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人見知り勇者さんは、今日もどこかでぼっち飯。  作者: 天野 肇
6食目 風邪ひき勇者と、脅威のお粥グランプリ

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 再び扉がノックされた。

 入ってきたのは、薬鉢《くすりばち》と水差しを持った神官。

 控えめに、そっとテーブルの鍋をのぞき込む。


「お口に、合いましたか?」


 頷くと、彼女はホッとした様子だった。ま、まあ見た目のことは触れないでおく。


 しかし、しばらくすると花が萎れるように神官は再び伏せ目がちになる。


 なんて言ってやったらいいか。ずっと考えて、声をかけられずにいたけれど。


 でも今なら、話ができる気がする。


「……神官が無事でよかったよ」

「……でも。私は……っ」

「君が蘇生してくれなきゃ。本当に危なかったと思う。でも、俺は無事だし、おかげさまでほら、熱も下がった」


 これでおあいこだよ。と、笑ってみせると、碧い瞳がギュッと潤んで、細められた。


「なあ、神官」

「はい」

「あのお粥の食材、どこで手に入れたんだ」

「市場で、たまたま。あなたの故郷の食材を見つけたから……本当に、たまたま、です」


 “たまたま”を二回言った。

 俺にはわかる。絶対、わざわざ探してくれたやつだ。

 寒村の食材は王都じゃ滅多に見かけないから。


 俺はベッドに再び横たわり、窓の外を見やる。

 夕暮れの風に揺られて、薄桃の花弁がさわさわと舞っている。


「ずっと――帰りたくても、帰れない場所だった……。思い出させてくれて、ありがとうな」

「……いいえ」


 俺の言葉に、神官は優しく重ねるように返す。


「たまたま、ですから」


 静かな間。

 神官が小さくベッドの端に腰掛け、俺と同じものをしばらく見つめる。


「あのさ、神官」

「……はい?」

「さっきの。お粥。おかわりあるか……もう一杯ほしい」


 一瞬、神官の目が見開かれた。

 息をのむ気配。


 そして、口元を袖に当てて柔らかく笑った。

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