第52話 冒険者とはいったい……
チヨメの転移魔法で、目的地近くまで飛ぶ。岩山ばかりのエリアに到着した。
「便利ですね、転移魔法って」
「あくまでも数キロまでだ。『地球の裏側まで飛べ』と言われても不可能だよ。まして人を連れていては」
朱砂の魔女も、万能ではないらしい。それでも凄いのだが。
「こっちニャ」
チヨメが先行し、谷を下る。
「道が狭いですね!」
時に壁を這い、時に足場を飛びながら道なき道を行く。
「魔物たちが適当に掘り進んだ道を、下ってるニャ。だから足場は悪いニャよ」
置いていかれないように、リッコは道なき道を進む。
突然、大地が揺れた。
「うわ!」
噴火か? と思ったが違う。
何者かが大魔法を展開し、地割れを起こしたのである。
無数のモンスターが、谷底へと落ちていく。
大魔法を放ったらしき女性が、書物を閉じた。
同時に、地割れがゆっくりと元に戻る。
残った怪物を、武装した一団が剣や槍によって蹴散す。
「はえー。すごいです!」
リッコは、華麗な手際の良さに感心した。
息もつかせぬ攻撃とは、このことか。
これは、自分の出番はない。
山の向こうでは、冒険者たちの中で、一際豪華な装備をしている男女数名が、魔族や配下のモンスターと戦っていた。
彼らを相手する敵も、手強くなっている。
また、彼らは並の冒険者と違い、報酬のために戦っている様子はない。
「あちらの方たちは?」
「王直属の兵隊だ。あまりに冒険者たちが不甲斐ないから、ああやって露払いしているのだよ」
装備からして、一際手練れ揃いという風貌である。
至る所で奥義が炸裂し、大魔法が飛び交う。
それでも、魔族の数は減っていない。数が多すぎるのだ。
「彼らが出張らなければならないくらい、クテイも疲労の色が見えているということだ。はやく秘宝を探してやらねば」
「それに引き換え……」
岩山の周辺では、マセッティが雇った冒険者たちがモンスターと戦っている。
「まだ、魔族と戦ってますね」
「欲に目がくらんだ連中だ。放っておけ」
どうせ事情を説明したとしても、彼らはレアアイテムを求めて魔族を狩るだろう。本来の目的など忘れて。
「シングニアのワナだって、教えなくていいんでしょうか?」
「貴重な文献が目の前にあるというのに、目先の金を求める連中だ。関わったところでロクな目に遭わん」
辛辣な態度で、ソランジュは返答する。
それだけ、シングニアのワナが魅力的なのだ。
騙されていると分かっていても、止められない。
冒険者の習性を逆手に取った、見事な作戦である。




