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上空から見下ろす海が、ゆっくりと揺れながら黄昏の色を混じらせていく。
最東端に浮かぶ龍域の島――龍神族の里を発ち、師匠から借りた飛竜の背に跨ること半日。
ようやく本土の影が見えた時には、なんだか随分と懐かしい気がして、手綱を握る手にいっそう力が入った。
海風に吹かれながら、眼下の港町へ視線を落とす。
東岸港町セレニテ――。
交易や漁業が盛んな、そこそこ大きな町だ。
俺の指示を聞いた飛竜がゆっくりと降下し、町外れの海岸に着陸する。
地面に足がついた瞬間、ぐらりとよろける。
「ぅお……っと」
長時間、硬い飛竜の背に座りっぱなしだったのもあるが、ここ数日の過酷な鍛錬で脚も腰も完全に死んでいた。
というか……、ほんと、よく生きて戻れたな俺。
長命かつ戦闘力の高い龍神族と人間との尺度のズレか、はたまたあの人だけが規格外なのか――とにかく師匠の場合、手合わせとなると弟子をどこまで壊さず扱けるかの超ギリギリを攻めてくる。
下手すれば次の瞬間には、物言わぬ屍になっていた場面は数知れず。
最後の最後に「この技を見て立っていられた者はおらんぞ――!」などと笑いながら最終奥義をぶっ放された時には、再び大陸の土を踏めるのか本気で覚悟した。
師匠はやばい。
飛竜の背に手をつきながら、俺は遅れてきた恐怖にそっと身震いした。
白銀の翼を畳んだ飛竜が喉を鳴らしながらこちらを見下ろす。
「ああ……大丈夫。そんなことより、送ってくれてありがとう」
鼻先に手を伸ばすと、飛竜は大きな頭を軽く寄せて、くるる、と甘えた声をあげる。
「師匠によろしくな」
返事をするように鼻を鳴らした飛竜は、翼を広げ、風を巻き上げながら飛び上がると、あっという間に夕焼けの空へ、雲の彼方へと消えていった。
……さて……。どうするか。
仲間の待つ中央大陸の王都までは、ここからさらに陸路を行かなくちゃならない。
一刻も早く戻りたいが……、行きに使用した転移魔石はすでに魔力切れで青色吐息だ。
この時間じゃもう王都方面へ向かう馬車は出ないだろうし、回復役もいない今、無理に夜道を進むのは軽率が過ぎる。今日中の出立は現実的ではない。
宿を取り明日の早朝発つのが賢明か……。
「戦士、みんな、もう少し待っててくれよな」
修行の疲労も溜まっている、軽食を買って宿で食べるか、適当な店で食事を済ませて、さっさと今日を終わらせてしまおう。
俺は荷袋を背負い直し、市場へと足を向けた。




