第77話 ここが、お友だちの眠る地ですか?
これだけの大人数では、キエフまで飛べない。貨物用の馬車に忍び込んでキエフまで向かう。隣町だから、すぐだ。
「ソランジュさん、ケガの方は大丈夫ですか?」
「心配ない。こんな傷程度で音を上げるほど、ヤワじゃないさ」
隣で休むソランジュは元気そうだ。
「無茶するニャ。グシオンなんて大物と戦って、五体無事なわけないニャ」
マセッティ……キエフ王子の膝に乗るチヨメが、ソランジュを気遣う。
「チヨメさん、変身を解いてもいいのでは?」
「解いてるニャ。ワイはこれが本来の姿ニャ」
同じ獣人族でも、チヨメは本体はネコなのだとか。
「人間でいた方が、生活に便利ニャから、人の形をしているだけニャ」
人がネコになったのではなく、ネコが人に化けているだけらしい。
「そんなに強いんですね、将軍って」
「別に強くはないニャが、ソランジュが本気になるには、クテイを犠牲にする必要があったニャ」
その気になれば、特大魔法で一発なのだという。
クテイの街をも灰にしてしまうが。
「いつからそんな、博愛主義者になったニャ? 昔のお前なら、容赦なく街を吹っ飛ばしていたニャが?」
「さてね」
なぜか、ソランジュはリッコを見た。
「ジョーイちゃんは、クテイの歴史に、随分と詳しいんですね?」
「母親の実家がクテイだったらしくて。流しの吟遊詩人だったそうです」
ワーンスまでの道中でケガをして、看病してくれた武器屋に居座った。何もあげるものがなかったので、自分を捧げたらしい。
「で、産まれたのがあたしです。なので、クテイやキエフの歴史には多少心得がありまして」
「クテイは、第二の故郷なんですね?」
「そうなりますかね。全然実感が湧かないけど」
言いながら、ジョーイが伸びをする。
「キエフには、いつ到着するんだ?」
じれた様子で、ソランジュがジョーイに尋ねた。
もう数時間は、馬車に揺られている。リッコもさすがに限界が来ていた。
見渡す限り、廃墟と荒野しかない。いつになったら目的地が見えてくるのか。
「どこって、ここですよキエフは」
馬車が止まる。ここが目的地というのだ。
「バカな。ガレキだけじゃないか!」
「ソランジュ様、信じられないかも知れませんが、ここがキエフの首都だった場所なのです」
かつて、キエフの首都にシングニアと魔族が攻め込んだとき、禁断の秘術を発動させたという。それによって、この荒れ果てた土地と化したらしい。
魔族でさえ、荒れ果てたキエフを見捨てた。キエフの文明こそを求めていたから。




