第55話 敵に囲まれました!
最下層には、異様な光景が。
「なんだ、これは」
紫色に光る紋章が、岩盤の底にあった。
穴の底は、舞踏会のフロアほどある。紋章の大きさも同様だ。岩盤は固く、掘っても魔法で焼いてもビクともしない。ソランジュの魔法でさえ、跳ね返した。
「見たことがないですね。こんな光景」
モンスターが今日まで掘り進み、ようやくここまで辿り着いたという。
「まるで、秘宝が自らを守ろうと張った結界のようだ」
「そうニャ。王家の誰かが張ったモノでもないらしいニャ。まるで、誰かを待っているとしか」
だとしたら、王家の者を探しているに違いない。
「一刻も早く魔物を蹴散らし、王家の誰かに来てもらわないと」
「そうはいかん!」
複数の影に、リッコたちは囲まれた。
「ひゃはは! 見つけたぜ、魔女さんよぉ!」
口調が汚い、柄の悪い連中が、リッコたちを睨む。
肌は灰色に近く、顔に模様が描かれていた。
明らかに、人と呼べない種族である。
「あのーっ、この人たちは?」
「彼らは見たところ、タンドック男爵夫人の配下だね」
全員が、下級の魔族らしい。
前に倒した野党たちよりは、手強そうだ。
「そうだ。男爵夫人の命令で、魔獣を使ってお前を見張っていたんだよ!」
群れの中央にいる、がらんどうのヨロイがしゃべった。
「私の屋敷の周りを、魔獣がうろついていただろ?」
「はい。森の外にいた魔物とよく似ています。もしかして?」
「魔王の眷属だよ」
魔獣か。そういえば。
「ヤツらが私を探していたのさ。仇である私を殺すために、ね」
「それじゃあ、イグルちゃんが狙われたのも!」
「可能性は高い」
リッコの家畜は、自生したキノコを食べて死んだ。
だが、ソランジュの使い魔は、狙われたのかも知れない。
「イグルちゃんが危ないのでは?」
「大丈夫だ。アンテナは潰したから」
リッコが取ってきたレア魔獣の角は、魔獣を呼び込むためのアンテナだったという。今は、ソランジュの手許にある。
「いわば、私がこの角を持っているのは、『殺せるなら殺しに来てみろ』という挑発行為だったのさ」
「この間、ジョーイさんに武器を見てもらっていましたが?」
「気づいていたよ。だから、それを彼女は真っ先に消しちゃったんだよ。『魔力の流れが雑だ』って言っていただろ?」
なら、安心か。
それにしても、魔獣のアンテナを消し去ってしまうなんて、ジョーイは想像以上にすごいのかもしれない。
「さあ、私はここだ。宝が欲しければ、力ずくで取るんだな」
ステッキを振り回し、ソランジュは下級魔族たちを威嚇する。




