第20話 敵は隣国の大物です!
魔王を殺したことで、ソランジュはお尋ね者になってしまった。
追っ手は大したことない。しかし、姫と無関係を貫く必要があった。
「古巣と敵対関係になったコトより、友にさよならを告げなければならなかったことの方が、よっぽどつらかったな」
逃亡の果てに、木々が生い茂るあの山中に屋敷を建て、引きこもったのである。人との交流は極力避けて。
姫の方も、隣国のキエフ王国へ嫁に行ったと聞いた。その後の報せはない。
「姫とはそれっきりだ。便りもない。おおかた、愛想を尽かされたのだろう。私と彼女はその程度の関係だったんだ」
「その国ってどうなったんです?」
「知らんね。いくら私が天才魔術師と言っても、クテイの未来までは占えないよ。まじないは呪術師の仕事さ。しかも当てにならない」
あらゆる魔法を操るのに、ソランジュは迷信の類いを信じない。現実的で合理的という印象を、リッコは受けた。
「わたし、クテイとキエフがどうなったか、知っているかも」
「本当か?」
「だってわたし、キエフで拾われたそうなので」
何らかの事故で焼け残った寺院から、リッコは拾われたとだけ聞いている。
「キミには、キエフと因縁があるらしいね」
「さあ、分かりませんが」
一日目は、何事もなく過ぎていった。近くの村で一晩泊めてもらう。
「失礼だが、盗賊ってのは、何者か分かるか?」
夕食時、ソランジュが村人に盗賊のことを聞き出す。
「ありゃあ、シングニア国の国境から来ているだす」
シングニア王国は、クテイから独立し、敵対している小さな国だ。
クテイとキエフの間、北西にある山岳地帯である。作物も育ちにくい土地で、まさに陸の孤島と言ってもよかった。
両国が組むのを阻止しようとしていたらしい。
「中でも、タンドック男爵夫人が妙な動きをしてますだ。クテイの秘宝を求めているだとか」
「その男爵夫人というのは?」
「シングニアの実力者ですだ。ダンナは死んで未亡人になっていますです。が、夫人は未だに強い力を持ち、ヘタすりゃ王様より発言権がありますだ」
男爵夫人レベルの女性が、国王より地位が高いとは。
「なんでも、夫人は魔物と手を組んだというウワサまでありますだ」
「そうか。貴重な情報をありがとう」
村人たちに礼を言い、ソランジュは夕飯代を奮発する。
「ソランジュさん」
魔物か。魔王が死に、おとなしくなったと聞くが。
「私の住処も、魔獣の攻撃を受けるところだった。かなり気にしていた方がいいかも知れない」
その日は、早く休むことにした。




