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人見知り勇者さんは、今日もどこかでぼっち飯。  作者: 天野 肇
7食目 サンドクラブとガーリックのごろごろアヒージョ

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3

「あー俺もあんなふうに強くなりてぇ。そんでいつか……勇者さんとおんなじ戦場に……。勇者さん……今どこでなにしてんだろうなあ。一度でいい、一度でいいから近くで会って、話して……握手してえなあ」


 そしたら俺、一生手、洗わねえもん。と、呂律《ろれつ》のあやうい言葉を添える彼に、また仲間たちが笑いながら茶化す。


 盛り上がる会話を、ぼんやりと聞いていると。


「――なあ」


 不意に、横から声をかけられ、ビクッと肩が跳ねる。

 さっきまで離れた卓にあったはずの声だ。


「勇者さんって、すげえよな。あんたも、そう思うだろ⁉︎」


 口に含んでいたサボテンジュースを、思わずゴキュッと飲み下す。


「え、あ……」


 突然絡まれて、頭が真っ白になる。

 こちらに向けられた一等星のように輝く眼。眩しい。


 こんな時、どう返せばいいかわからず。


「あ……ウン……ソダネ」


 口から転がり落ちる、情けないほどのカタコト。


 その返事に、青年は一瞬きょとんとしたあと、じっと俺を見つめ、首を傾げた。


「あんた……もしかして、ソロの冒険者か……?」


 言われて、ぽかんとする俺。


「この辺の魔物、いきなりレベル跳ね上がるんだ。一人じゃ、正直危ねえぞ」


 そう言って、彼は少し照れたように笑い、手を差し出してくる。


「よかったらさ。砂漠抜けるまで、俺たちのところに来ないか?」


 満腹感とは別の、じんわりとした温かさが胸に灯る。


 口端がふっ、と上がる。


 俺はゆっくり立ち上がり、フードを深く被り直すと、真新しい傷の残るその手を取った。

 強く、しっかりと握る。


「ありがとう。でも……宿屋で仲間が待ってるんだ」

「あ、ああ。そっか! 早とちりしたな。悪い悪い」


 青年はぱっと手を離し、はにかむように頭を掻いた。


 俺は軽く会釈をして、まだ当分眠りそうにない酒場を後にする。


 扉の前で、ふと足を止め振り返えってみる。フードを外し、あの青年の顔を思い浮かべた。



 ――そんでいつか……勇者さんとおんなじ戦場に……――




「俺も頑張るから。君も、頑張れ」



 月の下で自然と笑顔になった俺は、鼻歌交じりに宿への道を歩き出した。

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