『視る』魔法
突然、スローモーションになった視界。
相談したところで信じるだろうか。
しかし、その疑問はすぐ吹き飛んだ。
ここには魔法が存在するみたいだからな。
「ガトリング銃を持った奴を相手にした時、一瞬だけスローモーションになったんだ」
夜桜は目を輝かせた。
「それって魔法ってこと?よかったわね、珍しい」
珍しい…のか?
アリスが簡単に言っていたから、てっきりみんな使えると思っていたが。
やはりアリスはお姫様。
そんな人、珍しくても何人も見てきたのかもしれない。
「魔法って珍しいんだ」
少し呟く様に言うと夜桜が目を見開いた。
「知らないの!?初等学校からやり直せばいいんじゃない?」
「いや、それが俺異世界から転生してきて…」
信じるかな?
アリスは何処か抜けていたから信じたが。
「転生って赤ちゃんからじゃないの?」
た、確かに!
いや、現に俺がこうして転生している。
「そうらしい。この世界の事、詳しく教えてくれ」
夜桜は溜息をついて、呆れながら俺をみた。
「本とかで調べたりしなかった訳?まあ、教えてあげてもいいけど」
俺は礼を言う。
ここじゃなんだから、と夜桜は歩き出した。
仕方無く、俺は着いて行く。
夜桜は綺麗なマンションらしき建物の一室に俺を案内した。
そこでソファーに座って話を聞く。
ちなみにとてもいい香りのお茶が出された。
「魔法を使えるのは、多く見積もって千人に1人。それが私達なのよ」
いやいや、ちょっと待て!
「お前も魔法、使えるのか?」
ええ、と夜桜は何でもなさそうに答える。
「魔法には属性があるの。大きく分けて五つ」
俺は適当に相槌を打つ。
ゲームの中みたいで、実感が湧かないから。
「火属性、水属性、風属性、土属性、そして特殊属性ね」
アリスは俺を特殊属性だって言ってたっけ。
「魔法適性値が高ければ高いほど魔法は強力なの」
魔法適性値?なんだそれ。
「何?魔法適性値も知らないの?」
図星。
「ほんっとに馬鹿ね!その魔法が自分に合っている度合い?みたいな…」
自分もよく知らねーんじゃねぇか。
「まあ、そんな感じよ!」
そんな感じで締めくくられた。
夜桜は咳払いをして続ける。
「まあ、ユキの場合は要するに『視る』魔法ってとこかしら。うまく使えるようになれば、何でも視えるよーになるでしょ」
うっわ、適当ー。
こいつ、最後面倒になっただろ。
「お前の魔法は?」
「敵じゃないなら教える」
「敵だったら最初戦ったときに殺してる」
「それもそうね」
お前、敵だと思ってた奴に魔法のこと教えてたのか?
手の内を明かすってのは、不安になるものだけど。
「私の魔法は飛翔斬撃。特殊属性よ」
随分と限られた魔法だな、とぼやく。
「ユキのは特別だと思って。視る魔法使いに会ったことないの」
じゃあ、最初の戦いのときは本気じゃなかったのか。
「なあ、今夜泊めてくんね?宿無くてさ」
頷いた夜桜の表情は、何処か嬉しそうでもあった。
久々にフカフカのベッドで寝た日の朝。
俺は武器の確認をしてからリビングに行った。
テーブルには食事が並べられていて、書き置きがあった。
『よければ食べて。
今日も宿が無いんなら、ここにきてもいいわ。
昼頃、帰る。
夜桜』
それは有難い。
ここでは暫く滞在する予定だったし。
お腹が空いていたので食事に手をつける。
とても美味しかった。
『夕方、また戻ってくるので是非泊めてくれ。あと、一週間位。
嫌なら別にいいぞ、追い出して。
PS.朝飯、美味かった。また作ってくれ。
有希』
さて、街をぶらつくとしよう。
殺しの仕事、探さなくては。




