↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人見知り勇者さんは、今日もどこかでぼっち飯。  作者: 天野 肇
11食目 冥峰の主と、極上ジビエハンバーグ。【前編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/46

1

 

 視界を塗り潰すような土砂降りの雨。


 破壊され、地に転がされた大盾。


 泥と、流れていく血が混ざり合い、足元を赤黒く濁らせていく。



「ご……めん……な……ッ」



 腕の中で血を吐いては、か細い言葉を紡ぎ続けるそいつに、俺はもう喋ってくれるなと何度も訴える。


 それでも聞いてくれとばかりに手首を握られ、たまらず歯を食いしばると、緋色の瞳が、薄く笑った。


「もう……お前を、守って、やれそうに……ない」


 やめろ。

 言うな。


 そんな顔をするな――。



「……おま、えを……、故郷《うち》に……帰して、やりたかっ……た、なぁ…………」


 瞳から光が静かに消えていく。


 その言葉を最後に、手首を掴んでいた左腕が力なく血溜まりに落ちた。





「――勇者なんか、ならなければよかった……」



 振り返ると、憎しみで歪んだ眼をした幼い少年が背後に立っていた。


 それは紛うことなき昔の、俺だった。


「勇者なんかに、ならなければ……兄ちゃんは、今もあの小さな村で、俺と一緒にいたはずなんだ」


 ぽた、ぽた、と頬を伝う雫。

 怒りと悲しみがぐちゃぐちゃに絡まりあった顔で、少年は俺を睨みつける。


「全部、お前のせいだ――」


 奈落の底のように暗い恨みの言葉を喉元に突きつける。


「お前が……勇者になったから。兄ちゃんは……こんなくだらない戦争に巻き込まれて死ぬことになったんだ。……お前がいたから……お前なんかが、いなければ――」





 ――。



 ……ああ……。

 ……地面が冷たい。


 フッと目を覚まし、鼻を打つ湿った土の匂いに、短い感想を抱く。


 …………夢、……だったか……。


「――また意識を飛ばしおって」


 頭上から、聞き慣れた声。


「まったく。お主は地面との接吻《せっぷん》が随分と好きじゃのう」


 勇者よ――。と呼ばれ、即座に状況を把握した俺は慌てて顔をあげる。


 揺れ動く青磁色の鱗《うろこ》を纏った尾。

 天を向く一対の捩じれた角。

 組紐で高く一括りにされた黒長の髪。

 墨色を基調とした立ち襟の長衣。


 そんな、強者然とした要素を持ちながら、俺を悠々と見下ろすのは――、


 十にも満たない幼い顔立ちの、小柄な少女。


 にしか見えない――齢《よわい》千年を軽く超えるドラゴンと人の混血、龍神族《りゅうじんぞく》の里長にして、俺の師匠。


 起き上がり姿勢を静かに整えた俺は、地面に手を突き首を垂れる。


「参りました……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。