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再び扉がノックされた。
入ってきたのは、薬鉢と水差しを持った神官。
控えめに、そっとテーブルの鍋をのぞき込む。
「お口に、合いましたか?」
頷くと、彼女はホッとした様子だった。ま、まあ見た目のことは触れないでおく。
しかし、しばらくすると花が萎れるように神官は再び伏せ目がちになる。
なんて言ってやったらいいか。ずっと考えて、声をかけられずにいたけれど。
でも今なら、話ができる気がする。
「……神官が無事でよかったよ」
「……でも。私は……っ」
「君が蘇生してくれなきゃ。本当に危なかったと思う。でも、俺は無事だし、おかげさまでほら、熱も下がった」
これでおあいこだよ。と、笑ってみせると、碧い瞳がギュッと潤んで、細められた。
「なあ、神官」
「はい」
「あのお粥の食材、どこで手に入れたんだ」
「市場で、たまたま。あなたの故郷の食材を見つけたから……本当に、たまたま、です」
“たまたま”を二回言った。
俺にはわかる。絶対、わざわざ探してくれたやつだ。
寒村の食材は王都じゃ滅多に見かけないから。
俺はベッドに再び横たわり、窓の外を見やる。
夕暮れの風に揺られて、薄桃の花弁がさわさわと舞っている。
「ずっと――帰りたくても、帰れない場所だった……。思い出させてくれて、ありがとうな」
「……いいえ」
俺の言葉に、神官は優しく重ねるように返す。
「たまたま、ですから」
静かな間。
神官が小さくベッドの端に腰掛け、俺と同じものをしばらく見つめる。
「あのさ、神官」
「……はい?」
「さっきの。お粥。おかわりあるか……もう一杯ほしい」
一瞬、神官の目が見開かれた。
息をのむ気配。
そして、口元を袖に当てて柔らかく笑った。




