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傷物才媛リーウィア、断れない政略結婚の裏をすべて見抜く  作者: 黒依クロ
第六章 傷物賢夫人リーウィア、厄災をさばく

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44.リーウィア、ようやくやらかしていたことを知る

「ノルデンガル王国に対し『国家戦略級魔導師の相互派遣協定』を提案します」


 リーウィアはまず、絶対に譲れない前提条件を述べることから始めた。


「提案の内容をお話しする前に、私の個人騎士サシャについて触れさせていただきます。

 私はサシャの主として彼女を政略に用いることを決して容認いたしません。

 また私と当家は、二人の婚姻を目的にシュミット卿を支援することもいたしません。

 私がいとうことは、私の騎士を政略に巻き込むこと、その一点のみでございます。

 ですから皆様を含めた第三者がシュミット卿に接触すること、支援することを制限するつもりはございません。

 これらの点を前提として以降の話をお聞きください」


 有り体に言えばサシャには絶対に手を出すな、エリアスに手出しする分には好きにしてくれて構わないという話だ。


「此度の一件はノルデンガル王国にとっておおよそ容認できかねることでございましょう」


 リーウィアは具体的な内容の説明に入った。


 国家の顔の一人である小魔導卿が他国人となり国を去る。このことが及ぼす影響は小さなものではない。

 ノルデンガルの国威を下げることになる。

 面子を損なう。自国の英雄に見限られたと他国から見做されかねないからだ。

 そして最も懸念されることはノルデンガル王国の防衛力が低下することにある。


「端的に申し上げると、私が提案する『国家戦略級魔導師の相互派遣協定』は前者二つを容認しても良いと思わせるだけの利益を、後者一つで担保することにあります」


 骨子は三点ある。


 エリアスにノルデンガル王国の国籍を維持したまま、新たにグランフェルト王国の国籍を持ってもらう。

 両国のどちらかで有事が発生した場合、一方の国は国家戦略級魔導師を前提条件なしで相手国に派遣する。

 派遣された魔導師は、有事が発生している当該国の指揮下に入る。


「我がグランフェルト王国はノルデンガル王国に有事が発生した際、エリアス・シュミット卿に加えイェルド・レウリアーダ辺境伯を派遣することを確約いたします」


 イェルドが余裕を持ってエリアスを打倒せしめたことは周知の事実だ。

 即ちノルデンガル王国は小魔導卿を実質的に失う代わりに、有事に際して小魔導卿は元より、その実力を上回る魔導師イェルドを確実に織り込めるようになる。


 こうすれば国威の低下は最小限に収めることができる。

 安全保障の面では今より大きく防衛力を高めることができるだろう。


「残るは面子に傷がつくことだけです。しかしこの点についても政治的装飾を施すことで見せ方を変えることが可能でしょう」


 エリアスとサシャの婚姻が成ったことを利用するのも一つの手だ。

 情緒的な脚本を書いてやればいい。

 たとえばこうだ。


「小魔導卿は特使の任によって赴いたグランフェルトにて運命の人と出会います。けれど彼女には事情があり、どうしても国元を離れることができません。小魔導卿は身を切るような思いで彼女を諦めます。

 彼もまた、どうしても愛する祖国と大恩ある国王陛下を裏切れなかったのです。

 しかしある日、小魔導卿の事情を知ったノルデンガル王が言います。『エリアスの好きに生きよ』と。

 この話を知ったグランフェルト王はその深き慈愛に感じ入り、ノルデンガルに手を差し伸べます。

 こうして両国において『国家戦略級魔導師の相互派遣協定』が結ばれることになった――というような美談にしてしまえば良いのです」


 そうすればノルデンガルも面子を損なうことはない。

 実態などどうでも良い。政治的に見栄えをどう建て付けるかというだけの話でしかないのだから。


「骨子としては以上となります。言うまでもなく、この案を実現化するには細部を詰めねばならないでしょう。また、この提案はシュミット卿とサシャの婚姻が成った場合を前提としていますから、シュミット卿が袖にされたらそれまでです。

