2-22 剣聖
「勇者サイラス。私はソフィア殿とヴァレリアをリーンまで送っていきます。勇者の鎧を手に入れられたら、ぜひリーンを訪れてください。トロワール大公には、私からも話をしておきます。あなたが正真正銘、本物の勇者であると」
「あの、シリウスさん。勇者サイラスっていうのは恥ずかしいので、できればサイラスって呼んでくれませんか?」
「そうですか。なぜ恥ずかしいのかわかりませんが……わかりました、これからはサイラス殿と呼ばせていただきましょう」
シリウスは爽やかな笑顔をサイラスに向けた。このくせっ毛の青年の態度からは育ちのよさが伝わってくる。王家に連なる大貴族の後継者だというのに、おごったところがまったくない。
(こういう人が王さまになればいいのにな)
ヴァレリアの気持ちを知らないサイラスは、のんきにそんなことを思った。
シリウスの後ろで、ウルスとカレラが微妙な雰囲気で向かい合っていた。どうやら、ふたりは知り合いらしい。
「久しぶりだな、カレラ。すこしは腕を上げたようだな」
「ウルスもかなり腕を上げたみたいだね」
「俺はシリウスさまの下で学び、そのうち親父を倒して剣聖の名前を手に入れる。親父はおまえのことを推しているが、それは間違いだと証明してみせる」
「ボクだって負けないよ」
マレス族の女剣士は黒い瞳を輝かせて、挑戦するように応えた。
シリウスが馬にまたがると、ウルスとヴァレリア、ソフィアとキーラ、トロワールのふたりの騎士が後に続いた。
「それでは、また会いましょう、サイラス殿。魔族になど二度と後れを取らぬよう、そのときまでに私ももっと鍛えておきます」
シリウスは笑顔でサイラスに手を振ると、勢いよく馬を走らせた。
「サイラス。リーンに着いたら、平民街と貴族街をつなぐ橋の詰め所で、わたしの名前を出してください。それで貴族街に入れます。そうしたら、トロワール大公のメルクリウス宮殿を訪ねてください。門番にも伝えておきますから」
ソフィアは名残惜しそうにサイラスを見つめて、にっこりと笑った。
「必ず来てくださいね。わたしの行きつけのお店でごちそうしますから!」
それだけ言って、ソフィアはシリウスを追いかけて駆けていった。女騎士キーラがサイラスに一礼して、その後を追う。
(ソフィアさんもシリウスさんも、いい人だな)
シリウスたちが走り去った後、サイラスはカレラに話しかけた。
「あのマレス族の人、ウルスっていったかな。カレラの知り合いなんだね」
「うん。ウルスはシエラゴ叔父さんの息子、ボクの従兄弟なんだ。お互い剣聖を目指すライバルってやつだね。ウルスのほうがボクよりちょっと年上でランクも上なんだけど、才能ではボクのほうが上かな」
カレラは悪戯っ子のようにサイラスに微笑んだ。
「剣聖ってね、パナメラさまのころから代々、ガリウス王家に仕えていて、王家の剣術指南役を務めていたんだ。剣聖は次の者にその地位を譲ると、里に戻って後進を育てるの。ボクの父さんも剣聖だったんだよ」
(カレラのお父さんが、先代の剣聖だったのか)
「へぇ、じゃあカレラのお父さんも昔は王家に仕えていたんだ」
「でも……いまから九年前、まだ十歳だったシリウスにボクの父さんは負けたんだ」
「えっ!? 十歳のシリウスさんに?」
「手も足も尻尾も出ないくらいの完敗だったらしいよ」
カレラはすこし寂しそうに目を伏せた。
「その後、父さんは里に戻って、シエラゴ叔父さんとも戦って、負けて、里からもいなくなった。シエラゴ叔父さんには剣聖を譲るためにわざと負けたって言う人もいたけど、それはどうだかわからない」
(カレラが旅に出たのは、お父さんを探したいっていう気持ちもあるのかもしれないな)
「シエラゴ叔父さんは王家の剣術指南役を辞退したから、いまはシリウスが代わりを務めてる。だからボクもウルスも、もっともっと強くなって、その地位を奪還したいと思ってるんだ。剣聖がこの国で一番強い剣術士なんだってことを証明するためにね」
カレラがぐっと拳を握り、胸を張った。
「汚名返上、唯我独尊だね!」
(唯我独尊は、たぶん違う……)
マレス族の女剣士は、いつもの元気を取り戻していた。サイラスはすこし複雑な気持ちになったが、カレラはシリウスを恨んだりはしていないようだ。
強いものが勝ち、弱いものは負ける。それがマレス族の価値観なのだった。
「記憶喪失勇者」2-22を読んでいただき、本当にありがとうございます!!
さいらすと申します。
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※『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』という小説も書いています。
※本編の800年前のお話です。
※リンクはあとがきの下にあります!
挿絵をChatGPTに描いてもらいました!
※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。
・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿
・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック




