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人見知り勇者さんは、今日もどこかでぼっち飯。  作者: 天野 肇
1食目 こってりるぁーめん、オーク背脂マシマシで!

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3

 店を出ると、冷え切った夜風が火照った体を包んだ。

 腹の奥がいつまでもぽかぽかと熱を帯びて、冷気が心地よい。満腹の幸福と、ちょっとした罪悪感は生まれたが。


 ああでも――おいしかった……。



 魔王を倒し世界を救う使命があるはずなのに、俺はこのために生まれてきた気がする。

 なんて呟《つぶや》いたら、神官に説教を食らいそうだ。


 ふぅ、と息をついたその時。


「――あれ? 勇者さん ⁉︎」


 う――。しまった……。


 路地の入口から、見覚えのあるシルエットが手を振っている。


 新入りの戦士だった。

 わんこみたいに目を輝かせ、こっちに駆け寄ってくる。


「やっぱりここでしたか! 神官さんが、きっとこの辺をフラフラしてるだろうって」

「……お、おう」


 まじか。情報共有早すぎる。


「宴《うたげ》、もう終わりましたよ。みんないつものことって言ってましたけど、心配で……迎えに来たんです」


 その言葉に、胸の奥がちくりとした。自分の歓迎会の最中に抜け出したのに、この笑顔だ。怒るでも呆れるでもなく、ただ心配そうに。


「わ……わるかった」


 いつものこと。と言ってしまえばそうなのだが、罪悪感が遅れて押し寄せてくる。


「俺……その、気がついたらふらっと消えるっていうか。こういうところあるから、……幻滅した、だろ」


 戦士は一瞬だけきょとんとした顔をして、それから首を傾げた。


「え? なんでです?」


 拍子抜けするほどあっけらかんとした声だった。俺が言葉を探している間に、戦士は肩をすくめて笑う。


「ああでも一個だけ言わせてもらいたいです!」

「うっ、ナンデショウカ」

「勇者さん! 強いのは分かってますけど、護衛もつけずに無防備すぎですよ〜! せめて居場所くらい教えてからいなくなってくださいね!」


 こ、抗議するとこそこなんだ。


 戦士は呆れたように後頭部を掻き、それからふと屋台の匂いに気づいたように鼻をひくつかせた。


「うわっ、なんか、るぁーめんっぽい匂い! これ、背脂の香りですか?」

「ち、ちが。……いや、違わないけど」

「やっぱり! 僕も好きなんですよ!」


 え、まさかの同族……?


「今日は、どんなるぁーめんを食べてきたんですか?」


 俺はしばらく固まり、視線を斜め下にやる。


「な、なんというか。……つ……罪、って感じの味のやつ」

「え?」

「背徳と幸福の……混沌……みたいな」

「なにそれ怖ッ!」


 ひゃはは、と腹を抱え無邪気に笑う戦士。


「その店今度、僕も行きたいです! よかったら一緒に!」


 目を輝かせながら言われ、思わず言葉に詰まる。この純粋感。拒否れない。


「……ま、まあ。気が向いたら……」

「ほんとですか⁉︎ 絶対ですよ!」


 歓声が冬の夜空に響くと、深夜を告げる王都の鐘が遠くで鳴った。


 胃袋の底でまだ冷めないスープの余韻に浸りながら――「さあ、帰りましょう」と朗らかに笑う戦士に、小さく頷いて俺は歩調を合わせた。


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