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【2章完結】記憶喪失勇者 ~最強の勇者は、自分が何者なのかを知らない~  作者: さいらす
第2章

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2-11 キス

「……マルバン。その魔導人形の身体を紙のようにペラペラにして差し上げなさい」


 ルナが夏空のような瞳でラツィをにらみつける。ラツィが楽しげにちろりと小さな赤い舌を出した。


(相変わらず、ラツィとは仲が悪いな……)


 マルバンは元々カレラが座っていた場所に下がり、自分が座っていた場所にルナを座らせた。


「さあ、ルナ殿。こちらを向いてもらえるでありますか? とりあえず顔と胸を、人族と同じような柔らかさにしてみるであります」


 マルバンが腕を伸ばし、ルナの顔と胸の辺りに手のひらをかざした。


「《錬金術(ムタス・リベル)》」


 しばらくして――なにか変化を感じたのか、ルナは恐る恐る自分の顔を触った。驚いた表情になって、今度は自分の胸を両手で下から持ち上げてみる。


「本当に柔らかくなっているぞ! ほら、サイラス」


 テーブルを挟んでサイラスの正面にいたルナが身を乗り出し、両手でサイラスの頭をがしっとつかんで、強引に自分のほうへ引き寄せた。


「うぐっ!?」


 強い力でルナの胸にサイラスの顔が押しつけられる。


(いや待って待って待って!)


 超硬質の魔導セラミックでできているはずの胸に、そんな勢いで押しつけられたら怪我をしてもおかしくない。ところが――柔らかかった。人間の女性のものと同じように柔らかくて、押しつけられても痛くない。


(えっ、すごい。本当に柔らかい。……いや、感心してる場合じゃなくて)


 顔全体に柔らかさと弾力を感じていると、ルナはサイラスの顔を胸から解放した。そしてそのまま両手で頭を持ったまま――サイラスの頬にキスをした。


「……わっ、我が主さまになにをする、このポンコツ人形! バラバラにされたいのですか!」


 ラツィが悲鳴のような声を上げて、ルナをサイラスから引き剥がそうとする。ルナは何事もなかったかのように、平然とした顔でラツィを見上げた。


「なんだ? 唇も人間のように柔らかくなったから、サイラスに教えただけではないか」


(教え方がおかしいんだよ……)


 サイラスの左隣でテーブルに突っ伏していたはずのエミルが、顔を上げてこちらを見ていた。手で口を押さえ、一瞬、悲しそうな顔になる。


 だが、意を決したようにサイラスの腕をつかむと、目をつむり。


 ――チュッ。


 エミルの桃色の唇が、ルナがしたのとは反対側のサイラスの頬に触れた。


「えっ……!?」


 なにが起こったのか、理解するのに時間が必要だった。左の頬に触れたものがエミルの唇だとわかると、顔が耳まで赤く熱くなり、心臓がうるさいくらいに激しく高鳴った。


「エ、エミル……?」


「こ、これは、その……お、応援です。そう、応援なんです。サイラスくんが、魔王を倒すために強くならなくちゃとおっしゃっていたので、わたしも応援しなくちゃと思って……そう、応援……応援なんです……」


 首まで顔を真っ赤にしたエミルの声が、だんだんと小さくなっていく。


「あ、ありがとう、エミル。僕、頑張るよ」


 サイラスは飛び上がって喜びたい気持ちを抑えた。


 男のことが怖いエミルが、勇気を出して頬にキスをしてくれたのだ。


(すごい。すごいぞ、これは。一歩前進な気がする。僕も頑張らなくちゃ)


(でも……なにを頑張ればいいんだろう?)


 サイラスは混乱していた。


「にゃは、それじゃあ、ボクも応援してあげよっか? サイラス」


「カ、カレラはいいから!」


(これ以上は、心臓がもたない)


「……こ、こら飯炊き女、お、おまえまでなんてことをするのですか! こ、子供ができたらどうするのですか……」


 ラツィの声が震え、顔が引きつっている。


「にゃは、魔族のお姫さまは、どうやら子供の作り方も知らないようだね~」


「……マ、マルバンから聞いて知っています。男と女がその……くちとくちで……」


「そんなことじゃ子供はできないよ~」


 ラツィの正面に座っていたカレラが、ラツィの横までやってきて、耳に手をあてなにやらごにょごにょと耳打ちする。ラツィの顔が赤くなり、そして青くなった。


「……そ、そんなことが……なんて恥ずかしい……無理に決まっています。お、おまえたちはそんな恐ろしいことを……」


 白い顔をさらに白くして、金色の目を見開き、カレラを見つめるラツィ。


「にゃはは、ぜんぜん怖くないよ。愛し合う男と女なら誰でもすることだよ~。そ・れ・に」


 カレラがふたたびラツィに耳打ちする。


「……!」


 ラツィはサイラスの顔を見ると真っ赤になって、その場に崩れ落ちた。


(いったいカレラは、ラツィになにを教えたんだろう?)


 宴会はお開きになった。


「記憶喪失勇者」2-11を読んでいただき、本当にありがとうございます!!

さいらすと申します。


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※『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』という小説も書いています。

※本編の800年前のお話です。

※リンクはあとがきの下にあります!


挿絵をChatGPTに描いてもらいました!


挿絵(By みてみん)




※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。

・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿

・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック

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