第2話 少女
遙真は、女に案内されながら建物の中を歩いていた。目の前を歩いているのは、女と言うよりは少女と言った方が正しい。後ろ姿だけだが、140cm程の身長で、体格を見れば小学生くらいだと一目で分かる。腰の辺りまで伸ばした銀色のサラサラした髪と黒のワンピースのせいか分からないが、不思議な雰囲気を纏っている。もしかしたら自分よりも歳上なのではないかと遙真が疑ってしまったほどだ。
「あのーここって何なんですか?いきなり拉致られたんですけど。あれもあんたの仕業なんですか?」
少女はこちらを向かずに歩きながら答えた。
「あの様なご無礼、どうかお許しください。なにせ時間がかかると面倒な事になりますので。あの方法が一番合理的だとこちらで判断しました。」
「どうですかね~…もっと他に方法があったと思いますけど…、まぁいいや。そろそろ話してくれます?俺をこんな所に連れてきた理由。」
「もう少しお待ち下さい。その事は[皆]の前でお話し致します。」
そこまで言い終えた時、二人の目の前にいつの間にか大きな両開きの扉が立っていた。少女がその扉に両手を当てて押し開ける。ギィィと鈍い音を立ててその扉は開いた。その先は広間の様な造りになっていた。その光景を見て、遙真は気付いた。
「…教会か?」
壁は灰色の石がレンガの様に組み合わされていて、床には赤い絨毯が敷かれている。遙真達から見て右側に、外へ出る為の扉らしきものがあり、左側には、赤や青、黄色、緑など色鮮やかなステンドガラスを敷き詰めた縦に大きな窓と、その上に被さる様に大きな木製の白い十字架が掛けられていた。広間には横に長い木製の椅子が、出入口から道をあける様に左右5脚ずつ、合計10脚ほど置いてあった。そして、その椅子にパラパラと散らばって何人かが座っていた。皆遙真と同じ格好をしている。
「皆さん、お待たせ致しました。」
そう言って少女は遙真から離れ、大きな十字架が掛けられた壁の前に立った。改めて少女の顔をみたが、やはりどこか大人びている。緊張する様子も全く見せず、落ち着いた眼をしていた。遙真は目の前にあった椅子に座り様子をうかがう。
「あなた方が今一番知りたい事は、なぜ自分達が集められたか、という事だと思います。恐らく皆さんは全員初対面でしょう。年齢もバラバラです。」
淡々と話が進んでいく。
「もしかしたら中にはもう既に、なぜ集められたか分かっている人がいるかも知れません。」
漫画みてー、と遙真は一人で呟く。だが、次の言葉で、今は冗談を言っている場合ではないという事を全員が思い知った。
「ここに集められたのは、国が決定した<超危険人物>達です。」
「…………………………………………………は?」
広間にどよめきが走る。
「あなた方には特別な<力>があります。私はその力を貸して欲しい、という理由であなた方を招集しました。」
「その<力>とはどんなものなんだ?」
一人のガタイの良い男が少女に問いかけた。
「そうですね…。百聞は一見に如かず、と言う事で見てもらった方が早いでしょう。」
そう言うと、少女は衝撃の言葉を放つ。
「誰でも良いので、私を殺して下さい。」
いやいやいやいやいやいやいや!何を言ってんだあの子!




