第34話 僧侶さんは、商人さんでした。
出会ったときのことを、リッコは思い出す。
ジョーイは僧侶なのに、負傷者そっちのけで魔獣の素材を漁っていたのである。
あのときは、二度と復活しないように浄化しているのかと思っていた。
おかしいと思っていたが、出自を聞いてリッコは納得する。
「あれは、素材の吟味をしていたんですね?」
「はい、もはや職業病でして」
「冒険者になりたかったと。鍛えていたんですねぇ」
「ええ、護身術程度なら多少は。治癒魔法も、『自活するなら必要かなー』と思って習得した程度でして」
シュッシュ、と、ジョーイは正拳突きを繰り出す。けれど、腰が入っていない。
「ジョーイさん、後衛で魔法使い職という手も」
「それだと、自分でマジックアイテムを使う機会がありませんのです」
ジョーイは魔法使いになりたいわけではなく、マジックアイテムを使いたいようだ。
ちゃんと自身の役割を考えているらしい。
「クテイには、どういった経緯で?」
てっきり、ワーンスを拠点にするのかと思ったが。
「故郷に居づらいという意見もあります。ですが、本命は、パーティがあたしの鑑定士としての能力を当てにしたようでして」
ジョーイのサブジョブは『商人』で、「アイテムの鑑定」スキルを持つ。
しかし、「あまりにも戦闘要員として使えない」と、退職させられたとか。
「役に立たない」というより、「ここからは危険だから、命を大事にしろ」という温情からの解雇だという。リーダーには何の非もないそうで。
「無駄に命を捨てさせない、いい上司じゃないか」
ソランジュは、リーダーのあり方を感心した。
「はい。もっとも、リーダーは『自分の判断ミスが招いた事態』だから、と自身を責めておりまして、パーティも解散しました」
人格者な彼なら、どこでもやっていけるだろう。早死にするかも知れないが。
「申し訳ありません。せっかくパーティ加入の手助けまでしてくださったのに」
「いえいえ、こういうのは巡り合わせですから。これから、どうなさるおつもりで?」
「僧侶としてより、鑑定やアイテム精製に力を注ごうかと」
懸命な判断だ。
慣れない戦闘を続けるより、商売に精を出す方がいい。
「今後は、この地でイチからやりなおす所存で……おお!」
ジョーイは、ソランジュの装備に目を向けた。
「どなたかは存じませんが、リッコさんのお友達様、失礼ですが、ステッキを拝見しても」
「私はソランジュ・オルセンだ。一向に構わんよ」
「ソランジュさまですね。承知致しました」
では、とジョーイはステッキを吟味する。




