1-2 黄金の魔王
「やっとお出ましか、寝ぼすけな魔王だな。作戦通り、ベガリア王国軍には下がれと伝えろ。ここからは俺たちの出番だ。きっちり片をつけるぞ!」
「待ってました。腕がなまっちまうところだったよ」
パナメラが獰猛な笑みを浮かべて、太刀を肩に担ぎ直す。
「私もです。そろそろ本気を出していいですか、ライアス?」
「ああ、遠慮はいらん。派手にいくぞ!」
後退していく兵たちとは逆に、魔王が出現した地点に向かって、ライアスと仲間たちは走り出す。かなり数を減らしたとはいえ、奥に進めば進むほど敵の密度は増していく。魔族の軍団はいまだ健在だった。そこへ、たった三人で突っ込んでいくというのは、普通ならありえない行動だ。
味方の兵たちが下がるのを見届けて、エルフの女賢者が大きな杖を掲げ、高位の風の精霊術を唱えた。
「風の精霊王ラファ=エルよ、その無限の刃で我が敵を殲滅せよ!」
フルリーヌが杖を振るうと、何本もの巨大な竜巻が立ちのぼり、魔族たちを切り裂き、上空に巻き上げていく。
「おっと、俺も負けてはいられないな」
騎士は右手に持っていた神秘的な白い剣を、高々と天にかざした。
「受けてみよ、《神の怒り(ケラウノス)》!」
ライアスの声を合図にして、晴れわたっていた空に突然、黒い雲が湧き、轟きとともに無数の稲妻が魔族たちに降り注ぐ。
辺りを包む悲鳴――魔王軍は総崩れになった。
雷雲は、来たときと同じように、あっという間に流れ去っていった。
「いつ見ても惚れ惚れするねぇ」
「パナメラ、惚れ惚れしている暇に、何匹か取り逃がしているぞ」
「おっと。あたしの獲物を横取りするなよ、ライアス」
パナメラが風のように駆け出し、逃げ遅れた魔族の群れに斬り込んでいく。一刀のもとに三体が灰と化した。
「横取りもなにも、おまえがボケっと見惚れてたんだろうが」
「見惚れてたのはフルリーヌの術のほうだよ。勘違いするな」
「あら、嬉しいですね。でも、お世辞はいいですから手を動かしてください」
軽口を叩きながらも、三人の足は止まらない。
魔界はこの世界の地下深くにあるといわれている。その魔界とこの世界をつなぐ“奈落”と呼ばれる大きな穴に向かって、魔族たちは我先にと逃げはじめた。
「逃げるナ! タタカエ! 逃げれバ、コロスっ!!」
奈落の周りには、金色の鎧を身につけた魔王軍の督戦隊が待ち構えていた。槍で味方を突き刺し、前線に戻るように強制しているのが見える。
「くっ、自分たちの仲間だってのに……」
「パナメラ、フルリーヌ。蹴散らすぞ!」
よく晴れた空を思わせる爽やかな青い鎧をまとった勇者が、混乱する敵の集団へ嵐のように突撃すると、仲間たちもそれに続いた。勇者が白い剣を一閃する。剣から伸びた白い光によって、前方にいた三十体ほどの魔族が消し飛んだ。
三人は難なく前線を駆け抜け、奈落の手前まで迫ると、陣取っていた督戦隊を一瞬で斬り伏せた。
「……っ!? やけに魔素が濃いな。気をつけろ、油断すると気絶するぞ」
「こんな濃度は初めてだ。ライアス、こいつはかなりでかいのが出てくるよ」
パナメラが鼻をひくつかせ、太刀を構え直す。
「私も、これほどのマナは長い人生でも経験がありません。本当に、千六百年ぶりに蘇った魔王なのかもしれませんね」
「ライアスっ! あっ、あれ! あれを見ろっ!!」
パナメラの指差した先――数百メートル前方に、高さ二十メートルはあろうかという、ひときわ巨大な魔族がそびえていた。太陽の光を反射して、ギラギラと下品に輝いている。
それは、その他の有象無象の魔族たちとは、明らかに異なる存在だった。
目には見えないが、あまたの亡霊がまとわりついているかのような、吐き気をもよおす不気味な死のオーラと圧倒的な威圧感。
黄金の魔王ギリヨン――。
千六百年前にもこの世界にあらわれ、統一王国を建てた英雄王――始祖ガリウスによって討たれたと伝わる伝説の魔王だ。
ライアスはその初代勇者ガリウスの子孫にあたる。
人の世界である地上(=人界)を支配するという邪悪な野望を抱き、魔界からあらわれる魔王――その絶対的な脅威を討伐し、人々を守る。それがガリウスの子孫の使命。『勇者』という名に刻まれた呪縛にも似た宿命だった。
魔王まで残り数十メートルといったところで、ギリヨンがライアスたちに気づいた。周囲をびりびりと震わせるほどの大音量で、それでいて気が抜けるほどのんびりとした口調で、魔王は勇者に話しかけてきた。
「記憶喪失勇者」1-2を読んでいただき、本当にありがとうございます!!
さいらすと申します。
もし、この小説を読んで、すこしでも面白いと思っていただけたら
【☆☆☆☆☆】をタップして、★をいただけると嬉しいです!
ブックマークで応援していただけると、とてもとても嬉しいです!!
あなた様の応援が、何よりの原動力です。よろしくお願いいたします!!
※『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』という小説も書いています。
※本編の800年前のお話です。
※リンクはあとがきの下にあります!
挿絵をChatGPTに描いてもらいました!
※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。
・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿
・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック




