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その9 魔女という生き物

「魔法少女ペンギン探偵・・・」

 寮の自室で、ペンギンの着ぐるみの前で座り込み、ミントは何やら考え込んでいた。

 この間、私が余計なことを言ったばっかりに。うん。反省してる。

「犯人は・・・おまえだ・・・?」

 害虫たちに言っても、しょうがないと思うんだけど。

「犯人は・・・ピンク・・・」

 害虫たち操ってるの、君だよね? むしろ、君が犯人なんじゃないの?

 異世界から来た害虫と戦う魔法少女の前に、いきなりペンギンの着ぐるみが現れて、「犯人はお前だ!」とか言われてもなー。意味が分からない。

「うー。やっぱり、悪役になるしかないのか」

 結構、はまってたと思うよ。君の悪役。

 てゆうか。どっちにしろ、魔法少女とペンギン探偵は、切り離したほうがいいと思うな。言い出しておいて、何だけど。

 ・・・・ほんの出来心だったんだよ。


「そう言いえばさ。シュガー・ピンクって、最初の1回しか見てないけど、私の知らない間に何か活動してるの?」

「いや。全然」

 ふと思いついて聞いてみたら、即答された。

「ピンク主役なのに、あれ1回でいいの? 結構、ゆるい活動なんだね」

「別に・・・ピンクは・・・・主役と決まったわけじゃ・・・」

 ふるふると震えながら何か言ってますが、最初からピンクが主役だよね? 君が、勝手に騒いで余計なことしてるだけで。

「まあ、そろそろと思ってはいるんだけど。今、ピンクは魔女の仕事のほう、害虫退治の練習中というか、修業中というか」

「あー・・・」

 確かに、ピンクは、魔法少女としては申し分ないと思うけど(主に見た目的な意味で)、害虫退治は苦手そうだった。最初、逃げてたし。

 しかし、魔女のお仕事はすっかり害虫退治で定着したよね。・・・何のことかわからない人は、とりあえず「その5 ピンク色の嵐」を読んでおけばいいと思う。

「えーと、つまり、一人でも害虫駆除ができるようにとか、そういうこと?」

「うん。そういうこと」

 てゆーかさ。

「そういうのって、先に研修とかを終わらせて、できるようになってから来るもんじゃないの?」

「研修? そんなのないよ。害虫退治が全く出来ない魔女なんて、いないし。ピンクも出来ないわけじゃないんだけど、害虫を目の前にすると、頭が真っ白になるみたいでねー。冷静に対処できないっていうか」

 えーと、それは。

「単に、虫が苦手なんじゃないの?」

「あ。・・・・そういえば、訓練の時も、瘴気を虫に加工してたな。今度、違うの試してみる。いや、加工前のところから、何とかさせてみる」

 黒い害虫の正体は、本来は瘴気とかいう、人体に害を及ぼす黒いもやもやらしいんだけど、魔法少女活動の演出として、ミントが虫の形に加工してたんだよね。この間は、黒い犬? にもなってたし。

「後はなー。魔法少女としての見栄えを優先するあまり、周囲の被害を気にしなすぎるというか。訓練の時、翠も一緒に来てくれないかなー。翠の言うことは聞くみたいだし、容赦なくしかりつけて欲しい」

 君の魔法少女活動に、翠を巻き込まないでもらおうか。

 まあ、どうせ、断られるだろうけど。

 ピンクはこの間のランチの後、すっかり翠になついてしまい、よく一緒に行動している。翠もなんだかんだ言いながら、面倒を見ているみたい。

「そういえば、前に、翠には魔女の素質があるって言ってたよね? あれって、どういうこと? 魔女の素質って、何なの?」

「ん? んー。日本人にも分かるように言うと、霊感が強い・・・とか、そんな感じ? たぶん、翠には他のみんなには視えていないものが視えてると思う」

 まだ、ミントが来たばかりのころは、魔女であるミントに何か感じたのか、ずいぶん私のことを心配してくれたっけ。

 そっか。そうなんだ。ミントが来なかったら、きっと、ずっと、気が付かないままだったかもしれないな。今度、何か、力になれることがないか聞いてみよう。

「まあ、でも。翠は魔女になったりはしないと思うから、大丈夫。翠には、のりこがいるしね。大事なものがある子は、魔女にはならない」

 ん? 今、何か、大事なこと言った?

 それって、どういうこと?

 魔女って、「なる」ものなの?

 生まれつき魔女なわけじゃないの?

「えっと。今更なんだけど。聞いていいのかどうかも、分からないんだけど。魔女って、何? どういう生き物なの?」

 たまたま、魔女であるミントとかかわりを持った・・・くらいの感覚でいたので、「魔女」という生き物について、あまり深く追及はしてこなかった。特に、悪さをするわけではないみたいだし。そういう生き物も存在するんだな、程度だった。

「え? ま、魔女の定義? え、えーと、えーと。今まで、そんなこと聞かれたことなかったからなー。なんとなく、感覚で理解してたし。えーとね・・・」

 結構、真面目に聞いたんだけど、当のミントは授業中に想定外の質問をされて困ったな程度のノリだった。

「大事なポイントはー、霊感的な不思議な力を持ってることと、運がいいこと、それから、一人遊びが得意だってこと、かな。魔女の国は、異次元空間にあるんだけど、異次元空間に迷い込んで、運よく魔女の国にたどり着いて、そこに住み着いたものが魔女・・・・って、私は理解している」

 ・・・・・・・・んん?

 意味が分からないんだけど?

 とりあえず、「私」には理解できていないことは、伝わったらしい。

「えーと。そうだな。じゃあ、私が魔女になった時の話をしてあげよう」

 そして。ミントの、ちょっと長くて、微妙な話が始まった。



 私が魔女になったのは、13歳くらいの時かなー。こっちの時間では、結構昔のことで、まだ、電気とかない時代だったんだよねー。

小さい頃から他の人には視えないものが視えてて、その日は確か、蛍光ピンクに光ってる変わった蝶々を見つけて、ふらふらと後をついて行ったんだよね。それで、気が付いたら知らないところにいたんだよ。なんかねー、ふかふかした床のある、宇宙空間みたいな所だった。まあ、ようするに、異次元ていうか、異空間に迷い込んだだけなんだけどね。害虫・・・じゃなくて、瘴気とかも現れたけど、なんとなくどうすればいいのかは分かって、やっつけながらあちこち探索してたら、扉を見つけて。開けたらそこが魔女の国だったんだよ。えっとね、森と小川と泉と広場があって、あちこちに思い思いの家が建ってた。そこで、ずっと前に行方不明になってた姉さんに会った。血筋なのかなー。姉さんもここに迷い込んで魔女になったんだって。

 こういうのって、日本の有名な言葉で、神棚って言うんだっけ? え? 神隠し?

 まあ、ともかく。霊感? の強い子は、異次元に迷い込みやすい、らしい。それで、瘴気を何とかできるだけの力を持ってて、運よく魔女の国にたどり着けたものが、魔女となる。私的には、そのまま魔女の国に住み着いちゃった人が魔女・・・って思ってる。

 私が今ここでこうしてるみたいに、元の世界に戻ることもできたけど、異次元は時間の進み方が違うらしくてねー。姉さんと一緒に、一度様子を見に行ってみたんだけど、両親はもう死んでて、妹もおばあちゃんになってた。それで、孫とかいた。

 ここにはもう、私の居場所はないなって、分かったから、魔女の国に住むことにしたんだよ。



「そして、まあ、現在に至ると・・・」

 軽く締めくくったけど、そんなに軽い話じゃないよね? ね?

