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「あー俺もあんなふうに強くなりてぇ。そんでいつか……勇者さんとおんなじ戦場に……。勇者さん……今どこでなにしてんだろうなあ。一度でいい、一度でいいから近くで会って、話して……握手してえなあ」
そしたら俺、一生手、洗わねえもん。と、呂律のあやうい言葉を添える彼に、また仲間たちが笑いながら茶化す。
盛り上がる会話を、ぼんやりと聞いていると。
「――なあ」
不意に、横から声をかけられ、ビクッと肩が跳ねる。
さっきまで離れた卓にあったはずの声だ。
「勇者さんって、すげえよな。あんたも、そう思うだろ⁉︎」
口に含んでいたサボテンジュースを、思わずゴキュッと飲み下す。
「え、あ……」
突然絡まれて、頭が真っ白になる。
こちらに向けられた一等星のように輝く眼。眩しい。
こんな時、どう返せばいいかわからず。
「あ……ウン……ソダネ」
口から転がり落ちる、情けないほどのカタコト。
その返事に、青年は一瞬きょとんとしたあと、じっと俺を見つめ、首を傾げた。
「あんた……もしかして、ソロの冒険者か……?」
言われて、ぽかんとする俺。
「この辺の魔物、いきなりレベル跳ね上がるんだ。一人じゃ、正直危ねえぞ」
そう言って、彼は少し照れたように笑い、手を差し出してくる。
「よかったらさ。砂漠抜けるまで、俺たちのところに来ないか?」
満腹感とは別の、じんわりとした温かさが胸に灯る。
口端がふっ、と上がる。
俺はゆっくり立ち上がり、フードを深く被り直すと、真新しい傷の残るその手を取った。
強く、しっかりと握る。
「ありがとう。でも……宿屋で仲間が待ってるんだ」
「あ、ああ。そっか! 早とちりしたな。悪い悪い」
青年はぱっと手を離し、はにかむように頭を掻いた。
俺は軽く会釈をして、まだ当分眠りそうにない酒場を後にする。
扉の前で、ふと足を止め振り返えってみる。フードを外し、あの青年の顔を思い浮かべた。
――そんでいつか……勇者さんとおんなじ戦場に……――
「俺も頑張るから。君も、頑張れ」
月の下で自然と笑顔になった俺は、鼻歌交じりに宿への道を歩き出した。




