第37話 お店兼、アジト購入です!
街を少し歩いてソランジュが向かったのは、一件の小さな空き家である。二階建てで、一階は店舗のようだ。
「ここは?」
「キミの店だ。ここで商売をするといい。ここを報酬代わりに差し出そう」
「えーっ!」
ジョーイが、大きく仰け反る。
「お店とか早すぎます。商人はまずどこかで修行をしてですね」
ソランジュはジョーイの言葉を聞かず、店にドカドカと入った。軽く風魔法を起こし、部屋中のホコリを外に出す。
「ソランジュさん、どうやって、こんな店を探してきたんです?」
「跡継ぎがいなくなってな。好きに使っていいそうだ」
キッチンにある階段を上がって、二階へ。トイレの他に、合計三部屋ある。また一階に戻って、今度は地下へ行く。ここが、ジョーイの作業場だ。
「そこまでしていただかなくても、ソランジュ様! あたしの部屋ですから、あたしが全部やりますって!」
遠慮するジョーイに、ソランジュは言い放つ。
「誤解なきよう。何も、キミのためだけに買った家ではない。我々も使うのだ」
「皆さんも同居なさるので?」
「うむ。ここを我々のセーフハウスとする。いわゆるアジトだな」
なにも、ジョーイのためだけに買い与えたわけではないらしい。
「もう、宿を探す必要はないんですねっ、ソランジュさん?」
リッコが尋ねると、ソランジュはうなずく。
「オネスではな。好きに使ってくれ。プライベートも必要だろう。手狭になったら、また引っ越す」
指をソランジュが軽く回しただけで、部屋にあった雑巾が勝手に内装の汚れを拭き取る。
古びた店舗が、新築同然の輝きを取り戻した。
「よろしいので?」
「ああ。『バカな錬金術師』による謀りを暴いてくれたお礼さ。受け取ってくれ」
皮肉にも程がある。
やはり怒っているのでは?
わざと借金をこさえさせ、今度こそ遊郭へ売るとか考えていそうだ。
「キミのようなレベルの鑑定、アイテム精製職人は、下手に修行すれば師匠に便利屋扱いされてしまう。どうせ働くなら、店をドンと構えて堂々としてくれたまえ」
ジョーイが、ソランジュの前にひざまずいた。
「あなたは神ですか? それとも、願いを叶える悪魔か魔神の類いなのでは?」
「私はただの魔女だよ」
「ありがたやー」
両手を胸の前に重ね、ジョーイは感謝をする。
「いやぁ、転職して早々に店を持てるなんて! ありがとうございます」
「維持費とかは、考えなくていいから。半年は赤字になると見越している。キミの腕なら、半年の間に利益を出すだろう」
「そこまで認めて下さるなんて。何から何までありがたき幸せ」




