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人見知り勇者さんは、今日もどこかでぼっち飯。  作者: 天野 肇
12食目 再会の港町、シーサーペントの蒲焼き丼。

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3


 腕を伸ばして割って入ると、当然のように二人の視線が俺へ向いた。


「えっ」

「な、なんだい。あんたは……」


 緊張で声が裏返りそうになるのを堪え、なんとか平然を装う。


「いや、その外套が1万モートは、さすがにぼったくりが過ぎるんじゃないかと思いまして」

「ハア? ぼったくり?」


「“魔避けの外套”に使うレッドドラゴンの血は、加工すれば人間にはほとんど匂わなくなる。少なくとも、こんな獣臭さは残りませんよ」


 赤茶けた色むら。薄っぺらな生地。こんなものを野営で羽織れば、魔物を遠ざけるどころか、下手をすれば逆に刺激する。


「こんな危ない粗悪品を平気で売ろうなんて、商人のすることじゃありませんよ」


 男の目つきが予想通りに鋭くなる。


「し、失礼なお客様だ! これは正真正銘の――」

「では、商会ギルドの腕章を見せてもらえますか」

「……へ?」

「正式な物なら、偽装防止の刻印が入っているはずですよね」

「チッ……手練れの冒険者かよ……」


 小さな悪態。うん、もうちょい攻めとくか。


「見せられないなら、商会ギルドの人を呼びましょうか。登録があるか、その場で確認できますし」

「……っ」


 行き交う人々の視線が集まり、男の額に汗が滲む。

「買う気もねえくせに、面倒なことばっか言いやがって!」


 男は外套をひったくるように回収すると、慌てて店を畳み、そのまま路地へ逃げていった。


 ……っ。

 ……ぶっはあああああああ――!


 久々にハキハキ喋りまくって、気力がばっこり持っていかれた。

 やっぱり慣れないことするもんじゃない……。

 くたびれながら青年を見ると、しばらく呆然としていた彼も、ようやく我に返った。


「っ……騙したな! おい、この詐欺師――!」


 もう追いつける距離じゃない。

 数瞬して、青年は気まずそうにこちらを振り返った。


「あー……その、助かりました! 危うく報酬金、全部溶かすところでした」

「いや……。市場には偽の腕章で粗悪品を売る商人もいるから。目利きに自信がつくまでは、腕章を見せてもらった方がいいよ」


 それじゃ。

 さっさと立ち去ろうとしたところで、青年が身を乗り出してフードの奥を覗き込んできた。

 ぎくり。


「その声、その外套……やっぱり! 兄さん、前に酒場で会った人じゃんか!」


 わ……わあぁあ、バレちゃった……。


「ア、……エト、ソウダッタ……カナ」


 輝く視線が眩しくて、思わず目を逸らす。


「そっか。やけに貫禄あると思ったら、あんたベテランだったんだな。昨日、結構デカい海魔の討伐に成功してさ。ちょっと浮かれてたんだ」


「格好悪いとこ見せちまった」と笑う彼に、俺は首を横に振る。


「俺も駆け出しの頃は、何度もガラクタ掴まされたから」


 ……まあ、そのせいで悪徳商人の見抜き方には妙に自信があるんだけど。

 そう苦笑すると、青年も笑った。


「そうだ! 良かったらなにかお礼させてくれよ!」

「え……いや、別にいいよ」

「そう言わずに! 俺の気が収まらねえから!」


 青年が荷袋をごそごそと漁り出す。

 いや、本当にいいんだけどな……。

 こういう時、なんて返せばいいんだ。

 ……あ。


「お礼って言うなら……じゃ、じゃあさ――」


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