 ただ、腹案として持っておくには悪くないと私は考えます。妃殿下も同様の評価をくださいました」


 大臣たちの動きは早かった。

 リーウィアの話が終わるとみると、誰とも言わずに談合を始めた。


「大枠として私は良い方策と考えるが?」

「同意する」

「私もだ。即興と思えぬほど出来が良い」

「私も異論はない。ひとまずの一致がみられたわけだが具体的にどうする」

「派遣を確約するのは良い。むしろそこを維持せねばノルデンガルはなびかないだろう」

「だからといって無条件、無制限というわけにはいかぬ。別途軍規を定める必要がある」

「小魔導卿の待遇面も詰めねばなるまい。我が国でも小魔導卿に号していただくか?」

「それは現行法では無理だ。魔導卿は特例法が定められておる。現行法を改正するか新たに定める必要がある」

「小魔導卿を号さず、グランフェルトで新たに爵位を与えるという手もあるが?」

「それはいかん。ノルデンガルとグランフェルトで差を設けると揉め事の種になりかねん」

「まあ、ノルデンガルとしては『我が国の英雄をグランフェルトは低く扱うのか』と不快に思うやもしれぬな」

「だが仮に小魔導卿に号したところで、どのみち爵位基準を定めねばならぬであろう?」

「そこは伯爵位相当で良いのではないか? 我が国においても魔導卿の号は特別な意味がある」

「確かに同じ魔導卿でも、そこはやはり小だ。あまり高く遇しすぎては国内貴族が騒ぎかねん」

「これを機にレウリアーダ辺境伯も正式に魔導卿に号していただくのはどうだ」

「賛同する。イグサーマクとの戦争における活躍から小魔導卿の打倒と続いておるゆえな」

「この流れに乗じてグランフェルトに次代の魔導卿ありと世に広く喧伝すべきであろう」

「この場で詰めても埒が明かん。外務、軍務、法務でそれぞれ人を出して細部を詰める実務者部会を起こしてはどうか」

「良き考えだ。典礼卿、急ぎ陛下に図りたいのだが」

「無理を言うな。陛下のご予定は向こう三日は詰まっておる」

「それこそ無理を言うな。大使から矢の催促が来ておるのだ。ノルデンガルとの関係がいかに重要か卿も承知しておるだろう?」

「無論だ。だから今日一日くらいは待て。明日までにご内意は伺っておく。王太子殿下にも話を通しておこう」

「ならば良い。軍務卿と法務卿も異存はないか」

「構わぬ。さっそく人員を選別しよう」

「法務も異存はない。部会は外務局に設置するということで良いか?」

「それで構わん。対外交渉を行うのは外務局ゆえな」

「ともあれ外務卿よ、夫人のおかげで手札を持って大使と会えそうではないか」

「うむ、大いに助かった。さすがは魔王殿よ」

「まさに軍務卿の言うところの『基本厄災、まれに天恵』よな」

「いやまて、これは壮大な自作自演と言えるのではないのか?」

「おおっ、典礼卿の言うとおりだ!」

「みずからもたらした厄災をみずから片付ける魔王か!」

「行儀が良いのか悪いのか!」

「だから善良なる魔王なのであろう?」

「然り!」


 大臣四人がまたもや「がはは!」と笑い合った。

 リーウィアはぴくぴくと頬を引きつらせながらアンネリーエに訴えた。


「……もう旦那様に告げ口してもよろしゅうございますか?」

「やめなさい。あなたのことになると冗談が通じない人なのですから」

「納得できませんっ、私はなにも悪いことをしていないのにっ」

「そう怒らずに許してあげなさいな。わたくしも大臣たちに共感できなくもありませんし?」

「もうっ」


 リーウィアはすっかりその気になっているように見える大臣たちに釘を刺しておくことにした。


「重ねて申し上げておきますが、この提案はシュミット卿がサシャを口説き落とせた場合を前提にしたものです。現状で部会まで立ち上げるのは時期尚早ではありませんか?」


 大臣たちが顔を見合わせ、代表して外務卿が口を開いた。


「小魔導卿を手助けする分には夫人は介入せぬのであろう?」

「ええ」

「ならば良いのだ」


