白鷺梨花とバイト先
「ここでよかった?」
「はい。ここで大丈夫です」
ホテルを後にした龍太はルナに車(真っ赤なフェラーリ)で大学付近まで送ってもらった。
「ルナさん。何から何まで本当にありがとうございます」
「いいのよ。気にしないで」
「ルナさんはこれから仕事ですか?」
「そうね。これでも社長だからね。仕事よ。今日から出張で一週間は県外にいるわ」
「え、そうなんですか? てことは、一週間はルナさんに会えないんですね」
「あら、もしかして、寂しいの?」
「そりゃあ、寂しいに決まってますよ」
「私も寂しいけど、出張の予定は変えられないからね」
「頑張ってください」
「ありがと。私が出張から帰ってきたら、またたくさんエッチしましょ♡」
「はい」
「龍太は大学終わったらバイトなんだっけ?」
「ですね。今日はバイトの日なので」
「そっか。バイトなんてしなくても私が養ってあげるわよ?」
「それは心が揺れる提案ですね」
あのホテルのオーナーのルナだったら、龍太一人養うくらい余裕だろう。
もしも【幸福システム】がなかったら、龍太は二つ返事でルナの提案を受け入れていたはずだ。
でも【幸福システム】のおかげで、今の龍太は実質お金無限だ。
クエストをクリアすれば報酬としてお金が手に入るのだから。
だから、本当は今すぐにでもバイトを辞めてもよかった。
だけど、龍太はバイトを辞めるつもりがなかった。
なぜなら、龍太のバイト先にルナクラスの美女がいるからだ。
「まぁ、いつでも言って。龍太が一文無しになったとしても、龍太のこと養ってあげるから」
「ありがとうございます。その時はお世話になります。じゃあ、俺はそろそろ行きますね。遅刻しそうなので」
「行ってらっしゃい」
ルナは龍太にキスをした。
「またね」
「はい。また」
龍太が車から降りると、ルナは車を発進させた。
ルナの車が見えなくなるのを確認してから、龍太は講義を受けるために講義室に向かった。
☆☆☆
龍太の次のターゲットは三人いた。
一人目は大学のマドンナと呼ばれている鷹瀬冴華。
二人目は湊斗のバイト先の店長をしている白鷺梨花。
三人目は同じく湊斗のバイト先でアルバイトをしている鶴岡香澄。
冴華の好感度を少しでも上げたいと思って、講義の間に冴華のことを探してみたけど、一度も出会うことができなかった。
一度も出会うことができないまま今日の講義が全部終わってしまったので、ターゲットを冴華から梨花に変更することにした龍太はバイト先に向かっていた。
龍太のバイト先は『Cafe Lumiere』という駅前にあるカフェだった。
「お疲れ様です~」
「龍太君。お疲れ様」
裏口から店内に入ると梨花が事務所でパソコンとにらめっこをしていた。
【美女と遭遇しました】
龍太の予想通り、梨花に会うとシステムが反応した。
梨花のプロフィールが龍太の目の前に現れた。
名前:白鷺梨花
年齢:35歳
身長:162㎝
顔面偏差値:97
スタイル偏差値:95
経験人数:3人
好感度:40%
好感度が0%だったルナや冴華の時と違って、梨花の好感度が最初から40%もあることに龍太は驚いた。
(マジか・・・・・・こういうこともあるんだな)
梨花と二人(冴華とルナ)で違う点があるとすれば、それはシステムが現れてから出会ったかどうかだろう。
冴華とルナはシステムが現れた後に出会い、梨花はシステムが現れる前から出会っていた。
そのことから、どうやら好感度はこれまでに積み上げてきた関係性はそのまま引き継れるということが分かった。
すでに梨花の好感度が40%を超えているのは龍太にとって嬉しい誤算だった。
「今日はどんな感じですか?」
「まぁ、ぼちぼちって感じかな」
「了解です。じゃあ、着替えてきますね」
「うん。今日も頼りにしてるわね」
「はい。頑張ります」
龍太は更衣室に着替えに向かった。
