第54話 チヨメさんは、寂しくないんですか?
「今思えば、あれも彼女なりの実験だったんだろうよ。そういう生体実験が大好きな奴だったと最初から知っていたら、従っていたかどうか」
「グシオン将軍も、秘宝を狙っているんでしょうね」
「さあな」
ソランジュの返答は、素っ気ない。
「彼は、私との決着を付けたいだけのような気もするが」
「なぜ、そう思うんです?」
「この地に、ヤツの気配がしないからだ」
もし、秘宝を探しているなら、この地に留まっているはず。だが、ここにいないとするなら、秘宝を手に入れてから攻めてくる可能性が高い。
「秘宝を求めているのは男爵夫人だ。我々に秘宝を手に入れさせてから、ゆっくりと頂戴しようという腹づもりなのだろう」
「そうはいきませんよ。絶対秘宝を手に入れて、奪われないようにしないと」
リッコが鼻息を荒くする。
「キミの出番だ、リッコ」
「はい」と、リッコは口の中のモナカをお茶で流し込んだ。
「その意気ニャ、リッコ。領主マセッティ様も気前がいいから、報酬はソランジュたち二人の分もちゃんと用意してあるニャ」
「二人分だけって……チヨメさん、他のギルドメンバーはどこです? 現地に行っているとか」
自分たちだけいい思いをして、悪い気がした。
「いいや、ひとりだニャ」
「お一人で、ギルドを管理なさっているので?」
ニンジャは、もっと集団で活動しているモノと思っていたが。
「ギルド一本松は、基本的に単独行動ニャ」
父サンダユーがいなくなったので、娘のチヨメが依頼を引き継いだという。
ソランジュとチヨメがまともに組んだのも、今回が初らしい。
「寂しくないんですか?」
心配しながら聞くと、チヨメは「全然ニャ」と返してきた。
「ハンターなんてそんなもんニャ。いつ死ぬか分からないニャ。常に覚悟を決めておけば、不測の事態に対処できるニャ」
仲間が死ぬ。
その事態に遭ったことのないリッコは、冒険者としての自覚がないままこの地までで来てしまった。
「わたしが加わって、大丈夫なのでしょうか?」
今頃になって、リッコは自分が果たして冒険者としてやっていけるか、不安になってきた。
「リッコは友だちで仲間ニャ。気遣ってくれる相手ができて、ワイはうれしいニャ」
チヨメに続き、ソランジュも言葉を告げる。
「さっきも言った。キミの頑丈さは当てにしていると。自信を持っていけ。我々だって、そうそう死ぬわけにはいかん」
「ですよね。キエフにお嫁さんにいったお友達の説を証明しないと」
「私のことはいいさ。そんなに急いてないよ」
休憩を終えて、さらに奥へと進む。




