第31話 黒いお侍さんです!
黒い侍は、長い白髪をなびかせ、黒い東洋風の鎧に身を固めている。下は袴だ。二メートル近い背丈だが、漂わせる気迫に押され、五メートルほどにも見えた。特徴的なのは、二対の角だ。オーガ族らしい。
「将軍、任務は果たしましたが、魔女は討てませんでした。お許しを」
「うむ」
自分の配下であるシトリーを、将軍と呼ばれた男性は刀で貫く。
「なあ?」
その光景が信じられず、リッコが呆然となった。
「聖騎士の聖なるオーラから浴びせられた傷は、魔族の力では治せぬ。貴様は死ぬ運命にあったのだ」
「ひっ、ひいいいいいい!」
ハーピーの身体が霧と化して、将軍に吸収されていく。
「これだけの血液があれば、我が悲願も達成されると言えよう。シトリーよ、見事な最期だった」
何か、将軍は満足しているようだ。
「グシオン将軍だな? いつからシングニアの犬になった?」
巨大な影は答えず、月夜へと消えていく。
「何が目的だったのでしょう」
「分からない。ただ、どうやら血液を集めていたようだ」
なにも村人だけではなく、盗賊や冒険者でもよかったらしい。
その証拠に、全員が死んでいた。
「敵は吸血鬼か何かですか?」
「違う。確かに、グシオンと、さっきのハーピーは上位の魔族だ。とはいえ、血液をエサにしているわけじゃない。そんな彼らが、どうして大量の血液なんかを?」
謎は深まるばかり。
「とにかく、村は救われた。報告してさっさと帰ろうじゃないか」
「はい!」
すぐにワープし、マセッティの屋敷へ。
「グシオン将軍が!?」
報告をすると、マセッティが苦々しい顔になる。
「彼は、キエフを襲撃した首魁です。いずれ本格的に決着をつけねば」
「どうする? 倒すか? そう依頼してくれたら、探すぞ」
マセッティは首を振った。
「いえ、秘宝を追っていれば、いずれまみえることでしょう」
下手に動いて、秘宝も見つからず、グシオンにも逃げられるのでは、目も当てられない。
「今は、秘宝探しに専念ください」
「承知した」
「それより、この度の働き、お見事でした。これで、クテイの治安は守られるでしょう」
莫大な量の金貨とともに、礼を言われる。追加の報酬として、宿まで手配してもらった。
「いやいや、寄り道して申し訳ありません」
「とんでもございません。盗賊退治の冒険者が不足していると察知してくださったのは、あなたを含めわずか三組のパーティでした。しかし、そのパーティもひと組は全滅。もうひと組も、当分は行動不能だそうで」
思っていた以上に深刻な状況らしい。
当然だ。三〇〇人を超える盗賊の中には、シングニア側の冒険者もいたのだから。
「何より、グシオン将軍が絡んでいると分かっただけで、対策が打てます。より一層、この街の警備を強化することに致します。ありがとうございました。秘宝を二人きりにお任せする形になって、申し訳なく」
「いえいえ! 危なくなったらいつでも仰ってください! 駆けつけますよ!」
「ありがとう、リッコさん。では、おやすみなさいませ」
二人は冒険者ギルドにも報告後、宿に戻って一息ついた。




