1-39 ソフィア
案の定、ふたりの騎士は馬から降り、剣を抜いた。銀髪の女騎士が主を守るように前に立つ。ふたりはサイラスが持つ黄色の盾と、その後ろの白い魔導人形に気がついた。
「おまえ、その盾をそこに置いて、後ろに下がれ。おまえたち全員だ!」
(まあ、そうなるよね)
サイラスは女騎士に言われた通りに、大きな丸い盾を地面に突き立てると、仲間たちとゆっくり後ろに下がった。エミルがびくびくしながら、サイラスの腕をつかむ。
「あの方たち、ベガリア辺境伯の騎士さまでしょうか?」
「ニーナ!?」
ルナが金髪をショートカットにした少女の顔を見てつぶやいた。サイラスもつられて、その顔を見る。少女は金髪なだけでなく、真紅の瞳を持っていた。
(金髪赤目!? 僕と同じだ)
騎士たちは、サイラスたちが下がったのを確認してから、恐る恐る盾に近づいた。女騎士が盾を持ち上げようとするが、びくともしない。ふたりがかりでも、まったく動く気配はなかった。
ラツィが真っ赤な唇の端を歪め、くくくっと笑った。
「……だから、我が主さまは四百年前の勇者だと言ったのです」
金髪の少女がサイラスの顔を見て、あっと驚いたように見えた。
「貴方、貴方だけこちらに来てください。ゆっくりとですよ」
少女はサイラスに手招きをした。女騎士は緊張した面持ちで剣を構えている。サイラスはゆっくりと盾に近づいた。
「では、盾を持ち上げてみてください」
盾からすこし離れて、紺色のローブの少女がサイラスに指示した。サイラスがひょいっと片手で盾を持ち上げてみせると、ふたりはさらに後ずさった。
「あっ、貴方は何者ですか!?」
焦った顔で金髪の少女はサイラスに剣を突きつける。真紅の瞳が大きく見開かれている。
「僕はサイラス。あなたたちこそ、何者なんですか?」
「サ、サイラスだと!? そんな馬鹿な……」
女騎士は混乱しているようだ。何度もサイラスの顔と盾を見比べている。
(まあ、信じられないよね。僕だって、まだ半信半疑なんだし)
「あ、貴方は……本当に四百年前の勇者だと言うのですか?」
このままでは埒が明かないと、ルナが後ろにやってきて、サイラスの肩に手を置いた。
「事実、こうして盾に持ち主として選ばれているではないか。それに私には、私を造ったニーナ・エリカ・シスレートの記憶がある。彼は本物の勇者サイラスだ」
「ニーナ・エリカ・シスレート……それでは、本当に……」
「この少年が……四百年前の勇者だと!?」
その白い魔導人形を、シスレート公国の騎士で知らない者はいなかった。勇者の従者だったニーナによって造られた盾の番人。ソフィアも一度、祠で見たことがある。彼女が嘘をつくとは思えない。
だが、ここで彼らを見逃すわけにはいかなかった。勇者の盾を守ることが、シスレート公国の公女であり、ベガリア辺境伯でもある少女の使命なのだから。
「わ、わたひ……わたしは、ベガリア辺境伯ソフィア・ニーナ・シスレートです」
ソフィアは緊張すると言葉を噛んでしまう癖があった。主の隣に立つ女騎士のキーラが、頭を振りながら剣を持っていない左手で額を押さえた。
(この子がベガリア辺境伯なのか……)
「こほん。こちらは近衛騎士のキーラ。わたしたちは“勇者の盾”の紛失をトロワール大公閣下に知らせにいく途中だったのですが……サイラス、貴方たちをリーンまで連行します。そこで、貴方が本物の勇者なのかどうか判断を仰ぎます。抵抗すると、ろくなことになりませんよ」
「ニーナと顔は瓜ふたつなのに、辺境伯さまはずいぶんと頑固なのだな」
やれやれといった動作で、ルナは両手を広げた。
「……さてさて、我が主さま。こんな女騎士風情、無視して先に進みましょう」
辺境伯をにらみつけるラツィの金色の瞳には、わずかに怒気がこもっている。
「おまえたち、抵抗する気か!?」
ふたりの騎士が張り詰めた表情で剣を構えた。
(まずいな。戦いになるのだけは避けたい。辺境伯も悪い人には見えないし……)
ひゅっ!
突然、木の枝のようなものが鞭のようにしなり、ソフィアとキーラの間を抜けて、サイラスの頭部めがけて飛んできた。その鋭い先端をサイラスは、難なく盾で弾いた。
女騎士たちの後ろに目を向けると、三十メートルくらい離れた場所に、いつの間にか奇妙な木が生えている。緑色の触手はその木のてっぺんの部分から伸びていた。
「記憶喪失勇者」1-39を読んでいただき、本当にありがとうございます!!
さいらすと申します。
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※『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』という小説も書いています。
※本編の800年前のお話です。
※リンクはあとがきの下にあります!
ソフィアのイメージ画像をChatGPTに描いてもらいました!
※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。
・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿
・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック




