつけて万々歳と行きたかったけど、そうは問屋が卸さなかったニャ。あいつ、相当手強いニャ」
「あの女、わずかに魔族の血が混じっている」
ソランジュの分析に対し、王子がうなずく。
「その通りです。男爵夫人デイナ・タンドックは、魔族の血を引いています」
王が、メイドとして潜伏していた魔族との間に産ませた子らしい。
だが、国を内部から破壊しようとした容疑を掛けられ、追放されてしまった。本人にそのつもりなどなかったのに。
人間界にいられなくなった魔族メイドは、魔界へ帰ってしまったという。
「えらくおとなかったんですね? 魔族なんですから、国を襲うものかと」
「子どもに被害が及ぶことを、懸念したんでしょう。自分が謀反を起こせば、子どもまで処刑されてしまう恐れがありますから。何より、王に未練があったという説も」
だが、娘の方は野心の高い女だった。
「男爵夫人は、シングニアの実権を握ろうとしました」
親のことの他にも、魔族との間にできた子どもだっただけに、冷遇された恨みもあったかも知れない。
「彼女も一応王族なので、男爵の夫人という地位を与えられました。名ばかり当主もいいいところですが」
とはいえ、彼女は秘密裏に魔族と手を組み、結社を設立した。
「それが、グシオン将軍率いる集団だと」
「はい。お互い利害は一致しています。夫人はクテイ、キエフ、シングニアすべての実権を掴もうとしています。魔王を倒したソランジュ様の始末を企むグシオン将軍も、秘宝を追っていれば必ずソランジュ様が現れるだろうと」
「私は、秘宝を追うつもりなどなかったんだけどな」
「しかし、現にソランジュ様は秘宝探しをなさってくれています。遅かれ早かれ、こうなっていたのではないかと」
確かに、ソランジュの元に魔獣が送り込まれていた。
居所はバレていたのである。
「キエフへ、秘宝の元に行きましょう。秘宝が彼女たちの手に渡れば、最悪の事態になります」
王子の宣言に従い、リッコたちは最後の闘いに備えた。