 四大臣が揃って小悪党のような悪い顔を浮かせた。

 海千山千の大臣たちだ。リーウィアには想像もつかないなにかを考えているのかもしれない。

 逆に軍務卿がリーウィアに問う。


「我が国からは辺境伯の派遣を確約するとのことだが、現時点で辺境伯本人はこの話を承知しておらぬはずだ。そこは――」

「辺境伯は必ず了承なさいます」


 リーウィアは敢えて軍務卿の言葉を遮って続ける。


「ただ、辺境伯とレウリアーダ家は国王陛下の忠実なる臣ではございますけれど、決して国や政府の走狗ではございません。

 独立した領地貴族家なのです。国務を課すのであれば相応の対価をご用意ください。

 私が願えば辺境伯は確実に了承なさいます。しかし逆に私が納得しない限り、辺境伯は指一本すら動かさぬことを了解いただけますようお願い申し上げます」


 軍務卿はニタニタと笑って深く首肯した。


「承知した。夫人の弁を聞いてこちらは安堵したくらいだ。辺境伯の手綱をよく握ってくれておるようだ」

「夫の益を守るうえでは一歩も引かぬところがテレシア夫人とよく似ておるわ」

「うむ。これぞまさに『グランフェルトの真なる大盾』の再来よな」

「だがテレシア夫人は厄災なんぞただの一度ももたらさなんだぞ?」


 大臣たちがまたもや「然り! がはは!」と豪快に笑った。


「ぐぬぬぬ……」

「諦めなさい。それこそ十九の小娘が口で敵う相手ではありませんよ」


 そう慰めて議論が一段落したと見たアンネリーエは大臣たちに命じた。


「シュミット卿の件については以上となります。法務卿と軍務卿は仕事に戻って構いません。外務卿と典礼卿は残るように」

「御意。外務卿よ、そう渋い顔をするな」

「そうだぞ。小魔導卿の件のように夫人が良き知恵を授けてくれるやもしれぬではないか」


 法務卿と軍務卿が外務卿を雑に慰めて執務室を出ていった。


「さて、リーウィア」

「わかっています。まだまだ問題は残っているのですよね」


 後宮に居た時点で問題が複数かつ、それらが複合することで別の問題も発生していると聞かされている。

 エリアス問題は準備運動のようなものなのだろう。


「個別の問題に取り組む前に、さきに全体像を把握してもらいましょう」


 アンネリーエに目で促された外務卿が説明を始めた。


「あらかじめ言っておくが、我らは夫人に悪意がなかったことは承知している。だが現実問題として、夫人を震源地とした国際問題が同時多発的に発生している。小魔導卿のこともそのうちの一つだ」


 説明にはそう長い時間を要しなかった。

 リーウィアは確認を兼ねて諸問題を整理していく。


「承知しました。問題は大きく分けると四つ。一つ目。他国からの魔種の流出問題」


 これにはエリアスの問題が含まれる。

 移民申請を出しているのはエリアスを含めて合計で二十一名。当初はエリアス込みで十九名だったそうだが、問題発覚時から新たに一名が申請してきており、また再精査した結果一名が増えてこの数になったそうだ。

 政府はこれをリーウィアが披露宴の席で「魔種に広く門戸を開く」と宣言した影響と認識していた。


「二つ目。ラングレン夫妻の養子縁組問題」


 この件は政府とリーウィアとで受け止め方が異なっている。

 とはいえ説明を受けたことで問題意識は共有できた。


 養子縁組をしたこと自体は問題ではない。この時期にラングレン夫妻を対象に縁組を行ったことが問題だった。

 魔種の大量流出が起きたことで、現在グランフェルトは他国から「魔種の取り込みを画策している」と疑われている。

 そんな状況下にあり、レウリアーダは他国の魔種であるリグを養子に迎えたのだ。

 この養子縁組が取り込みの証左であると見做されてしまうことは道理である。

 事実ノルデンガル王国は、エリアスがレウリアーダ邸に居着いていることもあり深い疑念を抱いているのだという。


(くっ、まさかこんな迂回攻撃を受けてしまうなんて……!)


