2-3 冒険者ギルド
ラグーツの冒険者ギルドは、街の入り口からさほど遠くない場所にあった。黒い石造りの三階建ての建物は周囲と比べてもひときわ大きく、堂々としている。
「僕とカレラのふたりで行ってくるよ。大勢で行くと目立っちゃうからね」
とくに反対する者もいなかったので、サイラスはカレラだけを連れてギルドに向かうことにした。
「サイラス、なかに入ったらきょろきょろしないで、まっすぐ正面のカウンターに行くこと。誰とも目を合わせちゃダメだよ。冒険者っていっても、チンピラみたいな奴らも多いから。絡まれたら面倒だしね」
「うん、わかった。ところで、カレラは冒険者登録したことあるの?」
「にゃはは。ランクを判定してもらうために何度か来て、そのときに無理やりね。窓口の人けっこう強引だから、サイラスも気をつけてね」
(無理やり冒険者にされるって、それはそれでどうなんだろう)
ギルドの跳ね扉を押してなかに入ると、右側の壁一面が掲示板になっていて、依頼書がところ狭しと貼られていた。左側は酒場になっていて、冒険者らしき男たちがテーブルを囲んで酒を飲んでいる。
(にぎわってるのはいいけど、ガラの悪い人が多いな……)
目つきの悪い男たちがじろりとこちらを見たような気がしたが、カレラはまったく気にするようすがない。
(さすがカレラ、肝が据わってる)
入り口の正面には受付のカウンターが三つある。幸い、いまの時間は誰も並んでいない。サイラスはカレラの注意を思い出し、酒場のほうには目もくれず、一番右端の快活そうな赤毛の女性の前に歩いていった。
「こんにちは、センチュリオの冒険者ギルド、ラグーツ支部へようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「センチュリオ……?」
サイラスが首をかしげると、赤毛の女性が、にこにこと“営業スマイル”を浮かべて話しはじめた。
「あら、冒険者ギルドは初めてですか? センチュリオさまは勇者シリウスさまの従者で、魔王を倒した後、十五歳という若さで亡くなられた方です。その意志を継ぐ者を育てるために、もうひとりの従者であったエウリーさまが設立されたのが、このセンチュリオの冒険者ギルドなんですよ」
「そうだったんですね。……あの、えっと、こ、これを買い取ってほしいんですけど」
サイラスは慌てて懐から袋を取り出すと、小さな魔晶石をひとつ、つまんでカウンターの上に置いた。
「魔晶石の買い取りですね。少々お待ちください」
受付の女性は事務的に一礼して奥に下がると、ほどなく神官のような衣装をまとった若い女性を連れて戻ってきた。金髪を後ろでまとめた、ほっそりとした顔立ちの美人だ。
「こちらですね。失礼ですが、規則ですので確認させていただきますね」
女性が右手を魔晶石の上にかざすと、白い光がふわりとあふれた。
「確かに本物の魔晶石です。この大きさでしたら金貨三十枚で買い取らせていただきますが、いかがでしょうか?」
(金貨三十枚って、高いのか安いのかまったくわからない……)
サイラスが後ろを振り返ると、カレラが笑顔でうなずいてくれた。
(よし、カレラがいいって言ってるなら大丈夫だろう)
「わかりました。それでお願いします」
赤毛の受付嬢が魔晶石を布に包んで奥に下がると、残された神聖術士の女性が微笑みながら身を乗り出してきた。
「あの魔晶石は、あなたが魔獣を倒して得たものですか?」
「ええ、まぁ……」
「もうどこかで冒険者登録はお済みですか?」
「い、いえ……」
「まだなんですね! でしたら、ぜひこの街で登録を。魔獣を倒せるほどの実力がおありなら尚更です。ランクの判定も無料ですぐにできますし、一度登録すれば、どこの街のギルドでも有効ですよ」
(カレラが言ってたのってこれか。確かに、なかなかの押しの強さだ)
「あ、いえ、今日のところは換金だけで……」
「はい、こちらになりまーす」
そこに金貨の入った袋を持って、赤毛の受付嬢が戻ってきた。
(ナイスタイミング、赤毛の人!)
ほっとしたのも束の間、受付嬢がふとサイラスの顔を見て「あっ」と小さな声を漏らした。神聖術士の女性の肘を引っ張り、耳打ちをする。
神聖術士の女性もまじまじとサイラスの顔を見つめて、「あっ」と声を出し、右手で自分の口を覆った。
(まずい。赤い目に気づかれた!?)
「記憶喪失勇者」2-3を読んでいただき、本当にありがとうございます!!
さいらすと申します。
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※『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』という小説も書いています。
※本編の800年前のお話です。
※リンクはあとがきの下にあります!
挿絵をChatGPTに描いてもらいました!
※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。
・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿
・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック




