第1話 サンクチュアリ
「いいかーここテストに出るからなー。」
いつもと変わらない教室、授業、ウザい先生、退屈な時間が今日も過ぎて行く。
「じゃあ佐河、この問題を解いてみろ。」
いつもの様に先生は適当に生徒を指名し問題を解かせようとする。しかし、指名された佐河という生徒はずっと下を向いたまま顔を上げようとしない。
「おい佐河!!!」
先生が大きな声をあげて怒鳴った。その生徒は驚く様子もなくゆっくりと顔を上げた。
「後で職員室に来なさい…。」
先生はそう言うと、授業に戻った。おいまたかよ、とクラスの生徒達がざわついていた。どうやら初めてでは無いようだ。職員室への呼び出しをくらったにも関わらず、佐河は再び顔を下に向け、まともに授業を受ける事は無かった。
授業が終わり放課後になると、佐河は再び先生に声をかけられ、職員室に呼び出された。
「佐河 遙真、お前何回言ったら分かるんだ?いくら成績が良いからって必ず大学に受かる訳じゃ無いんだぞ!授業態度も先生はちゃんと見てるからな!」
担任から長い説教を受けている生徒は、この高校のトップにいる生徒らしく、まさに頭脳明晰、容姿端麗、艶のある黒髪をもつ完璧人間だった。
「はい、すんません。」
俯いたまま、先生に謝っている。
「お前はウチの顔なんだから頼むぞ!!」
「はい。」
長い説教も終わり、遙真は昇降口に向かう。
「今日も退屈な1日だったなぁ。」
と一言呟き、靴を履き替えて外に出た。今まで気が付かなかったが、外では大雨が降っていた。やばっ傘持ってきてないよ…、遙真は結局走って帰る事になった。鞄を傘替りに、遙真は雨で見えずらい景色の中を全力で走った。暫くすると、遙真は立ち止まった。息が苦しい。疲れて大きく呼吸をしていると、不意に背後から何者かにハンカチか何かで口元を塞がれた。
「んっ!!!」
遙真は慌てて相手の手を解こうとする。しかしその手はものすごい力が込められており、全くびくともしない。
(やばいやられる!!!)
と心の中で思った瞬間、体から力が抜けていくのが分かった。意識が朦朧とし、ついに地面に音をたてて崩れた。
気が付くと、遙真はベッドに横になっていた。
「は…?なんだここ?どこだ?」
そこは殺風景な白い壁の部屋だった。あるのはベッドと洗面所とトイレだけ。まるで牢獄の中にいるようだった。服は学ランから白くて薄い布の服になっていた。遙真はベッドから降りて出口の方へ向かう。出口だと思われる扉の前に立ち、右手をドアノブにかける。回すと扉は簡単に開き、目の前には絨毯が敷かれた廊下が横にのびていた。どうやら閉じ込める気は元々無いようだった。遙真は何も分からないまま、勘で左へ進んだ。進むうちに、この建物の構造が大体理解できた。どうやら、自分が出てきた部屋と同じ作りの部屋がいくつか続いているようだった。しかし、暫く行くと、行き止まりに当たった。反対側へ行こうと振り返ると、そこには1人の女が立っていた。
「人間という生き物は、迷った時に左を選ぶ癖があるそうですよ。」
女が微笑みながら口を開く。
「ようこそ、私達の聖域<サンクチュアリ>へ。」




