第29話 魔王の配下と対決です!
いつの間にやられた?
冒険者が倒されるまで、太刀筋が見えなかった。
「何者だ!」
ソランジュの問いかけに応じるかのように、竜巻が止んだ。
影が、正体を現す。
「ワタシは、魔王アガリアレプトの配下にして、魔族グシオン将軍の刺客、ハーピーのシトリー」
シトリーと名乗る少女は、黒い羽根を集めてできたマントを羽織る、ボブカットの少女である。髪の毛も目の色も黒く、魔族の黒い一面を体現したような姿だ。
「アガリアレプトって?」
「私が従っていた魔王の名だ。もう冒険者学校のテキストにも載らない名前だが」
シトリーは猛禽の手足を、こちらに向ける。
「グシオン様の命により、あなたのお命を頂戴しに参りました」
「グシオンの? お前が指揮しているわけではないのだな?」
ソランジュが話しかけても、シトリーはただ嗤うばかり。
「ワタシは、将軍から指示を受けているのみです。将軍の邪魔はさせません」
「シングニアとグシオン将軍との関係は?」
「それは、ワタシを倒して聞き出せばよろしい!」
シトリーが、ソランジュに斬りかかる。猛禽類の両腕を旋回し、竜巻を発動させた。
「ソランジュさん、グシオン将軍って?」
手を貸そうとしたが、ソランジュに止められる。
「私と同じく、魔王に仕えていた者だ。どちらかが次期魔王候補として上げられていたそうだ。私は魔王の座に興味などなかったが」
軽々とシトリーの竜巻攻撃をかわしながら、ソランジュは告げた。
グシオンが軍を率いて攻め込む強行役で、ソランジュは外部との交渉役だったらしい。
「そんな実力者が、どうして魔王を殺しました? 覇権を握りたかったのでございましょう?」
「冗談じゃない。あんな不自由な生活、まっぴらだ」
剣をたたき込みながら、ソランジュとハーピーは罵り合う。
「腕が鈍りましたね、ソランジュ様。隠居生活で身体が鈍ったのでは?」
「全力を出していないことが、分かっていないようだね?」
「その虚勢が、いつまで続きますかね!」
反時計回りに側転し、ハーピーが蹴り込んだ。狙うは、ソランジュのアゴだろう。
「ソランジュさん、危ない!」
シトリーの足爪が、シミターのような形状になって伸びる。ソランジュのノドを切り裂くつもりだ。
「ぐう!」
うめき声を上げたのは、仕掛けたシトリーの方である。
自分のノドを守るために、ソランジュは相手のノドへとステッキで一撃を食らわせたのだ。
何のためらいもなく、懐へ飛び込んで、カウンターを浴びせるとは。
発想が、えげつない。




