第21話 盗賊全員、素手でやっつけちゃいます!
二日目の朝を迎えた。
あと半日もあれば、クテイにたどり着けるだろう。
クテイまでもう少しというところで、リッコたちは盗賊に囲まれた。
素肌にジャケットを羽織った小太りの男が、指揮を執っている。彼が頭目だろう。
「有り金全部置いていきな!」
頭目が蛮刀を舐めながら、いかにも悪党然とした言葉を吐く。
乗客と御者は縛られ、リッコとソランジュも、馬車の側面で諸手を挙げている。
御者のいないタイプの馬車がよかった。巻き込まなくて済んだから。
「どうして、降伏しちゃったんです?」
リッコは、稽古着姿である。
「ヨロイは付けるな」と言われた。
命令は盗賊からではなく、ソランジュから。
なぜだろう、とずっと考えている。
「降伏するフリをして、今は無抵抗を決めよう。五〇人か。結構な数だが、やれるか?」
「丸腰でやれと?」
「そうだ。できそうか? 武器が必要なら、賊から取り上げて使うんだ」
効率は悪い。
だが、相手を油断させるためだ。その方がよさそうである。
「やってみます。じゃあ、ソランジュさんは他の方々を守ってください」
「お安いご用だ」
「では、行きます!」
盗賊からは、いきなり馬車の護衛が一人、消えたと思ったことだろう。
リッコは最初、人質を取っている盗賊五人の腹に一撃を食らわせた。
五人が同時に、悶絶して倒れる。
反撃がバレた。
弓兵が、こちらを狙う。
「ソランジュさん!」
リッコが頼む前に、ソランジュはことを済ませていた。
弓が、見えない壁に弾かれる。
ソランジュが馬車の周辺に、魔法の障壁を張ったのだ。
これで、誰も巻き込まなくて済む。
丸腰のリッコは、徒手空拳で五〇人の盗賊を相手する。
木の枝で一回転してからの蹴り、拳、投げ。
武装した相手は、武器を奪って無力化した。
再び、弓兵が矢を放ってくる。
軌道を読んだリッコは、雨のように振ってきた矢をすべてキャッチした。手にした矢を、今度は相手に投げ返す。
弓兵たちの肩に、矢が突き刺さった。
持ちこたえた弓兵は、登っている木を蹴って落っことす。
受け身を取らせないよう、落下と同じタイミングで腹に一撃を食らわす。
「なんだ、あのヤロウ。丸腰なのになんであんなにも?」
「知らないのか。アレがモンクのスキルだ」
そう。『無手勝』というスキルだ。
「装備している武器と同じ攻撃力を、素手で相手に与える」
スキルである。
リッコは、剣と同じダメージを、徒手空拳で相手に与えていた。
このスキルを用いるケースは二つだ。
殺生したくないが、武器がなければ勝つのが難しい相手と戦うためが一つ。
または、自身の拳や蹴りの方に信頼を置いているときだ。




