2-18 魔族VS魔族
ハレンダイトが、後ろの魔族たちに叫んだ。魔族たちは喜び勇んで、倒れているシリウスと怪我をしているヴァレリアに殺到する。
「待って、待ってくださいっ! もう誰も殺さないって言ったじゃないですかっ!」
「ああ、言ったさ。だからアタシはもう誰も殺さないよ? でも、あいつらまでヒトを殺さないとは言ってないだろ」
ニタニタと残忍な笑みを浮かべて、女魔族がソフィアとキーラに顔を向ける。開いた唇の間から、鋭い牙が覗いた。
「おまえたちのどっちかがいれば勇者は見つかるんだろ? それなら――」
ハレンダイトの褐色の手が、ソフィアの細くて白い首をつかむ。
「約束を破って悪いけど、勇者のところへアタシを連れていかなかったら、おまえたちの片方を、もう片方の前で殺して喰ってやるからね。ふふふ、あはははは!」
ソフィアの首を締め上げながら、女魔将は愉快そうに大きな声で笑いだした。
◆
笑っていたはずのハレンダイトの身体が、弾き飛ばされていた。
なにが起こったのか理解できず、女魔族は地面を転がりながら立ち上がって、辺りをきょろきょろと見まわした。近くにいたはずの人族の女ふたりがいなくなっている。
「誰かと思ったら、ソフィアさんとキーラさんだったんだね」
目にも留まらぬ速さでハレンダイトからソフィアとキーラを奪い取り、ふたりを両腕に抱えたサイラスが微笑みかけた。
「もう大丈夫。あの紫の髪の女が魔将だね?」
一瞬あっけにとられていたソフィアだったが、サイラスの顔に気づき、その紅玉のような瞳が涙でいっぱいになった。
「ああ、勇者サイラス! 本当に助けに来てくれたんですね……もう、今度こそダメかと……」
(ソフィアさんの首に赤い痕がついてる)
「ごめん、遅くなって」
サイラスはふたりをシリウスとトロワールの騎士たちのそばに降ろし、盾のスキル《神の盾》で障壁を張った。
(移動のスキルだけじゃなくて、盾のスキルもちゃんと発動するな。やっぱり強敵が相手だからか……?)
シリウスたちに迫っていた三体の魔族が障壁に阻まれて足を止める。そこに、マレス族の女剣士カレラが駆け込んできた。
三人に分身したカレラが、流麗な太刀さばきで三体の魔族をすべて同時に斬り伏せる。
「手下の魔族たちはボクにまかせて!」
「ひとりで大丈夫?」
「にゃは、ボクは一騎当千だよ? サイラスは親玉に集中して!」
「ありがとう、カレラ。頼んだ」
カレラは、そのまま他の魔族たちと戦っているウルスの助太刀に向かった。
(カレラ、頼もしいな)
「勇者サイラス、あの女魔族には剣が効きません。気をつけてください」
キーラが、青い顔でサイラスに敵の特徴を伝える。
(剣が効かない?)
「わかった。ありがとう、キーラさん。ソフィアさん、怪我をした人を頼む」
「はい!」
涙をふいたソフィアは、すぐにシリウスの治療に戻った。
(ソフィアさんも、キーラさんも、怖い思いをしたはずなのに強いな)
突然の乱入者に戸惑っていたハレンダイトだったが、ようやく状況を理解したのか、砂の鞭をサイラスたちに向けて放った。
だが、鞭は見えない障壁にぶつかって、あっけなく弾かれる。
「変な魔術を使いやがって。おまえが勇者か? 青白い顔して、ずいぶんと弱そうだな」
女魔族は殺気のこもった目で、ソフィアたちをかばうサイラスを値踏みする。
「それにしても、自分から捕まりに来るなんて、いい心がけじゃないか。逃げられないように手足をもいで、アタシが魔王さまのところに連れてってやるから感謝しな」
(魔王のところへ連れていくだって!? 魔王がもうこっちにいるのか?)
「手足をもぐって……そんなこと、させるわけないだろ!」
サイラスは剣を抜いた。
「……我が主さまの手を煩わせるまでもありません」
サイラスのほうを向いていた女魔族の後ろから、凛とした声がかけられた。
ハレンダイトが振り返ると、すこし離れたところに、燃えるように赤いツインテールを揺らした、人形のように整った顔の美少女が立っていた。手を腰に当てて、無表情な金色の瞳でハレンダイトを見据えている。
「……おまえの相手は、このわたくしです。リアルジンの下っ端魔将、覚悟しなさい」
薔薇のように赤い唇が、静かに宣戦布告をした。
「記憶喪失勇者」2-18を読んでいただき、本当にありがとうございます!!
さいらすと申します。
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※『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』という小説も書いています。
※本編の800年前のお話です。
※リンクはあとがきの下にあります!
挿絵をChatGPTに描いてもらいました!
※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。
・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿
・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック




