第38話 「ユリ」って何ですか?
早速、ジョーイは開業の準備を始めた。手持ちの道具をカウンターの奥に置いていく。
「それにしても、リッコさんはすごい方とお知り合いなのですね」
「まだ会って一週間も経っていないのに、お世話になっています」
「ほほう」
なぜか、悩ましげな眼差しを、ジョーイは向けてくる。
「いくらお強いとは言え、ソランジュ様のような凄腕と肩を並べるとは。どのようなコネクションがあったので?」
「私が、護衛を依頼したんだ。今回の仕事は、どうしても一人では解決できなさそうなのでな」
「ふむふむ。ソランジュ様でも手に負えない輩が相手とは?」
不信感を募らせているような聞き方だ。
「これには深い事情がございまして」
なるべく、ソランジュが「魔王を殺した恐ろしい魔女」と気づかれないように、やんわりと説明せねば。
「いや結構!」
シュバッという擬音が鳴りそうなポーズで、ジョーイはリッコの言葉を遮った。メガネの奥にある瞳がギラリと光る。
「みなまで仰いますな。これ以上の詮索は、百合道に於いて無粋というモノ」
「ユリドウ?」
「とにかく、これ以上は聞きますまい。はーあ、捗るわあ」
まるで別人にでもなったかのようだ。ジョーイは一人で納得し、一人でうっとりしている。
「ソランジュさん、ユリってなんですか?」
「知らん。キミに白百合という名が付いているから、強いって意味では?」
「でも、ソランジュさんも関係しているように聞こえましたが」
二人が話していると、ジョーイが苦笑いを浮かべた。
「まあ、どちらかというと、『絆が強い』という意味でしょうかね?」
「わあ、ソランジュさん、わたしたち、絆が強いらしいですよ!」
「どうだろうかね。まだ気心は知れてないと思うが」
リッコはソランジュと親しくなってきたと思うが、ソランジュは相変わらず素っ気ない。
「いい物が見られて、やる気が漲ってきたーっ! しっかり稼いで、出資額をお返し致します!」
よく分からないが、ジョーイが張り切り出す。
「いらないよ。ほんのお礼だから」
「こういう契約はしっかりしておかないと、後でトラブルになります! 商人は信用が大事ですので!」
頑なに、ジョーイは譲らない。
「じゃあ、武具の調節料は無料にしてもらえるか? それを店舗代としよう」
「お安いご用で。本来なら、国が買えるほどの金額なのですが、勉強させていただきます!」
「それと、これを」
リッコのベルトを操作し、剣だけを取り出す。
「ヨロイの他に、これを調べて欲しい」
ソランジュは、リッコの剣をカウンターに置いた。




