第35話 正体がバレちゃいますよ!?
「ついでに、こいつも」と、ソランジュはリッコのヨロイが収まったベルトまで、ジョーイに差し出した。
「この中には、リッコが装備している白銀の全身ヨロイが入っている。こうやって、と」
ソランジュはベルトを操作して、ヨロイを外へ出す。
「おお、これはまた摩訶不思議な」
商人魂に火が付いたのか、ジョーイの目の色が変わる。
「この鑑定と、修正案を聞きたい」
「かしこまりました。すぐにでも。しかしまあ、どなたがこんな細工を」
「それはだな……おいおいなんだ?」
会話を中断させ、リッコはソランジュの腕を引いた。
「しばしお待ちを、ジョーイさん」
ジョーイに聞かれないように、ソランジュを近くの路地裏へと連れ込む。
かたやジョーイの方も、こちらに注意を向けず、鑑定に没頭する。
「ちょっとソランジュさんっ、あなたは『朱砂の魔女』さんですよ。うかつに名乗ったら」
「誰も私が『朱砂の魔女』だとは知らん。ギルドでも驚かれなかっただろ?」
言われてみれば。
ワーンスに魔女が現れても、誰一人として注目していなかった。ひどく腕の立つ冒険者としか気づかなかったようである。
「つまり、実物の魔女を誰も見たことがないのだよ。『ソランジュ・オルセン』なんて名前を、君も知らなかっただろ?」
「なるほど。だから名乗っても平気なんですね?」
受付嬢以外、魔女の本名を知らないらしい。
「ソランジュさま。ありがとうございます」
話している間に、鑑定が終わったようである。
「父が作ったリッコさんのヨロイも大したもんです。白銀のフルプレート・メイルはこれまで過酷な環境下でも美しさを失わず、丈夫です」
綿製の黒地インナーに至るまで、カッコイイから気に入っていた。冒険者になってから、このヨロイを愛用している。
「父は融通が利かずキライでしたが、仕事人としてはホンモノだと言わざるを得ません。リッコさんの凜々しさを演出する、素晴らしい装備かと」
「えへへ、ありがとうございます」
自分のことのように、リッコはうれしくなった。
「ソランジュ様のステッキも業物ですね」
さすが、鍛冶屋の娘だ。ソランジュの腕前をよく分かっている。
「が、アイテム精製として雑すぎます。色々ごちゃ混ぜしすぎて、本来のパワーの半分も出せていませんよ! まったくどこの誰がこんなポンコツを作ったのやら!」
あなたの目の前にいる人ですよ、と言いかけて黙り込む。
「帽子などのお召し物も、せっかくのコーディネートが台無しになっています! 素材はいいのに。どうすればここまでヒドいマジックアイテムにできるのか!」
恐る恐る、リッコはソランジュの方を向いた。
「ソランジュさん、怒ってます?」
「いや、まったく」
笑顔が怖い。




