第64話 騎士団長さんは素敵ですね。
「アイリス・フォートだとぉ」
なおも、ギルマスはソランジュを睨む。しかし、顔は蒼白になっていた。
「ちっ!」
なぜか、ギルマスは背を向ける。
ソランジュに何もせず去って行った。
取り巻きの冒険者たちも、恐れおののいて散っていく。
「さすがです。アイリス・フォートの名は、クテイにまで轟いてますね」
「どうしてです?」
「自分でやっておいて気づかないとは。あなたは、三〇〇もの盗賊団を壊滅に追い込んで、シングニアの冒険者ギルドさえ退けたんですよ! 有名人にならないわけがない」
そんなものだろうか。
「旅の方、クテイ騎士団長ですわ。先ほどはありがとうございます」
「いや。同じ魔術師のよしみ、いわれのない因縁の巻き添えになっていたので、放っておけなかった」
「でも、助かりましたわ。是非ともお礼を」
団長は、財布を出そうとした。
「金はいい。ただ、少し回復させてもらえないだろうか? 大魔法を撃った直後で、ヘトヘトなんだ。回復材を切らしていてな」
「お安いご用ですわ。では、特性のソーマをどうぞ」
小瓶に入った光る液体を、団長はソランジュに差し出す。
「よいのか。それほどの働きをしたとは思えんのだが?」
「いいえ。これはデーモン討伐の報酬ですわ。ご遠慮なく」
いかなる状態をも治すソーマは、通称「神の酒」とも言われている。
その秘薬を、団長は惜しげもなく恩人に渡したのだ。
「すごい。あれ、国が買えるほどの値段がするんですよ」
「うわぁ」
貧乏性のリッコには、ため息しか出ない。
勢いよく神酒を煽り、ソランジュは息を整える。
「助かった。では、この件はこれでチャラで」
「およろしいので?」
「構わない。報酬をくれる相手が、他にもいるんでね」
「ああ、するとあなた方が」
事情を察したらしき団長が、リッコに礼をいう。
「お初にお目に掛かります、聖騎士様。秘宝の件、お役に立てず」
「と、とんでもありません! それより出しゃばっちゃったみたいで!」
手をブンブンと振りながら、リッコは謙遜した。
「いえ。素晴らしい偉業を成し遂げられましたわね。王に代わってお礼を言わせていただきます」
団長は頭を下げて、この場を去った。
「感じのいい方たちでしたね」
ギルドも見習うべきだ。
「ソランジュ、騎士との交流もそこそこにするニャ。ワイたちの任務は」
チヨメが急かす。
「覚えているよ。秘宝を早くマセッティに届けよう」
ソランジュたちは、マセッティの館へと向かう。
この紫色をした宝珠が、本当に秘宝ならいいのだが。