更衣室に向かっている途中でクエストが発生した。
【クエスト発生】
今日中に白鷺梨花を飲みに誘え
【クリア報酬】
50万円 白鷺梨花の好感度+5%
【失敗時】
白鷺梨花の好感度-5%
「梨花さんのことを飲みに誘え、か」
飲みに誘うこと自体は簡単だろうが、梨花が一緒に飲みに行ってくれると思わなかった。
これまで、バイト仲間の香澄が梨花のことを飲みに誘っている場面に出くわしていたが、梨花が飲みに行くことは一度もなかったはずだ。
「まぁ、クエストは飲みに誘えだから、梨花さんが行かなくても誘った時点でクリアになるだろ」
そう思いながら龍太は更衣室の扉を開けた。
「えっ!?」
「えっ・・・・・・」
更衣室の扉を開けると香澄が着替えをしている途中だった。
目が合った龍太と香澄は時が止まったかのように固まった。
香澄は制服を着ようとしているところだったみたいで、下着姿(清楚系の真っ白なブラジャー)だった。
【美女と遭遇しました】
固まっていた龍太の目の前に香澄のプロフィールが現れた。
名前:鶴岡香澄
年齢:27歳
身長:158㎝
顔面偏差値:96
スタイル偏差値:94
経験人数:10
好感度:50%
(えっ、好感度50%・・・・・・)
香澄の好感度が梨花よりも高いことに龍太は驚きを隠せなかった。
「ちょっと~いつまで見てるつもりなの~?」
「す、すみません」
「まぁ、別にいいけど」
少し恥ずかしそうに笑った香澄は何事もなかったかのようにお店の制服を着た。
「ごめんね〜。鍵を閉め忘れてたみたい」
本来なら、女性が着替えている時は更衣室の鍵を閉めるのが決まりだった。
鍵が空いていたので、てっきり誰もいないと思って更衣室の中に入ってしまったから、龍太は意表を突かれてしまった。
「き、気をつけてくださいよ。ビックリしたじゃないですか」
「龍太も今日はこの時間からバイトだったんだね」
「ですね。俺は外にいるので着替え終わったら出てきてください」
「別に一緒に着替えてもいいよ?」
香澄はニヤッと笑って龍太を揶揄うような口調で言った。
「いや、それはさすがに・・・・・・」
昨日までの龍太なら、間髪入れずに断っていただろう。
けど、相手の好感度が分かるようになり、ルナとの一件で自分に自信を持つことができるようになった龍太は強気な行動をするのも悪くないかと思った。
「じゃあ、一緒に着替えてもいいですか?」
「えっ、本気?」
「ダメですか? 鶴岡先輩が一緒に着替えてもいいって言ったんじゃないですか」
「言ったけど・・・・・・まさか、乗ってくるとは思わないじゃん」
龍太はでしょうね、と思った。
香澄の好感度が50%でなければ、こんな大胆な行動はしないだろうけど、好感度が50%もあるのだから多少強引な行動をしても、おそらく香澄は許してくれるだろうと思った。
実際、香澄は驚いてはいるものの嫌そうな感じではなかった。
「なんか龍太変わったね。もしかして、何かあった? 服装もいつもよりオシャレだし、なんだか余裕を感じる」
勘が良い香澄は龍太の変化に気がついたみたいだった。
「さぁ、どうでしょうね?」
「絶対何かあったでしょ」
「秘密です」
システムのことを言えるわけがないし、ルナとのことも今は言わない方がいいだろうと思った龍太は笑ってはぐらかした。
「え〜、教えてくれてもいいじゃん〜」
「教えませんよ。てか、そんなことより、早く着替えて行かないと梨花さんに怒られますよ」
「気になって仕事に手がつかないって!」
「まぁ、いろいろと吹っ切れたんだって思ってください」
「何それ〜」
「いろいろあったんですよ。それ以上は言えないです」
龍太はルナからもらったオシャレな服とズボンを脱いで制服に着替えてエプロンをつけた。
「ほら、鶴岡先輩も早く着替えてください。先に行ってますね」
香澄が着替えるのを待つことなく龍太は先に更衣室を出てホールに向かった。
☆☆☆




