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愛 再動   作者: 真琴
7/9

不安

優子とコンサートに行こうと盛り上がったあの日から ずっと頭の中はコンサートアーティストより優子の事ばかり考えている まだチケットを手にいれてもいないのに...

期末テストも終わり夏休みが始まる 小学校 中学校 と楽しい夏休みの始まりだったのに 今年の夏休みは少し違う 優子に会えない辛さが夏休みの楽しさを上まわる 長い夏休みの始まりだ

夏休みは小遣い稼ぎにアルバイトをした 高校生の短期バイト たいして時給は良くないがいたしかたない 秋のコンサートチケット代を稼ぐためなのだから それも自分と優子の2枚分をねっ なんて考えていると夏の暑さも少し紛れるような気がした

仕事がキツくて気分が折れそうになった時には 秋のコンサートの事を考える あれこれと想像を膨らましていくと無意識のうちに口角が上がっている

短期バイトなのでなかなか名前を覚えてもらえないなか僕に付けられたあだ名は ニコちゃん ツラい仕事でもいつもニコニコしているかららしい パッとしないあだ名だけど おかげでバイト先でも風あたりすごくいい

昼休憩には職場の正社員の方が「 ニコちゃん めし行こうかっ おごってやるよ 」なんて事も度々ある おかげで昼ご飯代がうく まさに一石二鳥 いろいろな人が昼ご飯に連れて行ってくれる その度に聞かれるのがバイト代の使い道 僕は素直に『 好きな人とコンサートに行くためです そこでその人に告白したい 』と自分の想像する世界を口にする 中には「 青春だなぁ チケット代って高いのか? 俺がだしてやるよ 」なんて言ってくれるベテラン社員さんもいた がしかし僕は『 自分の力で汗流して頑張りたいんです 彼女の分も 』と答える こうして僕の株はどんどん上がっていく

けして綺麗事を言ったのではなく本心から出た言葉だ 「 そぉか がんばれよっ また冬休みもバイトに来いよ その時に結果教えてくれよ 若いっていいなぁ 」なんて会話が弾む

夏休みも前半が終わり後半へと進んでゆく 1日のバイト時間と時給を掛け それに働いた日数を掛けてみる おそらく目標の2枚分のチケット代は確保できている ここから先は交通費と食事代 頭の中で二人で食事をする姿を想像しては またニコちゃんになっている

社員さん達も「 ニコちゃん 今日も暑いねぇ 」なんて言葉をかけてくれる あと少し あと少しでバイトの期間が終わる 僕は自分で自分にラストスパートの声援を送る

夏休みもあと数日 がむしゃらに働いたバイトも最終日を迎えた 会社の皆さまから「 ニコちゃん また来いよ 」「 ニコちゃん楽しかったよ 」「 がんばれよ ニコちゃん 」なんて言葉をかけられ ほんのひと月余りのアルバイトだったのに少し目頭があつくなった

数日後バイト代をもらいに再度バイト先へ行った 『 どうもありがとうございました 』とハンコを押し経理のおばさんからバイト代をもらった 経理のおばさんが「 あなたのおかげで職場が明るくなったよ 社長も喜んでたよ 」えっ⁉︎ 社長さん? 後にわかったんだけど一緒に昼ご飯を食べに行ったベテラン社員のおじいさん その人が社長だったらしい

家に帰ってバイト代を封筒から出す こんな札束見た事ない 暑い中頑張ったもんなぁ 自分が思っていたよりずいぶん多い 給料明細を見ると時給が面接時に聞いた金額より100円も多い ラッキーと思ったけど 使った後で『 間違えてました 返してください 』なんて言われても困るのでバイト先に問い合わせの電話をいれた

ほんと つくづく小心者だ

バイト先の経理のおばさんに電話を取り次いでもらい時給が間違っている事を告げた するとおばさんが

「 それで合ってますよ 社長からのご褒美ですよ 」ほんと泣きそうになった

『 ありがとうございます と社長さんにお伝えください 』とおばさんにお願いし電話をきった やったぁー‼︎ すごくすごく嬉しかった

夏休みの最週末の日曜日がチケットの発売日 早起きして始発の電車で通学で使う乗換え駅へ向かう その駅に隣接する百貨店にチケット売り場がある まだ周りが薄暗い中 9番線に電車が到着する ホームを歩きながら7番線のホームを見て 『 いってきます‼︎ 』と心の中でつぶやく

百貨店に着き列へと並ぶ 僕の前には前日からの徹夜組が数十人いた

大丈夫かなぁ チケット売切れたりしないよなぁ 仮に買えたところで後ろの方の席だったりしたらテンション上がらないよなぁ なんて考えながら開店時間を待つ 半年前の春のコンサートチケット発売日にここで優子に初めて出会ったんだよなぁ なんて考えているといつものニコちゃんが戻ってきた

開店の時間になってぞろぞろと列が店の中に吸い込まれてゆく ようやく僕の番だ『 チケット3枚お願いします‼︎ 』店員さんがパソコンをカタカタ打ち込む 「 チケット3枚ご用意できました 」肩の荷がスッと降りた

支払いを済まして席を確認する 37列目 後ろから数えた方がはやい場所だ 脱力感が僕を襲う ため息をつきながら店を離れようとした時 僕の数人後ろで「 チケットが売切れました 」と店員さんが言っている 隣の大きな街でのコンサートのため発売開始から数分での売切れ 大半の人が肩を落とし引き返していく まさにプラチナチケット 席は悪いが行けないわけじゃない よくがんばった俺 ‼︎

チケットをしっかり握りしめ家に着いた 玄関のドアを開けたと同時に妹の優が駆け寄ってきた

「 俊ちゃん チケットどうだった ⁉︎ 」

『 もちろん買えたよ ‼︎ 』

「 何列目 ⁉︎ 何列目 ⁉︎ 」

『 37列目 』

「 えー すごい後ろじゃんかぁ 」

人の苦労も知らないで このバカ妹めっ ‼︎

『 でもさぁ 僕の数人後ろで完売だったんだぜ プラチナチケット ‼︎ プラチナチケット ‼︎ 』

「 って事はさぁ 俊ちゃんのひとつ前の人は もっともっと前の席だったって事だよねぇ もっと早く家出ればよかったのにぃ 」

始発電車で行ったんだけどなぁ 優が寝ている間に なんて思いながらも 結果が結果なので何も言い返せなかった

『 そうだね 』

と一言残して部屋に入る 人の苦労も知らないで


と共に優子に『 チケット取れたよっ 』なんてテンション上げて渡したら 妹のように返されるのだろうか と考えると不安と脱力感で夏の疲れが一気に押し寄せてきた


喜んでもらえるのだろうか

心配ばかりが心を締めつける

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