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【2章完結】記憶喪失勇者 ~最強の勇者は、自分が何者なのかを知らない~  作者: さいらす
第1章

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1-63 勇者とは

「……?」


「口でうだうだ言い合うより、剣を交えたほうが早いでしょ。ほら、立った立った」


 ふたりは焚き火からすこし離れた月明かりの差す開けた場所で向かい合った。サイラスは勇者の盾を地面に置き、剣だけを構える。カレラも太刀を抜いて、両手で構えた。


「いくよー。……電光石火っ!」


 掛け声とともに、カレラの姿がぶれた。


(見える。踏み込みは右、狙いは胴……!)


 剣を返して受けにいく。だが、刃を下ろしきる前に、太刀の腹が、ぱしんと脇腹を打った。


「うわっ!」


「あはは、一本。ほら、次いくよ」


(なんて速さだ……)


 二本目。カレラの切っ先がすっと上段に上がる。


(上からくる!)


 カレラの太刀を受けようと、剣を頭上に上げた瞬間、足首を軽く払われ、サイラスは無様に尻もちをついた。


(いまの、上段はフェイントか! くそ、身体が釣られた……!)


「サイラスくんっ!」


 焚き火のほうから、エミルの心配そうな声が飛んでくる。


「……主さまは、まだ本気を出していないだけです」


 ラツィの声は、いつもよりすこし小さかった。


 サイラスは立ち上がり、今度は自分から踏み込んだ。渾身の一撃――だが、それは太刀にするりと受け流された。空振りした勢いのまま無防備になった首筋に、ひやりと冷たい鋼が触れ、サイラスの動きが止まる。


「はい、そこまで。……にゃはは、ボクの勝ちだね」


 カレラが太刀を引いて、白い八重歯を見せた。サイラスはその場に膝をついたまま、大きく息を吐いた。


 悔しい。でも、不思議と嫌な悔しさではなかった。自分に足りないものの正体を、身体で教えてもらった気がする。


「サイラスは目がいいよ。ボクの動きが見えてる。でもね、見えることと、動けることは別なんだ。見えてから動くんじゃ遅い。見える前に、身体が動くようになるまで、同じ形を何千回も繰り返す。それが剣の修行だよ」


 いつになく真剣な顔で、カレラは言った。それから、にっと笑って手を差し出してくる。


 サイラスはその手をつかんで立ち上がった。汗をぬぐい、まっすぐにカレラの目を見る。


「カレラ、僕に剣を教えてくれないかな? スキルに頼らなくても戦えるように。僕はもっと強くなりたいんだ」


「うん! ボクに教えられることだったら、なんだって教えるよ。手とり足とり、サイラスを獣神流の皆伝まで育ててあげるよ!」


 カレラが握った右の拳で自分の胸を叩いた。


 すると、ラツィの肩にとまっていた黄金のフクロウ――パールが静かに翼を広げた。


「勇者とは、この世でただひとり、“魔王を殺すことができる”というスキルを持った者。魔王とは、“勇者以外には殺すことができない”というスキルを持った者。たとえ勇者が弱かったとしても、魔王にとどめを刺せるのは勇者だけだ。それが勇者という存在なのだ」


 サイラスはパールのほうを向いた。また、金色のフクロウににらまれたような気がした。


「ありがとう、パール。よくわかったよ。とりあえず、こんな僕が勇者でもいいんだってことはわかった。でも、僕はもっと強くなるよ。みんなを守れるように」


「さすがは我らのご主人さまであります! 素晴らしい心がけであります」


「サイラスくんなら大丈夫です。もっともっと強くなれます! きっと魔王を倒せます!」


 マルバンとエミルが、熱い視線を送ってくる。


「そうだぞ、サイラス。おまえなら大丈夫だ。私たちだってついてる」


「そうだよ、そうだよ。ご主人さまなら大丈夫だよー、セフィもついてるよー」


 ルナと、いつの間にか水色の髪に変わってその腕にしがみついていたセフィが、力強くうなずいている。


 仲間たちの言葉を聞きながら、サイラスはパールの言葉を頭のなかで繰り返していた。


(勇者とは、この世でただひとり、“魔王を殺すことができる”というスキルを持った者か……)


 勇者が倒されたら、次の誰かにスキルが受け継がれる。何人倒されても必ず次の勇者があらわれるのなら、人間側のほうが一見有利のようにも思える。


(でも、勇者が倒されたからといって、すぐに魔王を倒せるだけの強さを持った候補者があらわれるのかな?)


 それに、勇者はとどめを刺すだけでいいのだとしても、魔王の軍勢を蹴散らし、魔王を瀕死にまで追い込めるような騎士団が存在するとも思えなかった。四百年もの間、大きな戦いがなかった国の騎士たちが、そんなに強いはずがない。


(やっぱり、自分が強くなるしかないんだ)


 敵から強いスキルを手に入れることができれば、もっと強くなれるかもしれない。その考えは変わっていない。ただ、シエラゴとの手合わせで、スキル頼りの戦い方ではダメだとあらためて思ったのだ。


 魔王の復活まで、あとどれだけの時間が残されているのかはわからない。でも、いまはやれることをやるしかない。


(みんなの期待に応えるためにも頑張らなくちゃ。僕はもう、ひとりじゃないんだから)


「記憶喪失勇者」1-63を読んでいただき、本当にありがとうございます!!

さいらすと申します。


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※『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』という小説も書いています。

※本編の800年前のお話です。

※リンクはあとがきの下にあります!


挿絵をChatGPTに描いてもらいました!


挿絵(By みてみん)




※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。

・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿

・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック

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