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【2章完結】記憶喪失勇者 ~最強の勇者は、自分が何者なのかを知らない~  作者: さいらす
第1章

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1-32 ルナ

 サイラスは武器を持っていない。トリマンからもらった銅の剣はラツィに溶かされてしまった。


 慎重に祠に近づき、なかを覗き込む。


 白い石でできた“かまくら”のような祠のなかには、円形の大きな黄色い盾が地面に突き刺さっていた。盾は白く眩い閃光を放っている。


 その後ろには大理石でできた女神像が、盾の上に両手を置くようなポーズで直立しているのが見える。


(すごい光だ。さっきの冒険者たちは、これに驚いて逃げたのかな?)


 サイラスが仲間たちに外で待つように言うと、


「えー、セフィもご主人さまといくー、いくー」


 メイド服を着た水色の髪の少女が駄々をこねたが、マルバンがやんわりと押さえてくれた。


 魔族の執事に向かってうなずくと、サイラスは祠のなかにひとりで入っていった。


 恐る恐る手を伸ばし、白く輝く盾にそっと触れる。


 その瞬間――どくんっ、と心臓が大きく跳ねた。


 触れた指先から、冷たいなにかが這い上がってくる。身体の奥へ、それがするりと滑り込もうとした――そんな気がした。だが、感覚は一瞬で消えてなくなった。


(っ!? いまのは、なんだ……)


『休眠していたユニークスキル《神の盾(アイギス)》を有効化します。自身の防御力の数倍の不可視の障壁を張り、物理攻撃を反射することができます。防御力の倍率は使用者のレベルに比例します……』


『ユニークスキル《神の盾(アイギス)》を発動します……』


 いつもの声が、サイラスの意志とは関係なく、勝手にそう告げる。


 直後、ずどんっと腹の底を打つ轟音。見上げると、頭上を覆っていた石の天井が、まるごと空へ弾け飛んでいた。


(っ! 天井が……僕が、やったのか!?)


 砕けた石塊は、十メートルほどの高さでぴたりと静止している。見えない手のひらにでも受け止められたかのように、宙に浮かんだまま、ひとつも落ちてこない。


「盾を持って、早くここを離れろ! 障壁が消えれば、石が落ちてくるぞ!」


 突然、女神像の目が開き、叫んだ。


(女神像がしゃべった!)


 サイラスは驚きながらも、その言葉に従い、両手で盾を抱えた。盾は見た目に反して、拍子抜けするほど軽かった。女神像の後を追って、急いで外へ飛び出す。


 次の瞬間、背後で地鳴りのような音が轟いた。振り返ると、宙に縫いとめられていた天井の残骸がいっせいに祠のなかに降ってきていた。


(危なかった。あとすこし遅かったら……)


 外で待っていたマルバンたちも、あっけにとられていた。


 いつの間にか大きな丸い盾は光るのをやめて、鮮やかな黄色に戻っている。仲間たちは、女神像が人間のように動いていることにも驚いていた。エミルは可愛い口を開け、こちらを指差したまま動かない。


「盾に触れたときに、スキルが発動してしまったみたいだな。誰も怪我をしなくてよかった。私はルナ。ずっと長い間、ここでサイラス……おまえを待っていた」


 女神像だと思ったそれが話しかけてきた。


(長い間、僕を待っていた? この人も、ラツィたちと同じことを言ってる……)


 女神像は、比喩ではなく、陶器のような物質でできた真っ白な肌をしている。よく見るとすべてが陶器製ではなく、夏空のような青い瞳とプラチナシルバーの髪は人間のものと同じように見えた。


 背はエミルよりもすこし高い。百六十五センチといったところか。おへそに当たる部分に、大きな赤い宝石が埋め込まれている。


(あれは、魔晶石かな?)


「魔導人形(オートマタ)でありますか。それにしても、ずいぶんと精巧にできているでありますね」


 マルバンが顔をほころばせている。


「魔導人形って、なんなんだ?」


 サイラスは物知りな魔族の執事に疑問をぶつけてみた。ルナをぶしつけな目でじろじろと観察しながら、マルバンは興奮した口調で話しはじめた。


「その名前の通り、魔晶石を組み込んで自動で動くようにした機械仕掛けの人形のことであります。家事に使ったり、戦闘に使ったりと用途はいろいろでありますが、普通の魔導人形は、簡単な雑用をこなすのがやっとなのであります。でも、このルナという魔導人形は特別製みたいでありますね。しゃべる魔導人形なんて、見たことも聞いたこともないでありますよ」


 マルバンは感心したように目を輝かせているが、ルナは物扱いされてすこし不機嫌な顔になったように見えた。


(まあ、目の前で品定めされたら、いい気持ちはしないかもね)


 ルナはマルバンを無視すると、サイラスの前に歩み出た。


「とにかく、おまえが来てくれてよかった、サイラス。これでやっと私もこの盾を守る役目から解放される」


 ルナはすこし寂しげな笑顔をサイラスに向けた。


(四百年もここで、ずっとひとりだったのか……)


「こらっ、おまえたち! その盾は俺たちが先に見つけたんだぞ。こっちによこせ!」


 サイラスが声のしたほうを見ると、先ほど祠から逃げ出した冒険者風の三人組が、こちらに向かって歩いてくるところだった。


「記憶喪失勇者」1-32を読んでいただき、本当にありがとうございます!!

さいらすと申します。


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※『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』という小説も書いています。

※本編の800年前のお話です。

※リンクはあとがきの下にあります!


ルナのイメージ画像をChatGPTに描いてもらいました!


挿絵(By みてみん)




※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。

・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿

・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック

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『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』はこちら 本編の800年前のお話です。
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