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人見知り勇者さんは、今日もどこかでぼっち飯。  作者: 天野 肇
13食目 豊作祭り、怒涛のチェリーパイ大食い大会。

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1

 焼きたてのチェリーパイが、視界を埋めるかのごとくうず高く積まれている。


 表面のパイ生地は格子状に編まれ、こんがりときつね色。


 隙間から溢れるほどたっぷり使用されたジャム状のチェリーは黒みを帯びた深紅色で、村の特産“ダークジュエル”の名を冠するに相応しく艶《あで》やかに輝いている。


 食欲を誘う、溶かしバターと甘酸っぱい香り。


 これはまさしく、静かな席で一人きり、爽やかな秋の風を感じながら、紅茶片手に心ゆくまで味わうべき珠玉《しゅぎょく》の一品、


 のはずだった――。


「さあさあ今年もやって参りました! ハーヴェル村の豊作祭り名物! チェリィーパイッッッ大食い大会だぁああああああああああああああああ――ッ!!」


 司会者の絶叫と同時に、広場に無数の歓声が沸き起こる。


 長テーブルのこちら側には、俺を含めた四人の選手。


 向かって左には、優勝候補らしい腕組みした屈強な大男。


 右隣には笑みを絶やさず手を振るふくよかなおばちゃん。


 そしてその隣では、派手な衣装の男――自称王都の大食いプリンスが胸を張ってギャラリーにアピールしている。


「ハーッハッハァ! 今回の祭りのナンバーワンは大食いプリンスこと、この私が頂くぞ!」



 なにこれ帰りたい。


 やる気に満ちた横顔を並べる面々の中、俺だけが背を丸め、極度の緊張で小刻みに震えている。


 広場の中央。

 衆目に晒され。

 逃げ場なし。


 胃がいたい――‼︎


「おーい! 端っこの兄ちゃーーーん! あんたに賭けてんだ! 頑張れーーーーーー!」


 無理です。無理無理無理無理無理無理。

 賭けないで。

 見せ物にしないで頼むから。


 前方から向けられる視線の数々に、強制デバフ『人見知り』が発動。

 メンタルをゴリゴリ削られていく感覚。

 緊張が高まりすぎて、胃液が競り上がりそうだ……。


 

 ていうかほんとに、なにこの悪夢。


 これなんていう地獄。


 一体全体、なにが、どうして、


 


 こうなった――‼︎

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