 ミントにとっては、もう、過去のことだから、なのか。それとも、つまり、魔女として生きていくには、これくらいの感性じゃないと駄目ってことなのかな。

『居場所がない』とか、何でもない事のように、さらっと言えるのって。

 無理して、何でもない事のように言ってる、って感じじゃなかった。

 どこまで、踏み込んでいいのかわからなかったので、とりあえず、割とどうでもいいことを聞いてみる。

「一人遊びが得意っていうのは?」

「あー。魔女って、みんな割と個人主義というか、他人に関心がないというか。群れて何かをするってことが、基本的にはないんだよね。あそこにいると、年もとらないっていうか、体も成長しないし。永遠みたいな時間を、一人でいても平気というか、一人で何かしてるほうが好きとかじゃないと、心が壊れちゃうんだよね。私は、一人で遊んでたらいつの間にか時間が経ってるタイプだから、全然平気なんだけど。まあ、さすがにずっとそれが続くと飽きてくるから、たまに魔女の仕事でこっちの世界に来るのは、いい刺激になるっていうか、うん、嫌いじゃないかな」

 また、さらっと言ってるし。

「翠は・・・・」

 翠は、本当に魔女になったりしないのかって、言い切る前に、答えが返ってきた。

「翠は、怪しい異次元の裂け目に、ほいほい入り込んだりしないと思うよ。それに、自分の世界とちゃんと繋がっている子は、呼び寄せられたりもしないしね。のりこがいれば、翠は魔女になったりしないと思うよ。家族とも、仲がいいみたいだし」

「う、うん。そっか・・・」

 ほっとしつつも、魔女であるミントの前で、あんまりあからさまなのもどうかと思い、言葉を濁す。まあ、ミントは魔女であることを楽しんでいる風ではあるし、そんなに気にしなくてもいいのかもしれないけれど。

「ま、素質さえあれば、魔女も悪くないよ? 私は、最近はペンギンの写真集を見てたら、いつの間にか時間が経ってた感じかなー。後は、ずっと新しい魔法の研究とか、実験とかしてる人が多いかな。それと、魔法少女アニメにはまって、鑑賞するだけじゃなく自作までしちゃう人とかねー」

 そういう言い方をされると、ただのオタクの集まりのような気もしてきたな。


「ミントは、いつまで、ここにいるの?」

 いつか、ミントはここからいなくなる。そして、たぶん、その後は、二度と会えないんだろう。その時は、もしかしたら、記憶を消されちゃったりするんだろうか? よくある展開みたいに。

 ちょっと、寂しいな。そう思う自分がいる。

「そうだなー。魔法少女活動の打ち切りを言い渡されるまでは、確実にここにいるけど。いつまでだろう。そろそろ、また、次の活動をしないとな。・・・・でも、そっか。そうなったら、のりことはお別れか・・・」

 うん。

 ミントでも、少しは寂しいって、思ってくれてるんだろうか。

「のりこ! 国の役人になる気はない!?」

 ちょっと、感傷的になっていたら、がしっと両肩をつかまれた。

 はい? 国の役人?

「そう! 国の役人! 魔法少女・・・じゃない、魔女活動を支援してくれる部署があるんだよ。政府容認の元に活動してるって言ったでしょ。のりこがそこの職員になれば、また会える。事情を知ってる人がいると、こっちもありがたいし。可能な限り、裏から手を回すし! あ、これ、いい考えかも。もっと、よく調べとくから、考えといて!」

 興奮して、一方的にまくしたてるミント。

 そういえば、政府容認って言ってたっけ。転入に関する事務手続きとか、そういう仕事をしてるんだろうか? それくらいしか、思いつかない・・・。

 でも。国家公務員かー。そもそも、試験に受かるかどうかという問題はあるが、まあ、悪くはないかなー?

「か、考えとく」

「やったー!そうなったら、のりこがいる間は、私が日本担当の魔女になるよ。まあ、のりこが年をとっても、私はこの姿のままだけど。大した問題じゃないよね?」

「やっぱり、断る」

 ぐらぐら揺れていた気持ちが、急速に冷めた。

「えー、なんでー!?」

 両手で掴んだ肩を激しく揺さぶってくるミントを振り払いながら、ちょっとだけ笑ってしまった。

 嬉しくて。

 見た目的年齢差の話はともかくとして。

 また、私と会いたいって、思ってくれてるってことが、純粋に嬉しい。

 国家公務員か。

 ちょっと、頑張ってみようかな?



 でも、結局。魔女については、分かったような、分からないような。

 まあ、いいか。魔女の国に住んでいる、不思議な力が使える人たちってことで。

 間違っては、いないはず。

 たぶん。


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