第68話 私に客が来たな……。
イグルたちを操りつつ、ソランジュは強力な魔族の気配を感じていた。
クテイじゅうを見渡せる塔の上に、見覚えのあるシルエットが。こちらへの敵意が、伝わってくる。
「ジョーイ、スマン。ここは任せた」
「どうなさったので?」
「私の客だ」
この場をジョーイに預け、ソランジュは影の元へ飛んだ。屋根伝いに進む。
「ようやく、親玉のお出ましか」
やはり、影の正体はグシオンだった。
「――!?」
塔の下には、虫の息になった騎士団たちが横たわっている。死んではいないが、もう戦えないだろう。
あれだけ強い騎士の一団を、傷一つ追わずに倒すとは。グシオンの腕も衰えていないらしい。
「に、逃げなさい」
騎士団長が、血を吐きながらこちらに呼びかける。
「そうはいかん。ソーマの礼をさせてもらおう。そこでおとなしくしていろ」
余程気が張っていたのか、騎士団長は意識を手放す。
ソランジュは、かつての同僚を睨みつけた。
「貴様ほどの男が、人間の犬とはな。どういう心境の変化だ?」
「主を殺めた貴公に言われる筋合いはない。貴公を殺せるなら、我は誰にでもつく」
グシオンが、刀を抜く。刀身が黒く、光沢がない。怨念を形にしたような、禍々しい拵えだ。
「私はあいつの部下になった覚えはない!」
ソランジュが、キャンディケインを回した。
「その忠義のなさが、昔から行け好かぬと思うておった!」
跳躍したグシオンが、縦一文字に刀を振り落としてくる。
ステッキで受け止めたが、踏ん張りが利かない。建物ごと押しつぶされそうになる。どうにか受け流し、半壊で済ませた。とはいえ、潰された家は、内装が丸見えに。
ここで戦えば、街に被害が及ぶ。広い場所で戦う必要がありそうだ。
「場所を変えるぞ。思う存分楽しもうではないか」
広い場所へ逃げつつ、グシオンを武器を打ち合う。
「いつから貴公は人の子を気遣うようになった?」
「昔から人間には興味があったさ。それより、人を見下すお前たちの態度には、当時から辟易していたよ」
移動しつつ、ソランジュはピンポイントで必殺の一撃を敵に浴びせ続けた。
しかし、グシオンの剣戟に毎回相殺される。
ステッキで突いても、銃モードで射撃しても。
動きながらの攻撃なので、こちらも精彩を欠いていた。とはいえ、ソランジュの太刀筋についてこられる相手は、久々だ。
リッコは力こそ強いが、からめ手には弱いだろう。
「偉大なる魔王に育ててもらった恩を、このような形で踏みにじるとは!」
「お前だって、寝首をかこうとしていたじゃないか!」
「我は貴公とは違う!」
グシオンが加速し、攻めに転じた。
下手によければ、クテイが八つ裂きにされる。
「ちい!」
キャンディケインで、グシオンの猛攻を防ぐ。
憎しみの籠もった一撃は、ソランジュのガードさえ突き抜け、ダメージを与えてきた。
あまりの勢いで、ソランジュの身体が民家に激突する。胸から胴にかけて、刀傷による出血が広がっていく。
「影刃か。インパクトと同時に衝撃波を打ち込む技。久々に喰らったが、相変わらずの威力だ」
斬られた箇所を回復させ、ソランジュは立ち上がった。




