第53話 魔王アガリアレプトって、何者ですか?
「あんまりです。ひと思いに魔族のアジトに乗り込みましょう」
「ヘタに魔族の根本なんて潰してみろ。ヘイトがこっちに移るだけだぞ」
ソランジュが、息巻くリッコをたしなめた。
冒険者が戦う理由は、世界平和のためではない。
明日生きるためだ。
秘宝を優先し、自分たちが糧を奪ってしまえば、今度は秘宝が雑に狙われるだろう。
「連中は、あのままでいいのさ。せいぜいお稼ぎをすることだね」
「仕方ないですね」
冒険者に、協力は仰げない。自分たちでやるしか。
「あまり言ってやるニャよ、ソランジュ。ヤツらも生活がかかってるニャ。だからマセッティ様も、マジックアイテムに関心を示さないお前をよこしたニャ」
「確かに。こちらは単なる思い出探しの道楽だからな。こちらのワガママに、彼らを付き合わせるわけにもいかぬか」
ソランジュの靴音に、わずかな苛立ちが混ざる。
「きゅ、休憩しましょう! あそこの足場なんて広そうじゃないですか!」
リッコは気を利かせた。
ある程度のエリアまで辿り着き、一息ついた。
アイテム袋から、チヨメが軽食を出す。
「ここからは集中力が必要ニャ。ちょっと腹に何か入れるニャ」
甘い豆を挟んだクラッカーと、お茶をいただいた。
「口がパサパサします。でもおいしいですね」
「手作りの『モナカ』ニャ。気に入ってくれてうれしいのニャー」
モナカを気に入ったリッコは、何度もおかわりをする。
「冒険者の目的は分かりますが、魔族がここを妨害しようとする目的ってなんです。あのグシオン将軍という、黒いお侍さんも気になります」
「彼らの強さの秘密こそ、魔王だからな」
魔王とは、魔族の中で一番偉いだけでなく、いわゆる魔力の増幅装置としての立場もあったらしい。魔王がいることで、魔族も力が倍増するのだという。魔王復活は、自身の力を誇示するためなのだ。
「ソランジュさんを恨むわけですね」
「ヤツらは自力で強くなる術を知らぬ。知っていてもやらないんだ。鍛えるなんて、彼からすれば女々しい行為だから。力はより高い存在から与るか、奪うものだと思っている」
探究心のカタマリのようなソランジュからすれば、さぞつまらない世界に移っただろう。
「魔王アガリアレプトって、どんな人だったんです?」
「アガリアレプトは、変わったヤツでな。弱いモンスターに力を分けて、鍛えるのが好きだった。私やグシオンも同じだ。グシオンはオーガ族の末端構成員だったんだ」
弱い者に力を与えて忠誠を誓わせ、上位のモンスターを殺させるのが楽しかったらしい。