 叱られないようヨランとルーカスという強固な防壁を展開していたというのに、なぜか側面から攻撃を受けてしまい、リーウィアは今偉い人たちに白い目で見られてしまっていた。悲しい。


(でもこうなってはやむ無しよ)


 リーウィアはレウリアーダ家の利益追求者として毅然と主張するまでだ。

 なにせ養子縁組はすでに終わっている。アンネリーエや政府が問題視しようと、今さら縁組を解消する気など毛頭なかった。


「三つ目。アンネリーエ様黒幕説問題」


 リーウィアは披露宴の席で「魔種への門戸を広く開く」という宣言を「アンネリーエ様の助言」だと公言している。

 リーウィアは元よりアンネリーエの懐刀と目されていた。

 そういう下地があったことから、今回の魔種の誘引と取り込みはすべてアンネリーエが画策したものであると、貴族たちのあいだでまことしやかにささやかれているそうだ。

 陰謀論もいいところだが、状況を俯瞰したとき、周囲がそう捉えてしまうことは理解できることだった。


「これが最後となります。四つ目。ディートリヒ問題」


 説明を受け、リーウィアは「やっぱり」なんて思いながら大いに呆れた。

 どうやらディートリヒはイグサーマク王から蟄居謹慎を命じられているなか、実家から金を盗み出し、それを謝罪金と称してリーウィアを訪ねて来たようだ。

 あの自己中心的な気性を思うと驚きはしないが、愚行の極みもいいところだろう。

 グランフェルトとイグサーマクは現在、結婚式における彼の暴挙を巡ってやり合っている最中だ。

 ディートリヒの独断が、両国の交渉に多大な影響を及ぼすことは想像に難くなかった。


「あなたがさきほどのように、残る問題も軽やかに解決してくれることを期待します」

「全力で丸投げしてきますね……」


 リーウィアは結婚式のとき、全力で問題を国に丸投げしたはずなのに、どうしてこうなってしまったのか。

 ままならないものだ。


「それだけあなたの力を信じているということです」

「そうまで期待されては奮起しないわけに参りません。聞くところによると、私はアンネリーエ様の懐刀だそうですから」

「ありますか? 良き解決策が」


 リーウィアは綺麗な微笑をアンネリーエに返した。


「ございますよ。魔種流出事件を除く三つは一両日中に解決可能です」

「なんと!」

「ほうっ!」

「リーウィアっ……! わたくしはあなたを信じていました!」


 驚きを露わにする外務卿と典礼卿。そして王太子妃が歓喜の声を上げた。


「まずはアンネリーエ様が最も関心をお寄せになっているであろう黒幕説問題の解決策から申し上げます」

「ええ、ええっ! わたくしはそれが最も気懸かりなのです! このような汚名を着せられたのはあなたのせいですけどね!」

「アンネリーエ様が黒幕です。これで行きましょう」


 執務室が水を打ったように静まり返った。

 その沈黙を打ち破ったのは、造りの良い扇子を床に叩きつける音だった。


「あなたを信じたわたくしが馬鹿でしたッ!」


 リーウィアはブチギレるアンネリーエを無視して典礼卿に語りかけた。


「典礼卿は王室の家宰にあたる大臣職であると理解しています」

「いかにも」

「即ち典礼卿とは王室の利益追求者に他なりません。その典礼卿閣下にお尋ねします。

 一連の事態について、妃殿下が黒幕などという噂は陰謀論に他なりません。

 しかしながらアンネリーエ様が黒幕であるとしたとき、果たして王室にどのような不利益がございましょうか? 私としては益しかないように思うのですけれど」


 さすがというべきか、典礼卿は頭ごなしにリーウィアの弁を否定したり怒鳴りつけたりせず、顎髭を撫でつけながら黙考を始めた。

 リーウィアはその思考の材料を提供していく。


