↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2章完結】記憶喪失勇者 ~最強の勇者は、自分が何者なのかを知らない~  作者: さいらす
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/136

2-25 転生者

 サイラスとエミルは慌てて、お互いに顔をそむけた。座ったまますこしだけ距離を開ける。


「あれれ? ご主人さまもエミルも、お顔がまっかだよ? 焚き火にあたりすぎたのかな? かな?」


「い、いや、そんなことないよ。じ、じゃあ、僕は休ませてもらおうかな」


「わ、わたしも、もう寝ます……」


 ふたりは他の仲間たちが眠っているほうに歩いていき、サイラスはマルバンの隣に、エミルはカレラの隣で横になって毛布にくるまった。


 サイラスは寝転がると、目をつむって、さきほどのことを思い返した。


(あれって、やっぱり、そういうことなのかな。それとも、魔王が復活したって聞いて、僕のことを元気づけようとしてくれただけなのかな……)


 すこし離れたところから届く、セフィの無邪気な笑い声を聞きながら、サイラスは悶々としつつも、やがて眠りのなかに落ちていった。


◆


 ベガリス城の中庭は高い壁に囲まれていたが、初夏の太陽の光が明るく差し込んでいた。


 地面は緑の芝生で覆われ、壁際に設けられた花壇には色とりどりの花が咲き誇っている。


 中庭の中央に植えられた五メートルほどの木の根元に、サイラスはひとり、なにをするでもなく、うつむいて腰かけていた。


 そんなサイラスに向かって、入り口からひとりの少女が歩み寄ってくる。サイラスの前に立ち、一礼して話しかけてきた。


「お父さまのことは本当に残念でした。最後までこのベガリアを守ろうとしていただいたこと、心から感謝しております」


 柔らかな春の日差しのような声が、上から降ってきた。


「!?」


 サイラスはその声に聞き覚えがあった。いや、忘れもしない。忘れるわけがない。その声の主を、サイラスは長い間探し求めていたのだから。


 少年は慌てて、少女の顔を見上げた。


「きっ、キミは……!!」


 純白の豪奢なドレスをまとった美しい少女だった。気品のある顔立ちに、深い緑色の大きな瞳が輝いている。腰まで覆う、豊かな栗色の髪が目を惹いた。


「初めまして、勇者さま。わたしはエミリア。エミリア・アルセフィーナ・ベガリス。この国の王女です」


 少女がサイラスに微笑みかける。


(まさか、こんなところで……)


 ずっとずっと探して、探しつづけて。もう二度と会えないんじゃないかと、あきらめかけていたのに。


 少女の顔を見つめるサイラスの瞳から、涙があふれ出した。


「勇者さま!? ごめんなさい、わたし余計なことを申し上げました」


 エミリアは驚いてひざまずき、細く白い腕でサイラスの頭を自分の胸に抱き寄せた。


「……違うんだ。父さんのことで泣いたわけじゃない。父さんだって、あのスキルに目覚めた日から覚悟はしていたはずだから」


「じゃあ、どうしてそんなに悲しい顔をされているのですか?」


「別に悲しがってるわけじゃない。でも、なぜだか……なぜだか涙が止まらないんだ……」


 サイラスは涙のわけをごまかそうとした。


「でも、なにか悩みがあるなら聞かせてください。誰かに話せば、すこしは楽になるかもしれませんよ?」


 エミリアは抱き寄せていたサイラスの頭をゆっくりと放し、ふわりと微笑んだ。


「…………」


 サイラスは、エミリアの春の花のような笑顔に見惚れてしまった。


(彼女は彼女であって、彼女ではない……それでも)


 あきらめたように、サイラスはぽつりぽつりと自分のことを話しはじめた。


「……父さんの遺体が竜王の背中に載せられて国に戻ってきたとき、母さんはすがりついて泣いてたよ。父さんは、まるで生きてるみたいで、あのスキルを使って死んだっていうのに穏やかな死に顔だった。ただ眠ってるみたいだった」


 エミリアはサイラスの隣に腰かけ、静かに若い勇者の話を聞いた。


「あんなに悲しそうな母さんの姿は初めて見た。でも、俺は泣けなかった。……俺はなんにも感じなかったんだ」


 サイラスは泣いているとも、笑っているとも、わからないような顔になった。


「子供のころから感情がないって、屋敷の使用人たちにも不気味がられてて……あのとき俺を振り返った母さんの目が忘れられない。でも、そんなことはずっと前からわかってたんだ。母さんが、俺のことを怖がってるなんてことは……」


「そんな……」


「俺が涙を流すなんて、この身体になってから初めてだ」


 サイラスはエミリアの顔を見た。


「なあ、俺の秘密を聞いてくれるかい?」


 エミリアの宝石のような深い緑色の瞳が、サイラスを優しく見つめ返してくる。


 話しても到底信じてもらえるとは思えなかった。普通なら頭がおかしいと思われるに違いない。


 もし万が一、彼女がサイラスの話を信じてくれたとしても、不気味に思われるのがオチだ。ずっとずっと探しつづけて、やっと見つけることのできた、この少女にまで。


 エミリアはサイラスを見て「初めまして」と言った。だがサイラスには、エミリアが自分の探していた少女だという確信があった。


 それでも、不思議となんでも受け入れてもらえるような気がして。サイラスはいままで誰にも話したことのない秘密を、打ち明けようとしていた。


「……こんなことを言っても信じてもらえないだろうけど、俺には前世の記憶があるんだ。転生って、聞いたことあるかい?」


「記憶喪失勇者」2-25を読んでいただき、本当にありがとうございます!!

さいらすと申します。


もし、この小説を読んで、すこしでも面白いと思っていただけたら

【☆☆☆☆☆】をタップして、★をいただけると嬉しいです!


ブックマークで応援していただけると、とてもとても嬉しいです!!

あなた様の応援が、何よりの原動力です。よろしくお願いいたします!!


※『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』という小説も書いています。

※本編の800年前のお話です。

※リンクはあとがきの下にあります!


挿絵をChatGPTに描いてもらいました!


挿絵(By みてみん)




※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。

・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿

・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければ、こちらの作品もお読みください。
『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』はこちら 本編の800年前のお話です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。