「さきほど私は極端な結論から入りましたけれど、この献策の核たるところは『畏怖の醸成』にあります」

「畏怖の醸成……」

「詳しくご説明します」


 前提としてリーウィアは噂の火消しを図ることを否定しているわけではない。

 披露宴の席でああしたことを口にしたのは、リーウィアなりのアンネリーエに対する献身であった。

 しかしそれが巡り巡って彼女の不名誉となるなら、リーウィアはどのような汚名を被ろうとも断固として否定して回るつもりだ。 


「けれど仮に私が披露宴での発言を撤回し、私の独断であったと声明を出したところで、果たしてどれだけの人が信じてくださいましょうか」

「ほとんど誰も信じぬであろうな。むしろ夫人が〝言わされている〟と受け取られよう」

「私もそう思います」


 誰も信じないのであれば否定する意味がない。

 では、アンネリーエの謀略であるとささやかれてしまっているこの状況をどう打開するか。


「否定せず、しかし肯定もせず。これが次善であろうと私は考えます」


 噂を独り歩きさせ、それぞれの思うところに委ねてしまう。

 真実は誰もわからない。なぜならアンネリーエとリーウィアは否定も肯定もしないからだ。


「妃殿下は次代の国母に相応しい慈愛のお方です。ですが、大国グランフェルトの国母として慈愛だけを備えていれば良いのでしょうか? 私はそうは思いません」


 民から慕われることだけを求めるなら慈愛だけでも良いだろう。

 だが臣たる多数の貴族をまとめ上げ、従わせ、率いるには優しさだけでは物足りない。

 存在感が必要であると、少なくともリーウィアは考える。

 畏怖とはただ恐れさせるだけでなく、その偉大さに伏し、自然と敬意を覚える情動だ。


「優しき次期国母でありながら、一方で周辺国をも振り回す強かさを併せ持つ。そう思わせてこそ臣下は妃殿下を畏怖し、従おうと思うのではないでしょうか。

 沈黙こそが金なりでございます。黒幕であることを肯定しても否定しても王室と妃殿下に資するものはございません。

 口をつむぐからこそ国内貴族や周辺国は想像を巡らせ、誤解をして、アンネリーエ妃殿下は容易ならざるお方だと考えるのではないでしょうか」


 典礼卿が外務卿に目をやった。

 外務卿は呆れたようにゆるゆると首を振った。


「熟考しての献策ではない。今この場で考え出したものなのだぞ? ましてこの弁舌だ。外交官に欲しいわ」

「左様か」


 続いて典礼卿はアンネリーエを見やった。


「なんです。わたくしは普通に嫌ですよ? この子が勝手に言い出したことなのに、どうしてわたくしが黒幕などと言われねばならないのです」

「道理ですが。事ここに至っては誰も信じませぬ」

「典礼卿……」

「正直なところ私も夫人の弁に唸らされました。私には無かった発想です」

「では……?」

「当面は夫人の言うとおり沈黙して様子を見てはいかがでしょうか」

「どのみち否定したところでもはや噂は消せません。御身は口をつむがれ、対外的に謀略を否定するのは我らだけに留めるのがよろしいかと」


 典礼卿に続いて外務卿までもがリーウィアの献策を採用すべきだと言う。

 アンネリーエはがっくりと肩を落とした。


「それだと、リーウィアがわたくしのところへ遊びに来るたびに『妃殿下がまた懐刀を使ってなにやら企んでおるようだ』と噂されるではないですか……」

「むしろそれが良いのだと夫人は言っておりますな」

「これからもどんどん遊びに来ますね」

「もう嫌だ、この子……」


 リーウィアのやらかしから逃れられない運命にあるアンネリーエだった。

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